小新井涼のアニメ考:地方イベントの特性と驚き

「TOYAKOマンガ・アニメフェスタ」に参加した小新井さん
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「TOYAKOマンガ・アニメフェスタ」に参加した小新井さん

 週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴し、アニメを使った町おこしのアドバイザーなども務める“オタレント”の小新井涼さんが、アニメにまつわるさまざまな事柄についてつづります。第13回は、北海道洞爺湖町で開かれたTOYAKOマンガ・アニメフェスタについて語ります。

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 先月末、「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」でもお世話になっている北海道大学の山村高淑教授よりお声がけいただき、「北海道大学現代日本学プログラム」の公開授業に特別講師として参加させていただきました。

 講師といってもコスプレや二次創作などのオタク文化に関する自分の体験を、いちアニメ好き日本人として留学生の方々に紹介させていただき、同時に海外でのアニメ文化などを教わるという、私自身も学ばせていただく立場での大変貴重な経験でした。

 ……と、ここまで聞くと大学構内で行われるお堅めの講義を想像されると思いますが、なんとこの公開授業が開催されたのは北海道の洞爺湖で開催された「TOYAKOマンガ・アニメフェスタ」の会場の中! 周りをコスプレした参加者の方々に囲まれた、ある意味これも貴重な経験といえる講義だったのです。

 そんなユニークなプログラムも含まれるこの「TOYAKOマンガ・アニメフェスタ」ですが、珍しいのはそれだけではありません。アニメイベントと聞いてまず想像される関東での大型イベントなどではなかなか味わえないような、洞爺湖ならではの驚きと魅力が満載でした。

 まず何よりも違うのがそのイベント規模で、「天体のメソッド」のモデルになったことからも分かるように、山や湖などの美しいロケーションや、思わず円盤を呼びたくなるような自然の広大さはもちろん、イベント自体が“洞爺湖の町ほぼ全体”を会場にしているという驚きのスケールで行われるのです。

 もちろんイベント開催中はコスプレをしたまま町じゅうを練り歩けるので、町のお食事どころで艦娘が食事をしていたり、町角の野外ステージで銀さんがアニソンを歌っていたり、コスプレダンパが行われる洞爺湖文化センターではボーカロイドたちがキレキレで踊っていたりと、普段は閑静な温泉街という町の景観がいい意味でカオスになります。

 そんなある種の異様な光景に対しての地元の方々の反応はどうなっているかというと、これがまた参加者以上にイベントに積極的なのですから驚きです。

 郵便局では職員さんがご家族でコスプレをしながら営業しているし、なんと某セブンイレブンの店員さんまでもがコスプレ姿で働いているという気合の入りよう。

 クオリティーが高すぎる「銀魂」のお登勢さんをはじめとしたおばさまレイヤーさんや、ご両親もお子様もしっかりコスプレ衣装に身を包んだご家族連れもたくさんいらっしゃいました。

 閉じられた会場でアニメファンだけが参加している印象があるアニメイベントが、年齢、性別、職業に関係なく町中の人にも楽しまれているのは、まさに名前の通り地域一体となった“お祭り”のようです。開放的な会場や迎える側もコスプレであることへの安心感が、地域の人とアニメファン双方が参加しやすいイベントにしているように感じました。

 また参加者の方々も会場周辺の名所などを調べて、アニメだけではなく洞爺湖という地域へ来ること自体を楽しみ、迎える地元の方々もそんなアニメファンの文化を理解した上で一緒にイベントを楽しむという、アニメと観光どちらかだけに偏りすぎないほどよい調和が、洞爺湖ならではのアットホームな温かみをイベントそのものに持たせているのだと思います。

 洞爺湖の豊かな自然、そして地域の人々のノリと温かさに、これは神谷明さんをはじめ、一度ゲストに来た方々がそれ以降、毎年すすんで参加してくださるようになるという話にも大いに納得です。

 次はG8のサミット記念館でヘタリアコスプレをする!というひそかな野望を抱きつつ……、私もまた参加させていただけることを心より願わずにはいられないイベントでした。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。

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