全国の書店員が「一番売りたい本」を選ぶ2016年の「本屋大賞」が12日発表され、宮下奈都さんの「羊と鋼の森」(文藝春秋)が大賞に輝いた。授賞式に出席した宮下さんは同書の初版が6500部であったことを明かすと「文藝春秋の方に『初版6500部の小説が本屋大賞を取るのは前代未聞です』って言われました」と笑顔で話し、「『歴代の受賞者を見ても宮下さんの知名度の低さは抜群』って言われて、そういう意味でも(大賞受賞は)誇りに思いますし、私の勲章だって思います。奇跡みたいで私は一生忘れないと思う」と喜びを語った。
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宮下さんは1967年、福井県生まれ。上智大文学部哲学科卒業。2004年に「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選。10年に「よろこびの歌」が第26回坪田譲治文学賞の候補となり、12年には「誰かが足りない」が第9回本屋大賞で7位となった。
「羊と鋼の森」は、ピアノの調律に魅せられた青年が、調律師、人として成長する姿を描いた小説で、第154回直木賞候補にもなった。
宮下さんは本屋大賞について「狙って取れるものではないし、私にとってはすごく難しい。一生、縁のない、一生に一度、取れたら夢のような賞。書店員の方の純粋な気持ちで成り立っている賞で、こっちから狙っていく賞ではないですし、ここにいることが信じられないです」とも語っていた。
本屋大賞は「売り場からベストセラーを作る」をコンセプトに創設され、毎年1回表彰しており、今回が13回目。これまでに「ゴールデンスランバー」(伊坂幸太郎さん、08年)や「告白」(湊かなえさん、09年)、「天地明察」(冲方丁さん、10年)、「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉さん、11年)、「舟を編む」(三浦しをんさん、12年)などが受賞し、多くのベストセラーを生み出した。
今回は14年12月1日~15年11月30日に刊行された日本の小説が対象で、ノミネート作は新刊書の書店で働く店員の1次投票で決定。全国435書店552人が投票した。又吉直樹さんの「火花」(文藝春秋)、辻村深月さんの「朝が来る」(文藝春秋)や米澤穂信さんの「王とサーカス」(東京創元社)など上位10作品がノミネート作品となった。
「羊と鋼の森」宮下奈都▽「君の膵臓をたべたい」住野よる▽「世界の果てのこどもたち」中脇初枝▽「永い言い訳」西川美和▽「朝が来る」辻村深月▽「王とサーカス」米澤穂信▽「戦場のコックたち」深緑野分▽「流」東山彰良▽「教団X」中村文則▽「火花」又吉直樹
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