桐山漣:主演映画「群青色の、とおり道」で歌声披露 「ミュージシャンを演じるのは気持ちいい」

主演映画「群青色の、とおり道」について語った桐山漣さん
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主演映画「群青色の、とおり道」について語った桐山漣さん

 特撮ドラマ「仮面ライダーW」(テレビ朝日系)に出演した俳優の桐山漣さんが主演を務める青春映画「群青色の、とおり道」(佐々部清監督)が公開中だ。自然豊かな群馬県太田市の合併10周年記念作品である今作は、夢半ばの売れないミュージシャンである青年が、故郷に帰り自分を見つめ直す姿を、同市の風景や祭事とともに描いている。主役の真山佳幸を演じる桐山さんに、ロケ地の印象やミュージシャン役について聞いた。

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 ◇佐々部監督との面接で驚きの体験

 桐山さんはこれまで、「仮面ライダーW」の左翔太郎役をはじめ、ドラマ「ロストデイズ」(フジテレビ系)の桜田亘役など強烈な個性を持った役どころを数多く演じている。「変わった役や悪そうな役とかもいろいろやらせていただいたのですが、比べてしまうと(佳幸は)ストレートで人間らしい、どこにでもいる人」と自身が演じた佳幸の人物像を分析する。

 佳幸役について、「この作品は自分の中にすっと入ってきた」と切り出し、「だからあまり『こうしよう、ああしよう』と思って演じていないですし、準備段階で監督といろいろ話し合うこともできた」という。さらに、「撮影中も監督と各シーンのとらえ方を話し合い、やり取りもいろいろできていた」と振り返り、「一つの作品を作る上で、監督とすり合わせていく作業がとても大切だということを学びました」と実感を込める。

 佐々部監督とは役が決まる前に面接で顔を合わせ、そのとき群馬県出身のバンド「back number」の楽曲で劇中歌の「電車の窓から」を歌ったが、「サビ後ぐらいまでは聴いてほしいと思ったのですが、見事にサビ前で(歌を)止められました(笑い)」と桐山さん。「せっかく覚えて弾いたのに、(佐々部監督が)『もういいよ』と」と笑顔で話しつつも、少し残念そうな桐山さん。歌を止められたあと、「ビールを飲もう」と佐々部監督に言われ、桐山さんは「監督とそういうことになるのは今までなかったので新感覚でした」驚いたという。そして、「監督はお話や人がとても大好きなので、会うとホッとします」と信頼を寄せる。

 ◇ミュージシャン役に快感

 桐山さんが演じる佳幸は売れないミュージシャンで、映画の中で実際にギターを弾き語りするシーンがある。学生時代にバンドでベースを弾いていたという桐山さんは、「ギターは中学の時に少しやっていたぐらいなので、今回の役に合わせて練習しました」といい、「ベースとギターでは弦の本数が違うのでコードを押さえる感覚が違ったけど、もともと弦楽器は大好きなので、練習も全然苦ではなく、楽しかった」と振り返る。

 桐山さん自身、ミュージシャンに対して、「俳優をやりながらも、どこかしらライブだったりミュージシャンというものに憧れ的な部分はある」といい、「同じ表現者だけど、役者は監督のテイストに合わせて変幻自在に変えていき、彼ら(ミュージシャン)は独自の世界観を自分たちだけで作っていくから、それがとてもすごいなと」と尊敬の念を表す。そういった考えもあってか、人前で歌うことについて、「作品の中でミュージシャンを演じるというのは、本当に気持ちよかった」と満足そうにうなずく。

 ◇ロケ地の人々の温かさが役を深める

 今作は群馬県太田市で撮影が行われている。「撮影は夏で、太田市は暑いから気を付けてと周りから言われていたので暑いことは覚悟していった」という桐山さんだが、実際には「曇りとかが多くて、とても撮影がしやすかった」といい、「それがよかったのか悪かったのか、あはは」とちゃめっ気たっぷりに笑う。また、雨に見舞われることも多かったため、「監督からは雨男といわれていた」と桐山さんは自虐的に打ち明ける。

 撮影はクライマックスに登場する実際の「ねぷた祭り」に合わせて進行した。「地元の皆さんの温かさに触れながら撮影させていただきました」と感謝し、「炊き出しをしてくれるなど、そういった温かさに触れることが、自分の役が故郷に温かさを感じるのと一緒で、自分の中でもそこを掘り下げていけた」と役作りにも好影響があったと明かす。「割と都会に近い横浜出身の自分でも、(太田市は)すっと入っていけるようなところでした」と桐山さんは地元の人々の温かさを思い返していた。

 ◇絶妙な配役に自信

 ロケ地もさることながら、佳幸の父親役に俳優の升毅さん、母親役に女優の宮崎美子さんなど人情味あふれる登場人物を演じるキャストがそろっている。升さんと宮崎さんが両親という役どころについて、桐山さんは「いいところに生まれたなと思いました」と言って笑い、「似ているといったらお二方に失礼になってしまいますが、父親の厳しいところや、自分の親もそうですが母親が髪を後ろで一つに結んでいたりとか、なんとなくどこか似ている」と説明。「だからお二人の名前を聞いた瞬間から(自分の)親父とお袋だなと」と直感したという。

 さらに女優の杉野希妃さんら佳幸の地元の友人を演じるメンバーとの雰囲気もぴったりで、「初めて会った時から雰囲気のよさは感じていた」と桐山さんは言い、「本読みでせりふを合わせたときに、この4人なら絶対いけると思い、撮影もスムーズに入っていけました」と振り返る。そして共演者たちのことを「僕の中では誰一人違うキャストは考えられない」と表現し、完成作に自信をのぞかせる。

 ◇どの世代にも響く作品に仕上がる

 今作は1人の青年のヒューマンドラマを軸に、友情や恋、家族などの物語が描かれている。佳幸の「帰る地元がちゃんとあるところ」に引かれると桐山さんは語り、「僕自身、よく引っ越しをしていたので地元という地元がない。だから佳幸のように気にかけてくれる地元の友達というのも少ない」と理由を説明。さらに、「1両とか2両編成くらいの電車で上京というのも経験したことがないから、ないものねだりではあると思うけど、佳幸がとてもうらやましい」という。

 物語の終盤で佳幸はある決断を下すが、結末に関係なく桐山さんは、「地元に帰ってきたので多分、ここで暮らすのではと思って演じていた」と演技プランを明かす。ところが、「人によって違うみたいで、エネルギーをもらって、また東京で頑張るのではと思う人もいた」と佳幸の行動について意見が分かれていたことを打ち明ける。最終的には桐山さんは、「クライマックスの先を思いながら演じた」といい、「いろんな見方があると思ったし、自分はそう演じていたけれど、見る人からしたら違う取り方もあると感じた」と納得する。

 若者の目線で語られる今作だが、「同じような体験をしている人は多いだろうし、老若男女問わず、どの世代にも響く作品だと思う」と表現する。「個人的に気になるのは、東京に慣れ親しんでいる人や東京生まれ東京育ちの人などにどう響くのか感じ方を知りたい」と桐山さんは興味津々ながらも、「見てもらった方には絶対届く作品ではあると思うので、いろんな人に見てもらって、みんなでこの映画を愛して共有し、温めていければなと思います」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1985年2月2日生まれ、神奈川県出身。2009年に2000人の中からオーディションで「仮面ライダーW」で主演に選ばれる。以降、ドラマや映画など数多くの作品に出演。13年には「韓国ソウルドラマアワード2013」(JAPAN俳優部門1位)ネチズン人気賞を受賞。主な出演作に、ドラマが「スイッチガール!!」(フジテレビTWO)、「空飛ぶ広報室」(TBS系)、「ロストデイズ」(フジテレビ系)など、映画は「吉祥寺の朝日奈くん」(11年)、「東京闇虫」(13年)、「L・DK」(14年)、「呪怨 ザ・ファイナル」(15年)などがある。15年には出演した映画「東京PRウーマン」の公開を控え、今秋には出演したスペシャルドラマ「磁石男2015」(日本テレビ系)が放送予定。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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