任天堂の新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」がついにベールを脱いだ。同社約4年ぶりの新型据え置きハードは、同社がこれまで展開してきたゲーム機の特徴を凝縮した仕様になっている。非ゲーマーの取り込みに成功して最高益を記録した「Wii」の成功を再び呼び込めるか。
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13日に開かれた発表会で、任天堂の君島達己社長は「新しい娯楽の世界を提供したい」と自信を見せた。ニンテンドースイッチの最大の特徴は、普段はテレビと接続する据え置き型だが、携帯ゲーム機に”変身”し、さらに外出先で疑似的なリビングルームを作り出せることだ。ゲームファン以外の取り込みを図るこのコンセプトは、前社長で故・岩田聡さんの掲げた「ゲーム人口の拡大」と同じ考えといえる。
こうなると「ニンテンドースイッチ」を「据え置き型」と見るか、「携帯型」と見るべきか難しくなる。任天堂は「据え置き型ゲーム機」と位置付けているが、ゲームに精通しているIGDA日本前代表の小野憲史さんは「リッチなコントローラーのついたタブレットマシン」と話し、実質的には携帯ゲーム機とみる。小野さんは「ニンテンドースイッチのCPUは、スマホで使われる省電力タイプ。仮にPS4のようなパワーのあるCPUを積んだら、とてもバッテリーが持たない」と説明する。つまりニンテンドースイッチは、コアユーザーが好むマシンパワーをフルに使って、リッチなソフトを楽しむゲーム機ではない……という結論になる。
そもそも任天堂が、売上高でも10倍以上の差がある家電メーカーのソニーとゲーム機の高性能競争をしても分が悪い。さらにいえば、「ファミコン」のヒットに代表されるように、既存の技術を巧みに組み合わせて、誰もが思いつかなかった新商品を生み出して成功してきたのが任天堂の強みだから、間違ってない戦略といえる。だが、時代の流れで裏目に出ているのも確かだ。
現在のゲーム市場は、「サードパーティー」と呼ばれるソフトメーカーの協力を取り付け、ソフトのラインアップをそろえることが重要だ。ところが独自の仕様を持つ任天堂のゲーム機では、そこにネックがある。ソフトメーカーはゲームの開発に苦労したり、移植でも余計な一手間が必要になってしまうのだ。近年、ソフトメーカーは開発費の高騰などの理由から同じタイトルをPCやさまざまなゲーム機で展開する「マルチプラットホーム」戦略を取っているが、これまでのゲーム機のコンセプトを踏襲したPS4の方が、目新しさはないかもしれないがソフトメーカーとしてはビジネス展開しやすいのは明らかだ。
さらに言えば、特に国内ソフトメーカーの軸足は、ヒットすれば高収益を出せる無料のスマホゲームに向いている。ゲームファンもスマホがあれば無料で手軽に遊べるスマホゲームに慣れているため、ゲーム機本体とソフトを買う必要があるゲーム機は不利な状況に置かれている。WiiUがソフト不足に陥って市場を広げられず、そのまま失敗した根本原因はそのままだ。
小野さんは、ニンテンドースイッチの展開について「任天堂が発売する独自のテイストのゲームが大ヒットして、本体の普及をけん引すれば問題ない。ただし、そうならない場合は、WiiUと同じ展開になるかもしれません」と話している。
Wiiの成功は、「Wiiスポーツ」や「Wiiフィット」など、それまでゲームをしていなかったユーザーが興味を持って買ったことにある。当時ゲーム市場の拡大に大きく貢献したといえるが、現在はスマホがその役割を担っている。新型機ヒットのカギを握るのは、外に持ち出して皆でゲームを遊ぶという提案が、スマホユーザーに受け入れられるかにかかっているといえそうだ。
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