米アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した「未来を生きる君たちへ」の女性のスサンネ・ビア監督と脚本家アナス・トーマス・イェンセンさんがタッグを組んだ最新作「真夜中のゆりかご」が15日から公開される。刑事であり父親でもある一人の男の行動が、サスペンスタッチの物語に波紋を広げている。児童虐待、ドメスティックバイオレンスなどの社会問題に切り込んだ北欧映画だ。
ウナギノボリ
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刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター・ワルドーさん)は、美しい妻アナ(マリア・ボネビーさん)と生まれたばかりの息子とともに、湖畔の瀟洒(しょうしゃ)な邸宅で幸せに暮らしている。アンドレアスの息子は夜泣きがひどく、アナと交代で夜中にあやす日々。ある日、通報で踏み込んだ狭い部屋で、薬物依存症の男トリスタン(ニコライ・リー・コスさん)と殴られていたらしい女性サネ(リッケ・メイ・アンデルセンさん)と汚物まみれの赤ちゃんを見つけた。トリスタンは逮捕されたが、ほどなく釈放される。そんなある朝、アンドレアスの息子に悲劇が……という展開。
家族の物語と人間のえぐみを繊細に描き出すコンビの6作目。上流階級の暮らしを送る刑事の夫婦と、貧困で薬物依存症の男女。2組の対照的なカップルには、それぞれに同じくらいの月齢の赤ちゃんがいて、かたや大きな部屋でゆりかごに揺られ、かたやすさんだせまい部屋で汚れにまみれている。何が起こるかと見ているうちに、2組のカップルのイメージが入れ替わっていくのが興味深い。主人公アンドレアスが息子をすり替える……という狂気の行動を分岐点に、“犯罪”のこちら側とあちら側にいた両者の見え方まですり替わっていく。アンドレアスは虐待児童を救った気になったのか、それとも不安定な妻のためなのか。アンドレアスの行動は理解し難く、暴力夫のトリスタンの方が薬物ゆえの錯乱と単純な性格で、まだ理屈が通っているように見える。自らの行動で首をしめ、良心の呵責(かしゃく)にさいなまれる主人公の複雑な役柄を演じるのは、「オブリビオン」(2013年)などハリウッド作でも活躍中のデンマーク人俳優コスター・ワルドーさん。ビア監督作初出演のサネ役アンデルセンさんの演技も、母親としての芯の強さがうかがえて、感動を覚えるほどだ。モデルであるアンデルセンさんは、ビア監督のたっての願いで出演が決まったという。TOHOシネマズ シャンテ(東京都中央区)ほかで15日から公開。(文・キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。ゴールデンウイーク後、久々に出合った猫がニャアニャアと何かをしゃべっていて可愛かった。
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