「劇団EXILE」の2015年初公演となる舞台「Tomorrow Never Dies~やってこない明日はない~」が27日から上演される。今作は、日本人による日本のオリジナルミュージカルにこだわる劇団「三ツ星キッチン」を主宰する上條恒さんが演出・脚本を手がけ、若者たちが“社会”という大人の世界に立ち向かっていく物語で、ダンスを通じて地域社会との関わり方を描いている。出演メンバーの秋山真太郎さん、小澤雄太さん、佐藤寛太さんに自身の役どころや舞台の魅力について聞いた。
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三ツ星キッチンとの初コラボ作は、音楽やダンスといった要素も取り入れられている。秋山さんは「今まではストレートプレーの舞台をやっていたけれど、今回は音楽の要素がふんだんに盛り込まれている」と切り出し、「脚本を読んだ時よりも稽古(けいこ)をしてちょっと立体的になって音楽が入ると、やっぱり2倍、3倍にもイメージがふくれ上がっている瞬間が分かり、稽古中だけど手応えはかなり感じている」と笑顔を見せる。「歌やダンスが入ってくるので、すごい楽しみな分、不安も大きかった」と語る小澤さんだが、三ツ星キッチンとは互いのウオーミングアップをやり合うことで、すぐに打ち解けたという。そして、「(稽古の)出だしがすごくよかったので、僕らも楽しみにしている」と雰囲気のよさを明かす。
劇団EXILEのメンバーとしてキャリアがある秋山さんと小澤さんに対し、佐藤さんは今回が正式加入後の初舞台となる。「最初は緊張や不安な部分がありましたが、最初から壁がなく、親しみやすいような空気で稽古に参加することができました」と佐藤さんは安堵の表情を浮かべる。稽古では「僕自身が一つの役をいただいて、役を作っていくという作業が初めて」と初々しさをのぞかせるも、「僕は小澤さんのことをすごく慕っている役でからみも多いので、僕が分からなくなったり、間をどうしたらいいのかとなったりした時、小澤さんに助けていただいています」と感謝する。
初参加の佐藤さんについて、秋山さんは「躊躇(ちゅうちょ)する感じがないというか、率先してリラックスして自分から何事にもいっている感じがして、すごくいいことだと思う」と評する。一方、小澤さんは「僕が(劇団に)入った時から秋山さんにはお世話になっていますが、その立場が今度は逆転した」と自身の立場の変化を感じ、「僕が先輩の背中を追っかけてきたように、そこまで至れるかは分からないですが、(佐藤さんと)先輩・後輩という間柄で何か残るものがあればいいという気持ちはすごい強い」と佐藤さんに熱いまなざしを向ける。
秋山さんが演じるのは子供を持つ30歳のライター・増田洋輔。脚本を読んだ時に秋山さんは「僕に子どもがいるという設定が面白い」と感じたというが、「僕にとっては挑戦で、それが面白いというか、僕もそういう役をやる俳優としての“第2期”みたいな時期に差し掛かってきたのかな」と真摯(しんし)に語る。父親としてのリアリティーを出すため、「親友の子どもに会いに行ったりしている」と役作りの一端を明かす。
小澤さん演じる元ダンサーでフリーターの片岡和也と、佐藤さん演じる居酒屋アルバイトの池山准は役の設定上、からむシーンが多い。ダンスのインストラクター経験もある小澤さんは「大会などに出てタイトルを取ったこともあるので、なんとなく過去の栄光みたいなものにどうしてもすがりつきたくなる自分もいる」と自身の役との共通点を明かし、「今回は攻めるよりもどちらかといえば僕は受けの芝居なので、どれだけみんなが言っていることを素直に受け入れられて変化していけるかと考えている」と意気込む。子どもたちにダンスを教える役の佐藤さんは「1年間だけダンスをしていたのですが、その時のインストラクターの方をイメージして、教えるシーンは考えてやっていますが、ちょっと難しい」と苦笑いする。
ちなみに、お互いに演じている役をどう感じるかと聞くと、秋山さんは小澤さんを「小澤もダンスをやっていたので似ているし、どこかでちょっと人のせいにしているというか(笑い)、自分が悪かったではなく何かに憤りを持っている状態は役と似通っている部分がある」と評し、「そこに普段の小澤がはまると、すごいいい芝居ができるんじゃないかなと思う」と太鼓判を押す。対して小澤さんは「奥さんとのやりとりで、くさいせりふとかいろいろ入っている中、秋山さんはどうするんだろうなと一人で楽しんでいます」とちゃめっ気たっぷりに発言。秋山さんは「まねしてるし、本当はやりたいんだろう?」と突っ込みを入れ、小澤さんは「やりたいです!」と笑顔で切り返した。
佐藤さんについては秋山さんと小澤さんともに「若い」ということで意見が一致。続けて秋山さんが「フレッシュさを前面に押し出してくれれば成立するのでは」と言えば、小澤さんは「自分が今できることはなんだろうというものを自分の中で見つけてやってほしい」とアドバイスを送る。発言を聞いた佐藤さんは「小澤さんもダンスをやっていてプロのダンサーか別の道かを迷った時に、ダンサーだけでやっていくという難しさをリアルに話してくれた」といい、「今回の役柄がすごくマッチして小澤さんと和也がかぶって見えるので、役として親しみやすいというか、尊敬を抱きやすい」と普段の関係性とダブらせる。
自他共に似ている部分があると認めるそれぞれの役だが、秋山さんは役作りをする上でメンバー同士、話し合いをするという。「芝居においてのダメ出しだったり、こう見える、こう見えない、こういうことがあるからこうなるとかで作っていったりする」と話す秋山さんは、実は意外な形でも役について指摘を受けることも。「結構ファンの方からもらった手紙で気付くことも多い」という秋山さんは、「『あれはこういうことですよね』と言われて、ニュアンスをちょっと足してみようかなとかはある。人が見ると違う印象を抱いたりするので参考にすることも」と打ち明ける。
初めてはまったポップカルチャーを聞くと、「プロになろうとするぐらい中学の時にスケボーにはまった」と秋山さん。続けて佐藤さんは「昭和シリーズも含めて歴代の『仮面ライダー』をほぼ全部見たぐらい、『仮面ライダー』とスーパー戦隊は大好きで見ていました」というと、小澤さんは「僕は『仮面ノリダー』」と笑いを誘う。そして、「『ウルトラマン』とか『仮面ライダー』に、戦隊もしばらくはまっていた。あとはミニ四駆にはまってよく遊んでいました」と小澤さんと佐藤さんの特撮好きが明らかとなった。
今作について、秋山さんは「ストーリーもややこしくはなく気軽に見られる。気分が落ち込んでいる時に見てスカッとしたいとか、何も考えたくない時に見たいとかいう感じながらもメッセージがしっかりと乗っている作品になりそう」と稽古を通じての手応えを語る。そして、「見たあとに、やってこない明日はない、明日また頑張ろうかなと思えるような作品に仕上がっていると思う。学校に行っている小さい子たちにも見てほしい」とメッセージを送る。
自身が演じる役の注目の部分について、秋山さんは「パパ感かな(笑い)」といい、「今までいろんな役をやらせていただきましたが、子どもがいるという設定はある程度の年齢に達しないと出てこないので、新しいことをファンの方には楽しんでいただけるのかなと思います」と笑顔を見せる。今作を「大人のカッコよさがリアルに描かれている」と話す佐藤さんは「僕自身(役と同じ)19歳ですが、大人たちに交って成長していく人間模様みたいなのを表現できたらいい」と力説する。
ダンス経験もある小澤さんは「一番新しいことをやっているのではと思う」と今作の魅力を語り、「僕らの時代はストリートでやっているだけで悪いと思われてしまうような時代だったので、今は変わったんだな、(今作を)普通に見られる時代になったんだなと」としみじみ。そして、「みんなが『よしやるぞ!』となる瞬間は、見ている人が温かくなると思う」とアピールし、「どうなるんだろうと前のめりになる瞬間を体感してもらいたい」とメッセージを送る。
公演初日に先がけ、21日には品川プリンスホテル クラブeX(東京都港区)でイベント「もうすぐTomorrow Never Dies祭~やってこない初日はない!?~」が開催される。小澤さんは「役のメンバーそれぞれが自分たちのバックボーン“エピソード0”を作ってくる」といい、「普通は作品に対する思いは役者それぞれで違うけれど、今回に関してはバラバラな中でやろうとしていることを一つにするための根底から上げているので、レベルの高い作品になるのでは」と自信をのぞかせた。舞台は銀座・博品館劇場(東京都中央区)で27日から上演。
<秋山真太郎さんのプロフィル>
1982年7月8日生まれ、長崎県出身。雑誌モデルを経て劇団EXILEに加入。劇団公演のほか客演としてミュージカル「テニスの王子様」や「真田十勇士~ボクらが守りたかったもの~」など舞台を中心に、ドラマや映画などにも出演している。
<小澤雄太さんのプロフィル>
1985年10月8日生まれ、東京都出身。2009年に行われた第1回劇団EXILEオーディションに合格。劇団公演をはじめ舞台中心に活躍し、14年上演の舞台「サイコメトラーEIJI~時計仕掛けのリンゴ~」では主演を務める。
<佐藤寛太さんのプロフィル>
1996年6月16日生まれ、福岡県出身。2014年に行われた劇団EXILEオーディションを経て、劇団EXILE研究生として活動。15年1月に正式に劇団メンバーに昇格し、「Tomorrow Never Dies~やってこない明日はない~」が初舞台となる。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)