「第28回三島由紀夫賞」(新潮文芸振興会主催)の選考会が14日、東京都内のホテルオークラで開かれ、上田岳弘さんの「私の恋人」が受賞し、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんの小説「火花」は受賞を逃した。だが、選考委員の辻原登さんは「正直言って、『火花』と『私の恋人』で2作受賞でもいいんじゃないかと話した。最後は挙手で3対2で『私の恋人』に決まった」と説明、わずかな差での落選だったことを明らかにした。
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三島賞は、小説、評論、詩歌、戯曲を対象に文学の前途を拓く新鋭の作品に贈られる賞。今回は上田さんの「私の恋人」、又吉さんの「火花」のほか、岡田利規さんの「現在地」、滝口悠生さんの「愛と人生」、高橋弘希さんの「指の骨」がノミネートされ、辻原さん、川上弘美さん、高村薫さん、平野啓一郎さん、町田康さんの5人が選考委員を務めた。
選考では岡田さん、高橋さんの作品が最初の投票で受賞作の対象から外れ、「愛と人生」「火花」「私の恋人」の評価が拮抗(きっこう)したまま2回目の選考に入り、議論を重ねた上で、「愛と人生」が外れ、最終的に選考委員5人による挙手で受賞作を決定したという。
受賞作を発表した辻原さんは「5作品は高いレベルの作品だった。今の日本の小説、特に若い人たちの世界を考える上で非常に刺激的な作品がそろった」と総評。上田さんの「私の恋人」については「これからの文学のある一定の方向というか道を切りひらく作品と言って良い」と評価した。
又吉さんの「火花」は、売れない芸人の徳永が天才肌の先輩芸人・神谷と電撃的に出会い、弟子入りを申し込み、やがて頻繁に会うようになるが……という物語。辻原さんは「これは見事な職業小説であり、職業小説そのものが見事な青春小説になっている」と高く評価した。
さらに、「徳永と神谷という不思議な先輩漫才師。友情と葛藤とそこに絡んでくる女性たちの描き方。我々が今まで表現したことのないような、漫才とかそういう世界が珍しいのではなく、辛辣(しんらつ)なペーソスとか笑いとかを飛び越えたところで若者たちがどう生きているのかが実にリアルに描かれている」と称賛。選考会でも「非常に高い評価を得ました。素晴らしい表現がたくさんあって、又吉さんの力量というものに対する賛嘆の声が湧き起こった」と明かした。
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