ラグビー小野晃征選手:“逆輸入ラガーマン”が語るフランス「トップ14」の魅力

ラグビー日本代表でサントリーサンゴリアスのスタンドオフの小野晃征選手
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ラグビー日本代表でサントリーサンゴリアスのスタンドオフの小野晃征選手

 ニュージーランドでラグビーを始め、20歳の時に帰国した“逆輸入ラガーマン”である、ラグビー日本代表SO(スタンドオフ)の小野晃征選手(サントリーサンゴリアス)。外国の情報収集や国際選手会との連絡、交渉役も担う小野選手に、“世界最高峰”とも言われ、日本代表のチームメート五郎丸歩選手(RCトゥーロン)が挑戦する仏プロリーグ「トップ14」の魅力や世界のラグビーについて聞いた。

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 --小野さんはニュージーランド育ちですが、ニュージーランドで育つ中で感じたラグビーの雰囲気を教えてください。

 まず、オールブラックス(ニュージーランド代表)の試合は、どんな会場でも必ず満員になります。スーパーラグビー(国際リーグ戦)の試合だと、応援するファンもカラフルなチームジャージーを着て、スタンドがその色に染まります。応援もすごく声が出ていますね。日本のラグビーファンは静かに試合を見るけれど、ニュージーランドではそんなことはない。観客も選手と一緒に盛り上がって、叫んだりすることが、エンターテインメントになっているんです。何しろニュージーランドではラグビーが国技ですから。若い人から年配の人まで、あらゆる年代の人が見に来て盛り上がる。試合前のバーで盛り上がっていて、試合中のスタンドで盛り上がって、試合後のバーでもまた盛り上がる(笑い)。

 --小野さんが初めて経験したワールドカップは2007年フランス大会でした。ラグビー文化でニュージーランドとの違いは感じましたか?

 ワールドカップは、どこの国でやっても、お祭りの中でラグビーをやることになりますからね。いつもはラグビーファンが盛り上がっている中で試合をするという感覚ですが、ワールドカップの時は、ラグビーファンだけでなく、国中がワールドカップというお祭りを楽しんでいる中でプレーをする感じです。そういう意味では、僕が経験した2007年のフランスと、2015年のイングランドに違いはあまり感じなかったかな。選手はピッチの中で試合をするだけなので。それよりも、ファンの皆さんの方がお祭りの楽しさを味わえたんじゃないでしょうか

 --小野さんはフランスワールドカップ滞在中や、それ以外の時でもトップ14をご覧になったことはありますか?

 日本で本格的に放送されるのは初めてと聞いていますが、ニュージーランドでは前からトップ14の試合は放送されているんです。日本のトップリーグが終わってニュージーランドに帰省すると、ちょうどトップ14が決勝トーナメントに入るかどうかというくらいの時期で、よくテレビでやっていて、見た覚えがあります。ニュージーランドでは日本のトップリーグも放送されているんですが、ニュージーランドの選手はもちろん、スーパーラグビーのチームでプレーしていたアイランダー系の選手もトップリーグにはたくさんいるし、トップ14にもたくさんいる。知っている選手が多いから、みんな熱心に見ていますよ。

 --トップ14の特徴は?

 フランスの特徴は、やっぱりフィジカルで、組み立てもシンプルですね。試合数が多いから、スクラムやラインアウトのような計算できるセットプレーで試合を組み立てて、PK(ペナルティキック)は必ずショットして3点を稼ぐ。お互いそうだから競った試合が多くなりますよね。キックで地域を取っていく戦術が主流で、BK(バックス)にはあまりボールが回らない印象があります。でも一つ一つのコンタクトは激しいし、コンタクトスキルは相当高いという印象があります。ジョージ・スミスが前にメディカルチェックでスタッド・フランセに行ったときは、バックスのセンターでプレーしたって話があるんですよ。ジョージのスピードでもBKが務まるというか(笑い)。もちろんジョージのスキルがFW(フォワード)離れしているからなんですが。

 --そのトップ14に、五郎丸歩選手が挑戦しています。

 フランスリーグがトップ14になってからは初めての日本人選手ですよね。RCトゥーロンのジャージーを着て試合に出て、持ち味の安定したゴールキックを決める姿を早く見たいですね。ゴロー(五郎丸)さんが活躍して、日本人選手も通用するんだとなれば、日本人選手がフランス、トップ14に行く道も広がると思いますしね。

 --小野選手はトップ14へはチャレンジしませんか?

 いやいや、大丈夫です(笑い)。そもそも、僕のプレースタイルはフランスには合わないと思うし(笑い)。

 --小野さんのクライストチャーチボーイズ高校の先輩にあたる元オールブラックスのダン・カーター選手も、トップ14のラシン92でプレーしていますね。

 ラグビー界では世界一と誰もが認めている名選手ですからね。7月にダン・カーターが来日した時は、復興支援のイベントで一緒に岩手県釜石市のワールドカップスタジアム予定地に行ったりしたんですが、グランド外でもすごくフレンドリーで、ファンの人を大切にする。いつでも温かくサインをしていたし、ラグビーのことを聞かれれば、アドバイスをしてあげる。それでいて家族のこともすごく大切にしている。フランスへ行ったのも、家族と過ごす時間を取れるからという選択だったようですね。ラグビーをする時間、ファンと触れ合う時間、そして家族と過ごす時間のバランスが取れている。僕もそういう選手になりたいです。

 --小野さんにとって、ラグビーを続けてきた理由、ラグビーの魅力を教えてください。

 ラグビーを始めたのはニュージーランドで、5歳の時です。友達のお父さんに「ラグビーをやらないか」と誘われて、やってみたら楽しかったんですね。芝のグラウンドを好きなように走り回れて、仲間と一緒に走ってボールをパスしてつないでいくのが楽しかったですね。そのときの楽しかった感覚は今も忘れないし、忘れないようにしています。その楽しさを、ニュージーランドで味わうだけじゃなく日本に来ても味わうことができて、ニュージーランドでも日本でも仲間がいっぱい増えて、世界中に友達がいっぱいできた。いつ引退してラグビーをやめるかは分からないけれど、これだけの友達が世界中にできたことは、僕の人生のハイライトかな、と思いますね。

 ◇プロフィル

 小野晃征(おの・こうせい) 1987年4月17日、愛知県生まれ。3歳の時、家族でニュージーランドのクライストチャーチに移住し、5歳でラグビーを始める。クライストチャーチボーイズ高時代にU19カンタベリー代表に選ばれ、日本代表のジョン・カーワンHC(当時)の情報網にかかり、2007年に日本代表入り。同年フランスワールドカップ出場、帰国後にサニックスに入団。12年、エディー・ジョーンズHCのもと日本代表に再び選ばれたのを機にサントリーに移籍。15年ワールドカップでは南アフリカ、サモア、アメリカとの3試合に出場し、すべて司令塔として勝利に導いた。

 *……WOWOWでは、フランスのプロラグビーリーグ「TOP14」を五郎丸選手が移籍する「RCトゥーロン」の試合を中心に年間57試合放送予定。第9節「RCトゥーロン対グルノーブル」はWOWOWプライムで29日深夜1時35分に放送。「ブリーヴ対クレルモン・オーヴェルニュ」はWOWOWライブで30日深夜0時から生中継。また、第10節「ラシン92対モンペリエ」はWOWOWプライムで11月6日午前4時半、「リヨン対RCトゥーロン」はWOWOWライブは同6日深夜0時からそれぞれ生中継する。

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