サンダーバード:マクロスの“原点” 新メカデザインの河森正治監督が語る 50周年の魅力 

「サンダーバード ARE GO」のサンダーバードS号のデザインを手がけた河森正治さん
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「サンダーバード ARE GO」のサンダーバードS号のデザインを手がけた河森正治さん

 SF人形劇「サンダーバード」の誕生50周年を記念した新テレビシリーズ「サンダーバード  ARE  GO」。NHK総合で放送中で、人気アニメ「マクロス」シリーズなどの河森正治監督が新マシン・サンダーバードS号のデザインを手がけたことも話題になっている。河森さんは「サンダーバード」の大ファンで、子供のころ、日本で1966年から放送された旧作を見て「ほかの番組とはレベルが違うと驚いた」と衝撃を受け、“原点”ともなった作品だ。河森さんに、新旧「サンダーバード」への思いを聞いた。

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 ◇レベルが違う!

 「サンダーバード」は1964年、英国で放送が始まり、66年から日本でも放送されている。2065年を舞台に、人命救助を目的とした私的組織・国際救助隊のトレーシー家5兄弟が、救助用メカ・サンダーバード1~5号で、事故や災害に遭った人たちを救助する姿が描かれる。巨大なコンテナを抱えた大型貨物機やロケット、地底に潜るドリルメカなど斬新なメカを駆使した特撮が人気を集めた。

 河森さんが日本で放送された「サンダーバード」を見たのは「小学1、2年生のころ」だったといい「ほかの番組とレベルが違うと驚いた。あまのじゃくなところがあって、プラモデルではなく、自分で(登場するメカの)ペーパークラフトを作っていた」と話す。

 河森さんは「マクロス」などのメカデザイナーとして知られるが「絵を描くよりもペーパークラフトに興味を持っていた。当時はビデオがなかったから、細かいところが分からなくなったら、店に『サンダーバード』のプラモデルを見に行って、確認していました。メカはまず機構から考えるんですよ。絵を描くようになったのは遅くて、中学生くらいからだった」と「サンダーバード」は自身の原点にもなったようだ。

 ◇日本のアニメへの影響とは?

 「サンダーバード」は日本のアニメにも大きな影響を与えたと言われている。河森さんは「メカの発射のシークエンスやメカの乗り込むシーン、基地が変形する……など、日本のアニメは大きな影響を受けている。兄弟にそれぞれ役割があり、メカにテーマカラーもあるのは、戦隊もののようですよね。『サンダーバード』以前にも『海底大戦争 スティングレイ』などもありましたが、『サンダーバード』の影響は大きいと思います」と話す。

 さらに「『サンダーバード』は主人公が戦わない。『マクロス』では戦いは武器ではなく歌で決着する。マインドの部分も影響は大きいです」と「マクロス」への影響も明かす。約50年の時を経て、旧作を見ても「恐ろしいです。あの時代にこんなことをやっているのか……」と驚くことが多いという。

 ◇S号は2号のリスペクトも

 新作では河森さんが新マシン・サンダーバードS号をデザインしたことも話題になっている。河森さんはデザインを担当することになった経緯を「3年ほど前。日本のエージェントからオファーがありました。サンダーバードは英国、日本、ニュージーランドで人気がある。全部、島国ですよね。日本のマーケットを意識して、オファーがあったようです」と説明し「興奮しました。まさかこんな時が巡ってくるとは!」と喜ぶ。

 S号の“S”はシャドウを意味し、セキュリティー担当のケーヨが乗る。ステルス機能を搭載し、操縦席が切り離されるとバイクになるほか、翼を折りたたんで、狭いスペースでも着陸できる。河森さんは、デザインについて「1~5号はフォルムが分かりやすく、シルエットだけで分かる。同じようにシルエットを見て分かるデザインを目指した。プテラノドンをモチーフとしたデザインやリアルな戦闘機に近づけたものなどラフを7、8体描きました」と話す。

 マクロスのような変形も期待してしまうところだが、S号は変形しない。河森さんは「人型の変形はやめてほしいという話でした。ロボットがレスキューしてしまうと、例えば倒壊しそうなビルを支えたり、簡単に解決してしまいますからね。便利になりすぎると(ストーリーが)成立しないので」と説明する。

 また、S号のデザインは「ノズルの形や前進翼は2号をモチーフ。2号をリスペクトしながらデザインしました。シャドーバイクが、2号のように分離するアイデアを提案したところ採用されました」と2号への“愛”が込められている。

 ◇制作陣のこだわりとは?

 新作は、人とメカがCGアニメーションで、背景が一部をミニチュアセットで撮影されている。河森さんは「自分も相当な『サンダーバード』ファンですが、(新作を制作する)リチャード・テイラー氏は、自分もかなわないほどのファン。本当はすべてミニチュアでやりたかったようですが、予算と時間を考えて、背景をミニチュアにしたようです。すべてCGで作った方が楽ですが、こだわりですよね」と話す。

 関係者によると、新作は、旧作のファンはもちろん、子供にも人気を集めているといい、河森さんは「企画を受けた時、子供向けで、50年前(の旧作)もそうだった聞いて、驚いた。日本のアニメが高齢化にシフトしつつありますが、子供にいいものを見せたいと本気でやっているんです」と語る。旧作をリスペクトしつつ、大胆にCGを使用するなど“進化”した新作は、今後の展開も注目される。

 「サンダーバード  ARE  GO」はNHK総合で毎週土曜午後5時5分に放送。第1~13話を収録した「サンダーバード  ARE  GO  ブルーレイ  コレクターズBOX1」「サンダーバード  ARE  GO  DVDコレクターズBOX1」が11日に発売。初回限定生産盤には、特典映像として河森さんのインタビューなどが収録される。

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