デビュー15周年を迎えた歌手の一青窈さんが、自身初のオールタイム・ベストアルバム「歌祭文(うたざいもん)~ALL TIME BEST~」を11日にリリースした。デビュー曲「もらい泣き」や「ハナミズキ」などのヒット曲を収めたDisc1「一青歌祭文」、いきものがかりの水野良樹さんの作曲による最新シングル「七変化」や、BEGINの上地等さん・島袋優さんプロデュースの新録曲「会いたかったのは僕の方」ほか近年の楽曲で構成するDisc2「新盤歌祭文」の2枚組みで、15年間の活動の軌跡をたどる収録内容だ。一青さんに、デビュー15周年の思いや知られざる楽曲エピソードなどについて聞いた。
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――今回のベスト盤には、岡村靖幸さんやヒップホップグループ「RHYMESTER」のMummy-Dさんといった個性豊かな方々とのコラボ曲もありますが、こうした曲構成を見て15年の年月をどう感じていますか。
「歌手・一青窈」という花火を世の中に打ち上げたいと思っていたレコード会社の人たちとは別に、自分はお盆に乗せられて頑張れって言われていたようだったのが、中盤(小林武史さん作曲のDisc1の11曲目「Final Call」)からは自分で意思を持って「この人と作詞作曲でコラボレーションしたい」って決めてオファーをして書いていったものなので、「あっ、本当に歌手になったんだな」みたいな感覚ですね。それまでは歌手にしてもらっていたという感じでした。いろんな挑戦をしてきたなって思います。
――そんな中、武部聡志さん、小林さんという2人のプロデューサーとの共同作業はいかがでしたか。
ポップスという額縁で言うと、武部さんは美しい額縁の中で自由に泳がせてもらえる、安心して委ねていられる感じで、小林さんは宇宙的な広さで「どれだけ自由に泳いでもいいけど、軌道は確保しておくよ」みたいな。衛星上で小林さんがぐるぐる回っていて、私がどんなに外れても「こっちこっち」みたいな感じで、「どこまで行ってもいいんだ」みたいな楽しみ方があって。今はまた武部さんとのワークが戻ってきて、自由に行きながらも、額縁でどんなふうにやると一青窈として求められる曲になるのか、あるいは冒険できるのはここらへん、みたいなさじ加減がだんだん分かってきたのが15年目という感じです。
――デビュー曲「もらい泣き」にまつわる思い出や作詞した当時のエピソードを教えてください。
複合的にいろんな出来事があって、絵描きの友達がダンボールから(引きこもって)出られないとか、中目黒(東京都目黒区)のカレー屋の前で私が失恋して、泣いている私に友達がもらい泣きしたとか。私は「もらい泣き」ではなく(Disc1の2曲目の)「月天心」がデビュー曲にいいなと思っていたんです。この曲は中国語で歌っている歌詞もあって、自分が台湾と日本のミックスであることがより分かりやすいんじゃないかって。でも、当時の事務所の社長の鶴の一声で「もらい泣き」になって、今はよかったと思います。ただ、当時は本当にカロリーメイトを1日1本食べられればいいかなっていうぐらい(スケジュールが)ぎゅうぎゅうで、(ヒットの)実感もないまま……。1年とか1年半ぐらいわけが分からなかったです(笑い)。
――「ハナミズキ」は2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を受けて歌詞を書いたそうですね。
本当にもう20分ぐらいで書けたんですよ。ツインタワー(ニューヨークのワールドトレードセンター)が崩れる映像を見ながら、ボロボロ泣きながら。何を思うとかじゃなくて、わけも分からず涙が出てくるみたいな感じで言葉が出てきて……。ただひとえに世の中の平和を願って書いたので、「恋愛の歌ですか」とか、結婚式で(歌われる曲)っていうことになって、「恋愛の歌詞なんだ」って後から気づかされる感じでした。
――この2曲は、作った段階で「よく書けた。ヒットする!」という手応えはあったんでしょうか。
ないない(笑い)。だいたい「よく書けたな」って思うものに限ってボツになったり、「この言葉、いらない」って武部さんに言われたり。「もらい泣き」なんか、武部さんやレコード会社のディレクターに「全然分かんない」「こっちの方が面白いよ」とかって言われて「何回書き直せばいいの?」って。でも、どんなにうまく書けたと思っても、人の意見を聞いてまずはそれをやろう、というのが基本スタンスです。
<プロフィル>
1976年9月20日、台湾人の父と日本人の母との間に生まれる。東京都出身。02年にシングル「もらい泣き」でデビュー。04年に5枚目のシングル「ハナミズキ」をリリース。一青さんが音楽の道を志したのは高校1、2年生のころ。音楽療法に興味を持ったことがきっかけで、「母親が(がんで)入院していた時に(森公美子さんが出演しているミュージカルを見に行って)音楽を聴いて元気になったっていうのを目の当たりにして。がんがなくなったんじゃないかって思うぐらい血色がいいというか。あれは感動しましたね。そんなふうに、人を元気づける音楽を作れる人なれたらなと思いました」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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