川口春奈:林遣都と映画「にがくてあまい」出演 見たあとに「ちょっとだけ気が楽になってほしい」

映画「にがくてあまい」について語った川口春奈さん(右)と林遣都さん
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映画「にがくてあまい」について語った川口春奈さん(右)と林遣都さん

 小林ユミヲさんのマンガを女優の川口春奈さん主演で実写化した映画「にがくてあまい」(草野翔吾監督)が10日に公開された。「にがくてあまい」は、2009年からウェブコミック誌「EDEN」(マッグガーデン)で配信され、16年5月にコミックス最終巻が発売されたマンガで、男に恵まれない野菜嫌いの女と、女に興味がない男の同居生活と恋愛模様をコミカルに描いている。主人公の江田マキを演じる川口さんと、あることをきっかけに同居するようになる同性愛者・片山渚役の林遣都さんに、お互いの印象や撮影についてのエピソードなどを聞いた。

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 ◇マキと渚の関係は「家族に近いような感じ」

 川口さんが演じるマキは、容姿端麗なキャリアウーマンだが料理はできず部屋は荒れ放題で男に恵まれない独身女という役柄。「気持ちがいいぐらい物事をはっきりさせたかったり、好き嫌いがはっきりしていたり、相手を選ばずに主張できるのは、ある意味、すてきだなって」と川口さんはマキというキャラクターの印象を語り、「言いたいことを言うし人を困らせたりもするけど、それが憎めないような人というイメージなのかなと思ったので、そこはちょっと意識して、嫌な女に見えないようには気を付けました」と役作りのポイントを説明する。そして、「仕事のときはバリバリ働いて私生活が……というギャップが面白くて、コロコロ表情が変わる大人な女性は可愛いなって思いました」と話し、ほほ笑む。

 一方、料理好きの菜食主義者で女には一切興味がないという渚を演じている林さんは、「僕は(自分と役が)かけ離れすぎていて、あまり自分と比べたりとかは考えることなく、とにかくがっつり作り込みました」と切り出し、「あまり(渚の)背景も描かれているわけではなく、ゲイということに対してもそんなにストレートな表現で描かれてはいないので、だからこそすごく難しかった」と振り返る。そして、「実際の方に聞くと『立っているだけで分かる』って言われたので、そう見えればいいなと」と想像力を働かせた。

 マキと渚はマキが行きつけのバーでやけ酒をしているときに出会うが、「お酒の力を借りて、時には勢いで言えないことを言えたりとかするのもなくはないし、そういうのも一つの形かなとは思う」と川口さんは話し、「最悪の出会いと思う人もいれば、そうじゃないと考える人もいたりするけれど、個人的には全然あり。大人だしって思っちゃいます」とちゃめっ気たっぷりに話す。すると林さんも「僕もまったく同意見です」と笑う。

 マキと渚のような関係性については、「恋仲になるのかなと思ったりもするけど、それを超えたちょっと家族に近いような感じ。恋愛じゃなくても2人に熱いものがあるなということで、いい2人だと思います」と川口さんが語ると、林さんは「恋愛でも恋愛じゃなくても、欠点だったり克服したいものだったりをお互いが助け合って補い合える関係って、すごくすてきだなと思います」と同意し、「そういう相手が欲しいな(笑い)」とため息交じりに話す。

 ◇料理の練習をするも「指を切ってからはやめた」

 川口さんと林さんは今作が初共演となったが、お互いの印象について川口さんは「(林さんは)あまり人に興味がない人なのかなって思っていました(笑い)」と切り出すも、「実はすごく情に厚くて、気にしてくれたり話を聞いてくれたり、いいお兄さんのような印象に変わりました」と話す。

 笑顔で聞いていた林さんは、「年下ですが、一緒にお仕事をしていく中で全然年齢差を感じなくなった。というか、思っていた以上に大人っぽい」と驚き、「落ち着いていて、はっきりしているので、一緒にお仕事をしていて何でも言えるし、すごくやりやすい環境。僕はあまり話さないほうなので、すごく居心地はよかったです」と振り返る。

 2人の共演シーンは多いが、「何かあれば話し合いましたが、確認し合わずにやり合える関係性みたいなのがあって、それがよかったです」と林さんが話すと、川口さんも「そこまでお話ししたり固めたりしなくても、違和感もなくちゃんと気持ちがそれぞれ動いて、相性なのか何なのか分からないけれど、ナチュラルに感情が動いたなと思います」と言ってうなずく。

 渚は料理好きだが、林さん自身は「普段はほとんど料理はしない」と言い、「監督に常に見張られているような感じで、『やってますか?』『どのぐらいやってますか?』と(笑い)」と振り返り、映画のために練習を重ねたと説明する。続けて、「監督が結構厳しい方で、『スーパーでいくらでも野菜を買ってきていいので、とりあえず切ってください』と言われ、領収書で練習しているか、していないかをチェックされました」と明かす。

 その成果として、「監督が基本的には吹き替えは使いたくないと最初に言われていましたが、ほとんど手元とかも自分の手です」と林さんは胸を張るも、「練習している中で指を切っちゃって、そこから怖くなり、撮影が終わってからぱっとやらなくなりました。包丁も買ったんですけど、まったく使ってないです(笑い)」と撮影後は料理をしなくなったという。

 女性目線として男性が料理をする姿について、「いいと思います。すてきだし、やってほしいです」と川口さんは笑顔を見せ、「今は女性がすべて家のことをやる感じでもないし、協力してやっていけるのが一番いいです」と持論を語る。

 ◇2人でマキの実家を訪ねるシーンが印象深い

 マキの両親役で中野英雄さんと石野真子さんが出演しているが、「真子さんは本当に大好きで、(演じている役が)すごくいいお母さん」と川口さんは切り出し、「一緒にギョウザの皮を包んでいるシーンがあるのですが、しっくりきすぎて泣きそうになっちゃっいました(笑い)。温かい人で、すごくうれしかったです」と共演を喜ぶ。

 林さんも「中野さんとはがっつり共演させていただくのは初めてでしたが、(中野さんの)息子の太賀と昔から仲がよく、自分も息子のように可愛がってくださっていたので、何というか満を持して一緒にお芝居できたことがうれしかったし、すごく残りました」と感慨深げに語る。

 それぞれ印象深いシーンを聞くと、「酔っ払っているお芝居は難しいなと思った」と川口さんは打ち明け、「仕事でなかなかうまくいかなくて、お酒を飲んで渚にすがる……というようなシーンがあって、どんな気持ちになるんだろうとか思ったりして難しかったけど、印象に残っています」と語る。

 マキと渚がマキの実家を訪れたときのシーンが印象に残っているという林さんは、「渚が帰るとき、台本にはそんなになかったのですが、『マキの家族に会っていろんなことに気付いていっている感を出しすぎず、さりげなく感じておいてほしい』と言われていた」と説明し、「映画では渚の生い立ちや背景が深くは描かれていないのですが、(マキの両親との別れ際に)すごく切なく悲しい気持ちになるんだなと。監督からも『こういうシーンになるとは思っていなかった』と言っていただいて、ちゃんと意味を持たせてやれたのかなと思っていて好きです」と明かす。

 ◇2人が苦手なものは…

 今作について、川口さんは「いろんな要素が詰まっていて、自分が思っていた以上にほっこりする場面が多くて、なんだか温かいなと。かと思えば下ネタとかも入っていたりして、見ていて飽きない映画になったのでは思います」と自信をのぞかせる。

 一方、林さんも「あまり少女マンガは読まないのですが、原作を読んだときに、こんなにディープなところまで描いていくんだということにちょっとびっくりした」と切り出し、「映画も女の子とゲイの男のラブコメディーというだけではなく、何か抱えている人たちがいっぱい出てきて、そういう人たちが接し合うことでいっぱい愛が生まれて、すごくいいなと思いました」と笑顔を見せる。

 それぞれの役の見どころを、川口さんは「(マキは)正直で真っすぐで人の気持ちや痛みが分かるキャラクターだと思います。仕事をめっちゃ頑張ってるけどなかなかうまくいかない人はたくさんいると思いますが、きっとみんなそうなのかなと思うと頑張れる気がするので、映画を見てちょっとだけ気が楽になってほしいなと思います」とメッセージを送る。

 林さんは自身の役では「ゲイという部分を本当に監督と一緒に突き詰めて作り込んだつもり」と切り出し、「実際の方が見て『本物だな』というふうに思ってもらえればなと思って、細かい仕草とか、取り入れられることは全部取り入れさせてもらっているので、それを見てほしいです」とアピール。

 作品のキャッチコピーにある「野菜が苦手なオンナ」「女が苦手なオトコ」に絡めて苦手ものは?と聞くと、林さんは「朝。絶望的に苦手で、朝起きたときにいつも切れてます(笑い)」と明かし、川口さんは「基本的に人にいろいろ言われたり怒られたりしたくないので、話し合いとか苦手です。意見を言うのってすごく難しいなと日々、感じております」と語った。映画は全国で公開中。

 <川口春奈さんのプロフィル>

 1995年2月10日生まれ、長崎県出身。2007年、ローティーン向けファッション誌「ニコラ」のモデルオーディションでグランプリを獲得しデビュー。「三井のリハウス」や「ポカリスエット」のCMでも注目される。09年、「東京DOGS」(フジテレビ系)でドラマデビューし、11年、ドラマ「桜蘭高校ホスト部」(TBS系)で連続ドラマ初主演、同作の劇場版(12年)で映画初主演を果たす。主な出演映画に「マダム・マーマレードの異常な謎」(13年)、「好きっていいなよ。」(14年)などがある。17年には出演した映画「一週間フレンズ。」の公開が控えている。

 <林遣都さんのプロフィル>

 1990年12月6日生まれ、滋賀県出身。2007年に映画「バッテリー」で主演を務め、俳優デビュー。同作での演技が評価され、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、多くの新人賞を受賞する。主な出演作に、ドラマは「ST 赤と白の捜査ファイル」(日本テレビ系)、「銀二貫」(NHK総合)、「玉川区役所 OF THE DEAD」(テレビ東京系)など。映画は「風が強く吹いている」(09年)、「パレード」(10年)、「悪の教典」(12年)、「僕だけがいない街」(16年)など。16年はNHKの大河ファンタジードラマ「精霊の守り人」に出演。また、出演した映画「グッドモーニングショー」(10月8日)の公開を控える。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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