米国で起きたレスリング金メダリストの射殺事件を基にした「フォックスキャッチャー」(ベネット・ミラー監督)が、14日から公開される。レスリングチームを率いる孤独な大富豪と兄弟アスリートの関係を軸に、人間の心の奥の闇に焦点を当てた。コメディー作品の印象が強いスティーブ・カレルさんがイメージを一新し、エキセントリックな男を演技で見せつけている。
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レスリング選手マーク・シュルツ(チャニング・テイタムさん)は、1984年のロサンゼルス五輪の金メダリスト。しかしマイナー競技であるレスリングの競技環境は厳しく、コーチとして勤務していた大学を解雇される。同じ金メダリストの兄デイブ(マーク・ラファロさん)は温かい家庭を築き、幸せに暮らしていた。そこへ、大企業デュポン社の御曹司ジョン・デュポン(カレルさん)からマークに連絡が入る。デュポンは所有する土地にトレーニング施設を建てて、自身が率いるレスリングチームをソウル五輪で世界一に導く夢を持ち、破格の契約金でマークを誘う。お金ではなびかない兄のデイブの元を離れたマークは、やがてデュポンの狂気に影響され始め……という展開。
五輪という一つの大きな目標に向かう舞台裏には、さまざまなストーリーが存在すると思うが、これは相当奇妙な話だ。それしかない道にすがる男たちが、プライドを懸けて、静かに、しかし強烈にぶつかり合う姿から目が離せない。「カポーティ」(2005年)のミラー監督の手腕がさえわたる。奇妙さをあおることなく、見る者にゆだねるような抑制を利かせた演出で引きつける。キャストが関係者に実際に会って作り上げたという登場人物たちは、鍛え抜かれた肉体だけでなく、その精神までもがリアルにスクリーンに存在する。母親の愛を勝ち取りたかった大富豪デュポンの孤独と、固い絆で結ばれた兄弟愛が対照をなしながら、人間関係がもつれていく。複雑な心の持ち主デュポンを演じるのは、「40歳の童貞男」(05年)など人気喜劇俳優として知られるカレルさん。財力でコミュニケーションを図り、いきなりキレる狂気。愛情が内在化されないまま大人になった男、そしてそれに巻き込まれた人間の悲劇を目の当たりにし、心の中のザワザワ感が収まらなかった。映画は14日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。チーム「フォックスキャッチャー」のトレーナーがなかなか可愛いかった。
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