リオデジャネイロ五輪が終わり、4年後は東京五輪だ。あの素晴らしいサンバの閉会式を見ると、東京のエンターテインメントって何があるの?と思ってしまう。でも、江戸っ子を楽しませ、今も続く伝統芸能が東京にはある。浪曲の玉川奈々福さんの会「ぜんぶ新作。玉川奈々福のほとばしる純情浪曲!」が25日、東京・浅草の浅草寺近くにある木馬亭で開催される。今回は浪曲で描く恋物語。「今に生きる人に楽しんでもらえる新作」だ。
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浪曲、浪花節の世界は、一昔前は「古くさい」と言われがちだった。ところが、最近は若い浪曲師が増え、お客さんもすっかり若返った。奈々福さんは2001年に浪曲師として初舞台。後輩がなかなか入ってこなかった時代もあったが、今では若手を支える先輩のお姉さんだ。
「9年前、うちの師匠(玉川福太郎さん)が亡くなった(事故で急逝)んですが、最近のお客さんは、師匠のライブを知らない方がほとんど。この10年で新しいお客さんが生まれているってことなんですよ。若手も伸び伸びやってます。お涙ちょうだい(の浪曲を)やらないんです。自分で考えて、面白いという浪曲をやってるんです。(昨年暮れに急逝した)国本武春師匠のお陰もあって、若い演者が育ってきています」
師匠をプロデュースした連続の会を開き、昨年は「笑点」司会の春風亭昇太さんらをゲストに自ら「浪曲破天荒列伝」(全5回)を開き、「満席に感極まるものがありました」としみじみ語る。
そして「ほとばしる純情浪曲!」は、自分が今やりたい、伝えたい新作を演じ、個性的なゲストも楽しんでもらおうという企画だ。今回演じるのは、オリジナルの「金魚夢幻」。一匹の金魚と金魚師の恋物語だ。
「新作を考えることこそ、浪曲とは何かを突き詰めることになる。古典の構造を知らないと新作は作れない。とても手間がかかる。古典の方が楽かもしれない。でも浪曲って何なのか、考えたいじゃないですか。昔は『こんなに一生懸命、浪曲をやっているけれど世間と違和感があるなあ』と思ってましたが、今はそうではない。変わってきています。落語もそうでしたが、浪曲のことを人々は1回忘れたから、違和感なく入ってくれるんです」
今回のゲストは「R-1ぐらんぷり」にも登場したスタンダップコメディーのナオユキさん。「ナオユキさんの語りは音楽のようで。しかも、道なき道を行く人。こうした人とお付き合いしたい」という。「先日何かで読んだんですが、昇太師匠が一番癒やされる瞬間はうけた瞬間だそうです。そう思います。お客さんがうけていれば芸人は安心する。自由に何かやっていける。そう思うんです」と力を込める。
公演は25日午後7時、浅草・木馬亭。玉川奈々福さん「金魚夢幻」(曲師・沢村豊子さん)、木村勝千代さん「削り屋」。ゲスト・ナオユキさん。問い合わせはプロジェクト福太郎(090・7001・6867)。詳しくはブログ(http://tamamiho55.seesaa.net/)を参照のこと。(油井雅和/毎日新聞)