1980年から横浜市で行われている映画祭「ヨコハマ映画祭」。“映画ファンが主催するユニークな映画祭・映画賞”として、今月7日に37回目を開催した。授賞式では、受賞者への賞状授与やあいさつが終わったあとに、ファンがステージ前に駆け付け、直接花束やプレゼントを渡すことができる“贈呈タイム”があり、映画祭の風物詩になっている。この風物詩が続けられている理由について関係者に聞いた。
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通常、イベントやコンサートなどでファンが登壇者にプレゼントを渡したい場合、セキュリティーなどの問題から、受付にプレゼントボックスなどが設けられ、本人には直接手渡しできないケースが多い。人気俳優や大物俳優などに、直接花束などを手渡すという光景は最近ではあまり見ることがなくなったが、ヨコハマ映画祭の実行委員・鈴村たけしさんによると、同映画祭では「主催者も一映画ファン。ファンの目線に立ち、その行為を特に止めることはしていません」と話す。
ヨコハマ映画祭は、80年に映画愛好家の鈴村さんら3人が、スポンサーがつかない手作りの映画祭を開催したいという目的でスタート。過去には北野武さんや高倉健さん、福山雅治さんらが授賞式に参加した。鈴村さんによると、これまで贈呈タイムで一番ファンが殺到した受賞者は「男闘呼組(おとこぐみ)ですね。本人たちが受け取りができないくらい殺到しました」と、89年の第10回ヨコハマ映画祭で「ロックよ、静かに流れよ」(88年・長崎俊一監督)で新人賞を受賞したジャニーズのロックバンドの名を挙げた。
映画や映画祭のことを広めてもらいたいという気持ちから、当初は報道陣だけでなく来場者の写真撮影も許可していたといい、「撮影オーケーというのがヨコハマ映画祭の売りでしたが、雑誌などに写真を売られてしまうなどの事情からやむを得ず禁止にした」と鈴村さん。しかし、“贈呈タイム”に関しては「今のところトラブルや不愉快に感じているという意見がないので続けている」という。
受賞者には花束やプレゼントの受け取りを強制をしているわけではないといい、「極力スタッフが受け取ろうというスタンスではいるが、(受賞者)ご本人から『受け取りたい』と言ってくださる方が多い」という。昨年、主演男優賞を受賞した綾野剛さんは「綾野さんのときもステージに殺到しましたが、綾野さんは『壇上でもらうのは申し訳ないので、自分が皆さんの席まで行きます』と、おっしゃっていた」と振り返った。
鈴村さんは、「写真撮影の許可は事情があってできなくなってしまったが、自分たちも普段は客席側にいるような立場。いい映画を作った人たちと、そのファンとを出会わせたい」と熱く語る。ファンだけでなく受賞者にとっても、ファンとの交流を楽しむことができるのは、「ヨコハマ映画祭」というアットホームなイベントだからこそなのかもしれない。
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