スティーブン・スピルバーグ監督にとって初めてのディズニー作品となる「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」が17日に公開された。日本語版で、ヒロインの少女、ソフィーの声を担当するのは、フィギュアスケート選手としても活躍する人気子役の本田望結(みゆ)さんだ。「声だけなので、ちょっとオーバーにやったほうが伝わりやすいのかなとか、お芝居風にやってしまうと、いつもの本田望結と同じような印象になってしまうんじゃないかなとか、たくさん考えたうえで、ソフィーちゃんのイメージを崩さないように、一つ一つの言葉を大切にしながらやらせてもらいました」と収録を振り返る本田さんに、初めての声優体験や映画について、さらに、自身の夢などを聞いた。
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映画「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」は、英作家ロアルド・ダールさんの「オ・ヤサシ巨人BFG」(評論社)が原作。ロンドンの児童養護施設で暮らす10歳の少女ソフィーが、「巨人の国」で暮らす心優しい巨人、BFGと友情を育み、やがて、英国最大の危機を救うことになるというファンタジーアドベンチャーだ。主人公BFGを、「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015年)での演技で、今年の米アカデミー賞助演男優賞に輝いたマーク・ライランスさんが、ソフィー役をオーディションで何千人もの中から選ばれた12歳の新星、ルビー・バーンヒルさんが演じている。
本田さんによるとソフィーは、「一人ぼっちの少女というと、暗いというイメージかもしれないんですけれど、全然それとは逆で、負けない気持ちとあきらめない気持ち、すごい勇気を持っている女の子」で、演じながら「私も見習おうと思いました」と話す。
ディズニー作品は、「全部見てきたというぐらい大好き」で、初めて見たのは「くまのプーさん」(1965年)。「美女と野獣」(91年)のテーマ曲は、フィギュアスケートの曲に使ったこともあるという本田さん。そんなディズニー作品に念願かなって関わることができ、しかも声優となると、プレッシャーや難しさを感じて当たり前だ。ところが当の本田さんは、約2週間に及んだ収録を「難しさというのはなくて、逆に毎日が本当に楽しかったです」と笑顔で語る。
その一方で、「叫ぶシーン」一つをとってみても、「ただ声を大きくして言っても、見ている人の心には気持ちが伝わらないのではないかとか、うれしくて『やった!』と叫ぶのと、怖くて叫ぶのと、寂しい叫び方とか、いろんな叫び方があると思うんですけど、(台本には)その気持ちは書いていないので、どんな叫び方で、どんな息遣いなのかをしっかりと自分で考えながらやらせてもらいました」と入念に役作りしたことを明かす。
好きなシーンに、ソフィーとBFGが、ペネロープ・ウィルトンさん演じる英国女王に謁見するシーンを挙げ、「面白さも詰まっているし、ドキドキも詰まっているし、女王陛下の判断で、巨人のことだったり、ソフィーちゃんやBFGのことも全部変わってしまうので、どうお答えになるのだろう」と思いながら声を当てていったことを明かし、「プップクプーのシーンもすごく面白かったし、早く先が知りたくて(映像を)ずっと見ていたら、ソフィーちゃんのせりふだ、みたいになっちゃったりして」と、恥ずかしそうに告白する。なお、プップクプーとは、巨人の国にある、BFGが大好きな、泡が下降する不思議な飲み物で、本田さんもプップクプーは「飲んでみたい」という。「どんな味なんだろう。メロンジュースみたいな感じかな。緑色がすごくきれいで……」と自身のドレスの緑色と比較しながら想像の翼を広げていた。
さて、BFGの仕事は、「夢の国」で集めた多くのコレクションの中から、いい夢や悪い夢を調合して子供たちに吹き込むこと。そこで、本田さんに見てみたい夢をたずねると、「夢とはちょっと違うかもしれないですけれど」と断った上で、「10年後の自分とか見てみたいなと思います」と答える。ちなみに、今まで見た夢で楽しかったのは、「私は食べることが大好きなので、ご飯とかどんなにモリモリ食べても太らない夢」だという。
逆に、夢を調合し、届ける立場だったら、どんな夢を届けたいかという問いには、「みんなが笑顔になれる夢がいいとソフィーちゃんは言っていたんですけど、私はやっぱり、生きていると、うれしいことも悲しいこともあると思うので、そういうときに乗り越えられる夢」と答え、「怒られているときでも、友達とちょっとけんかしちゃっても、元気な夢を見たら、ごめんねと謝れると思うし、いろんな人に、その人の今に合わせた夢を届けてみたいなと思います」とにっこり。
「この映画には希望があって、絶対勇気づけられると私は思ったので、ぜひご家族だったり、お友達だったりと見てほしいです」と勧める本田さん。そして、「巨人は怖いというイメージを、みなさん持っているかもしれませんが、BFGは逆で、すごく優しいし、みんなに夢を届けてくれるし、この作品を見てくれた方にも、また一つ夢を届けてくれる存在だと思います。私も、ソフィーちゃんのイメージを崩さないように自分なりにやらせていただいたので、その思いが伝わればいいなと思います」とよどみなく話し、「楽しいし、笑うときもあれば、感動するシーンもあるし、どのシーンが欠けても完成できないと思うので、ぜひ、一つ一つのシーンを大事に見ていただけたらと思います」とアピールする。
女優、フィギュアスケート選手、学業と、“三足のわらじ”を器用に履きこなし、インタビュー最後の写真撮影では、壁にあるコンセントカバーをどう回避しようか悩む筆者を見て、「隠しちゃう(笑い)」とその前でポージング。そんな、おちゃめで機転も利く本田さんに、今後の夢や目標をたずねると、「すべてのことに対して楽しむことが私の目標みたいなものなので、今やっていることを100%頑張りたいです」と瞳を輝かせる。10月にはスケートの大きな大会があるそうで、「そこでいい結果を残せるように頑張りたいです」と意気込みを見せたあとで、「でも、やっぱり、夢とか、そうあってほしいというだけでは絶対かなわないので、自分なりに自分らしく頑張れたらいいと思います」と、ソフィーに引けを取らない頑張り屋さんの素顔をのぞかせた。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
2004年生まれ。京都府出身。08年に芸能界デビュー。ドラマ「家政婦のミタ」(11年)の演技で注目され、以降、人気女優としてさまざまなドラマに出演。映画出演作に、「GANTZ PERFECT ANSWER」(11年)、「きいろいゾウ」(12年)、「コドモ警察」(13年)、「母と暮らせば」(15年)がある。「ポプラの秋」(15年)で初主演を飾った。フィギュアスケート選手としても活躍している。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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