小新井涼のアニメ考:「アニメロス」の衝撃と対策

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 週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴し、アニメを使った町おこしのアドバイザーなども務める“オタレント”の小新井涼さんが、アニメにまつわるさまざまな事柄についてつづります。第9回は、小新井さんが年度末ならではの「アニメロス」について語ります。

ウナギノボリ

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 この時期は「春は別れの季節」と耳にする機会がよくありますが、一見すると、そうしたことに縁遠そうに見える私たちアニメオタクにとっても同じことがいえるんです。

 好きな作品が最終回を迎えた後に感じる喪失感を“アニメロス”と呼んだりするのですが、年度末でもあるこの時期は、普段より多くの作品との別れが待ち受けているんです。

 今回はそんな、私にとってはこの時期花粉症よりもつらい、アニメロスの実体験とその対処法について紹介させていただきます。

 作品によって程度はさまざまですが、特に重度のアニメロスに陥りやすいのは“一話完結ものの日常系”と“長期クール作品”です。

 一話完結の日常系は、最近だと「のんのんびのり」や「月刊少女野崎くん」などの作品がそうだったのですが、「これからも続いていくはずの彼ら彼女らの日々をこれ以上見られない!」ということにどうしようもない寂しさを感じてしまいます。

 ラスボスを倒すとか、冒険で目的地に到達するとか、最終目標がある作品は達成感や感動が残ることが多いのですが、最終目標が見当たらない日常系は作品世界そのものとの別れをより強く実感させられてしまうのです。

 また、最近一足先に最終回を迎えた「ハピネスチャージプリキュア!」もそうですが、ファミリー向けの長期クールの作品は、視聴期間が長いために愛着が深くなり、最終回でのお別れがよりつらいものになってしまいます。毎週一緒に笑って泣いて、成長を見守ってきた彼ら彼女らの姿を次の週からは見られなくなるなんて……。自分にとってはリアル卒業式よりも切ない年中行事といえるでしょう。

 最近私を深刻なアニメロスに陥れている「団地ともお」はそんな上記の特徴を両方満たす作品です。

 約2年にわたり放送された笑って時々泣ける「ザ・日常系」と呼べるエピソードの数々は、派手さや大きな出来事はないものの毎週癒やしと安らぎを与えてくれるものでした。

 そんな作風からひそかにファンだった人も多かったようで、突然の最終回に驚いた人々の「ともおロス」の声はネットニュースにさえなったほどです。

 ともおたちに会えない土曜日の虚無感はまさに心にぽっかりと穴があいたようで、いまだに枝島団地のことを思うとノスタルジックな思いになるとともに、個人的に好きなキャラである青戸さんの受験結果が気になってしょうがありません……。

 そんなつらい経験をふまえてのアニメロス対処法は、ズバリ!「思い出を胸に新たな出会いを探すこと!」……と言いたいところではありますが、実際はそんなにすぐ割り切れるものでもないんですよね……。

 なので自分の場合は普及を続け、DVDやグッズ購入という名のお布施をし、アンケートなど制作サイドさまに届くさまざまな手段で続編希望の旨を伝えたりして、アニメロスに苦しめられながらいつまでもあがき続けます。

 別れがあれば出会いがある……。そんな青春の一ページみたいな爽やかな思い出にするのもそれはそれですてきですが、それだけ好きな作品ですから、何らかの形でまた出会えることに一縷(いちる)の望みを抱き続けることで、悲しみも乗り越えられるのです。

この時期つらい別れを経験したあなたも、ぜひ試してみてください。(ただし二次元に限る!)

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。

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