ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
俳優の野村周平さんが主演を務める映画「ライチ☆光クラブ」(内藤瑛亮監督)が全国で公開中だ。映画は、古屋兎丸さんが2005年にマンガ化した「ライチ☆光クラブ」と「ぼくらの☆ひかりクラブ」が原作。黒い煙に包まれた蛍光町を舞台に、醜い大人たちを嫌う14歳の少年たちによる愛憎など多感な思春期を描いている。今作でタミヤを演じる主演の野村さんに話を聞いた。
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野村さんが演じるのは、少年たちが集う廃工場を秘密基地にした「光クラブ」の創設者で、リーダーのタミヤ。野村さんは役どころについて「(世界観が)非現実的なので難しい。その中で僕の役は普通でいなければいけなかった」と説明する。
役作りについては、「この役だからやせようみたいな役作りはしますが、基本的には現場に入って直感というか、その空気を味わって演じます」とニュートラルに現場に臨むのだと話す。物語はファンタジックな世界観のため感情移入が難しそうだが、「本番中はその世界で生きているという感じなので、感情は普通に動きます」という。「パズル」(14年)以来2度目となる内藤監督には、「お互いを分かっているという感じだったので、やりやすかったです。言葉はいらなかった」と全幅の信頼を寄せる。
そんな内藤監督について、野村さんは「子供心を忘れない感じで、本当に映画好き」と人物像を語る。
撮影は実際にある巨大廃工場の中に作り上げられたセットの中で行われ、野村さんは「一つのスタジオぐらいの広さがあって、細部まで作り込んでいます」と説明し、「どこを映しても廃工場という感じなので、ライチの世界観を表現するロケ地としては最高でした」と絶賛する。
登場人物が着ている特徴的な制服も世界観を作り上げるのに一役買っているが、「(衣装デザインの)澤田石(和寛)さんが、一つ一つオリジナリティーあふれるものを作ってくれています」と野村さんは感謝し、CGではなく特殊造形として描かれているロボットのライチについても、「(ライチをデザインした)百武(朋)さんすごいなと思いました」といい、「特殊造形物だからこその人間っぽさが出ていていいな」と感想を述べた。
14歳を目前にした9人の少年たちによる裏切りや愛憎が描かれる今作だが、「人を選んでしまうだろうし、R(15+)指定が付いていますが、本当は中学生ぐらいの子たちに見てほしい」と切り出し、「子供時代を思い出していただくためにとか、思い出せるような内容にもなっている」と解説する。
そして、「こういう世界観で大変だったのでは……聞かれたりもして、自分では他の仕事をしているときとあまり変わりはないのですが、(見ている人たちから)そうやって思われるということは、すごい作品なんだと痛感しています」と実感を込める。
野村さんは「日々ロック」(14年)や放送中のドラマ「フラジャイル」(フジテレビ系)など、マンガ原作の作品の出演経験も多い。「どういう役なのかとか、原作を見ている人たちへのリスペクトがあるので(原作には)目を通します」とマンガ原作もの出演時には必ず原作を読むという。役作りなどに原作を参考にすることもあり、「『ライチ☆光クラブ』もそうですが、ほとんど原作から参考にしていますし、ほとんどの答えはマンガの中にあると思っている」と持論を語る。
さらに、野村さんは原作をリスペクトするか、原作をまったく無視してやるかのどちらか」と切り出し、「リスペクトは、衣装から何まで全部作り上げていくという場合だったらできること。マンガの世界の人物になれるわけではないので、できないものだと無理をしても意味がない」と原作もの出演時のスタンスを語る。
今作では特に「容姿だったりは参考にしました」と振り返る。映画ではタミヤはクラブメンバーから逸脱しないよう行動している場面も見受けられるが、野村さん自身、グループ行動では「全然(人と)合わせないです」と言って笑う。「『ライチ☆光クラブ』の世界では、(タミヤは)ちょっと大人びている方なのですが、(自分は)すごく子供で、子供だからこそ大人が好き(笑い)。タミヤとは逆です」とタミヤと自身を比べ、「甘えられる人が好きなので大人が好き。でも、まだ同世代に甘えるというのは抵抗があります」とちゃめっ気たっぷりの表情を見せる。
15年には出演した映画が3本公開され、“月9”ドラマ「恋仲」にも出演。今年も出演作が多数控えている野村さん。自身の考え方が変わってきたといい、「今までは人の目を気にしたりもしていましたが、楽しくなければやっている意味がない」と心境の変化を語り、「僕の場合は楽しんでいるときの方が、絶対にいい顔ができると思っているので、どんな仕事でも楽しんでやろうという感じです」と充実の表情を見せる。
今後チャレンジしてみたい仕事や役については、「海外の仕事。中国とかアジア全般の仕事をやりたい。(挑戦してみたい役は)なんでもやりたいんですけど、リアリティーのある役」と野村さん。続けて、「好きな映画もアジアのものが多く、特にウォン・カーウァイの作品が好き」といい、「『恋する惑星』は音楽もきれいだし、『花様年華』も演出がおしゃれだったり、『天使の涙』のような作品もすごく好き。おしゃれでリアリティーがあり、リアルな質感の映像で撮る映画に出たいです」と思いをはせる。
今作では少年同士の愛憎や、少女とロボットによる恋模様なども描かれているが、理想の女性像について、「結婚したいという夢でもいいですし、夢があって前を向いて進んでいる人」という野村さん。その理由を「こちらばかり見るのではなく、前を見て歩いている人、夢見て歩いている人が理想です」と説明し、さらに「あとは強い女の人かな……」と付け加える。「女性として強いというのはあると思いますが、自分をちゃんと持っている人がいい」と野村さんは続け、「自分も我が強いから負けないよとは思いますけど(笑い)」と楽しそうに笑顔で語った。
今作を「伝えたいことはなんだろうということは、すごく伝わってくる映画」と表現し、「タミヤは普通で、タミヤの普通がみんなの異常だから目立っている。そういう意味では(出演者)みんなを見てもらいたい。みんながみんな面白いので、僕というよりは出演者みんなを見てもらいたいです」とアピールする。そして、「鬱屈とした男たちがいるというのは訳が分からないと思う人もいるだろうし、こういう時代もあったなと思う大人の人たちもいると思うので、全世代の人たちに見てもらいたいです」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1993年11月14日生まれ、兵庫県出身。2009年、アミューズ全国オーディションでグランプリを受賞。12年に出演したNHK連続ドラマ小説「梅ちゃん先生」で脚光を浴び、14年公開の「日々ロック」で映画初主演を果たす。15年には「台風のノルダ」で声優初挑戦のほか、ドラマ「恋仲」(フジテレビ系)にも出演。主な出演作に「男子高校生の日常」(13年)、「愛を積むひと」(15年)、「ビリギャル」(15年)など。16年には出演した映画「ちはやふる~上の句~/ちはやふる~下の句~」「森山中教習所」の公開を控える。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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