アニメ質問状:「鬼平」 今までにない平蔵に 食事専用の作画監督も

アニメ「鬼平」の一場面(C)オフィス池波/文藝春秋/「TVシリーズ鬼平」製作委員会
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アニメ「鬼平」の一場面(C)オフィス池波/文藝春秋/「TVシリーズ鬼平」製作委員会

 話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、池波正太郎の人気小説シリーズ「鬼平犯科帳」が原作の「鬼平」です。トムス・エンタテインメントの長谷川良太プロデューサーに作品の魅力を語ってもらいました。

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 --作品の概要と魅力は?

 誰もが知っている池波正太郎先生の名作「鬼平犯科帳」が誕生50周年の節目であり、新しい「鬼平犯科帳」を展開する象徴にしたいという意図と、若い人たちにも響く本格時代劇アニメを作ろうという考えが文藝春秋さんと一致して、企画が始まりました。本作は池波先生作品初のアニメ化になります。

 ドラマ化やマンガ化といったさまざまな原作の展開の中でぞれぞれの平蔵がいますが、今回は「今までにない平蔵にしたい」という思いがありました。アニメだからできる、色気と力強さを兼ね備えた新たな平蔵が誕生したことが本作の魅力の一つです。モダンでお洒落(しゃれ)というアニメ「鬼平」のコンセプトを作り上げていきました。僕みたいな若い人たちが面白がってくれるような、新しい時代劇の扉を開けたらよいなと思います。

 --アニメ化するときに心がけたことは?

 人情や非道を許さないといった人間ドラマがあり、立ち回りが主体の作品ではもちろんないのですが、クリエーティブプロデューサーの丸山正雄さん、宮繁之監督とは鬼平の魅力の一つでもある立ち回りのシーンを多く入れることを企画当初から話し合ってきました。強い平蔵が見たかったのと、アニメでしか表現できないことをするんだという思いが関係者皆にあったからです。

 それを経てできた本編は、構図の切り替えがとても斬新で、斬撃のシーンも迫力のある大変素晴らしいものになりました。実際に立ち回りのシーンはとても反響がいいです。また、食事のシーンにも力を入れています。当時から池波先生は食べ物の描写に強くこだわりを持っておられたそうで、「とにかくおいしそうに描いてください」と文藝春秋さんからもオーダーをいただいておりました。そのため、本作では食事専用の作画監督を擁し、充実させています。

 --原作からあえて変えたところはありますか?

 やはり平蔵のビジュアルでしょうか。アニメ「鬼平」という新たな展開を作り上げていく中で、モダンでお洒落というアニメ「鬼平」のコンセプトを大切にしていました。若い人にも受け入れられる「鬼平」をという思いをもちながら関係者皆で議論を重ね作り上げました。

 --作品を作る上でうれしかったことは?

 うれしかったことは約4年かけて作ったアニメ版「鬼平犯科帳」というコンテンツをやっと世に出せて、実際に若い人たちが反応してくれたことです。原作ファンの方々からもいいコメントをいただけたところがうれしかったですね。私の“長谷川”という名字もそうですが、新入社員時代からこの企画を知っていたこと、大学時代に歌舞伎を学んでいたことで、時代劇や池波先生作品に触れていたこと、本当にいろんな縁があってたどり着きました。

 --大変だったことは?

 「鬼平」を若い僕がやっていいのだろうか?というプレッシャーはあり、何度も心が折れそうになりました。ですが、本作は大勢の関係者がいて、みんなで作り上げています。支え合い、相談しながら取り組んでいるので、とても充実しています。

 --今後の見どころを教えてください。

 部下である与力・同心や密偵と平蔵の強い結びつきや、妻・久栄との結びつきなど、周囲の人間にもスポットが当たっていきます。そんなところもこの作品の見どころなので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

 --最後にファンへ一言お願いします。

 さまざまな経験を積んできたからこそ、清濁併せ呑(の)む存在である長谷川平蔵。男としてこんな男になれたらと憧れており、理想の上司だと思っております。本作は、話数によって登場人物の生きざまや死にざまを見せていたり、それに対してテーマがあったり、主役以外にフォーカスが置かれるので、いろいろな角度から楽しめる奥深い作品です。ぜひ自分だけが知っている「鬼平」の魅力を本編で見つけてみてください!

 長谷川良太(トムス・エンタテインメント/プロデューサー)

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