モンスターハンター:最新作「ワールド」海外の要望に応えて世界展開 リスク背負って勝負

「モンスターハンター:ワールド」について語るカプコンの辻本良三プロデューサー
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「モンスターハンター:ワールド」について語るカプコンの辻本良三プロデューサー

 カプコンの看板ゲーム「モンスターハンター(モンハン)」シリーズの最新作「モンスターハンター:ワールド」が26日発売された。9年ぶりの据え置き機での新作で、世界同時展開というビッグプロジェクトだ。辻本良三プロデューサーにゲームの狙いなどを聞いた。

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 ◇経営陣も「勝負をかけろ」

――最新作「ワールド」の狙いは。

 モンハンのユニークな世界、生息しているリアルな生物を最新技術で描きたかった。そうなるとモンスターがシームレスに動いていないといけないので、今回は(データのロードが必要になる)エリアチェンジを撤廃した。

――「オープンワールド」のような世界だが、カプコン側から「オープンワールド」とは言っていない。その理由は。

 我々の感覚もあるが、「オープンワールド」はもっと広い世界でつながっているというイメージがあった。そもそも今回は「オープンのフィールド」ありきでゲームを作ったわけではない。ゲームの狙いのために、結果としてシームレスにする必要があり、世界の密度を感じてほしかった。「オープンワールド」と言って「広い」というイメージを持たれると、我々の狙いとは違うことになるのもある。繰り返しになるが、注目してもらいたいのは「広さ」ではなく、「世界」であり、「生態系」の部分だ。

――従来シリーズでは日本先行発売だったが、今回は世界で同時に発売する。

 今までもモンハンシリーズは世界で売っている。プロモーションで海外に行くと、リリースタイミングについて(海外でもできるだけ早く売るように)強く言われていた。北米や欧州では据え置き型ゲーム機の需要が高く、その期待に応えたいと思っていた。だから「ワールド」を作り始めたときから、世界で同時に展開することを決めていた。

――開発も販促も大変では?

 大変ではある。対応言語が日本語以外にも英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語に加え、今回は中国語や韓国語、ロシア語、アラビア語などもある。開発の負担がかかるのは確かだが、多くの人に遊んでもらいたいということ。ワールドワイドの意識は強かった。

――社内から不安の声はなかった?

 プロジェクトとしても大きなものだから、不安の声もなかったわけではない。だが最終的には経営陣も「行け。勝負をかけろ」と言ってくれた。

 ◇開発メンバー社内だけで400~500人

――PS4は開発費がかかる。従来のように開発費の安価な携帯ゲーム機で作れば良いという声はなかったか。

 正直に言えば、なかったわけではない。しかし、今回の挑戦はモンハンとしてやらないといけないことで、やりたいことのためには費用がかかることはある。最終的には、それ(かけた費用)以上の価値をお客様に提供できるかが大事。安く作れるにこしたことはないが、良いものを届けられるよう最大限の努力はした。

――開発者の人数は?

 現在のゲームは1人では作れないから、多くのスタッフの能力を結集する必要がある。スポット参戦の開発者もいるが、社内だけでいえば400~500人が関わっている。社外を入れるとさらに膨らむ。

――世界規模のオンラインゲームとなる。テストも大変そうだ。

 ネットワークという意味では、初代モンハンからやっているからノウハウはあった。ただネットワークの制限がある中で、(サーバーの)制御と同期をどうとるかは大変だった。プレーしてもらえたら、今までのシリーズ以上なのが分かってもらえるはず。

――欧米向けに工夫した点はあるか。

 欧米向けというより、これまでプレーした人たちに違和感がないのが大前提で、その上で初めてプレーする人の感覚、課題を知るために調査した。その一例がダメージの表示を出すようにしたことだ。モンハンのポリシーとして、(安易にデータに頼らず)状況を見て判断してほしいというのがあり、モンスターがよだれを出していたり、足を引きずるサインはその典型だ。しかし初めてプレーする人には、自分の攻撃がそもそも有効かどうか分からないという声があったので、ダメージを表示するようにした。

――ユーザーの反応は?

 ダメージの表示があると、思った以上にダメージを与えていることも分かる。経験者にもプレーしてもらったところスムーズに遊べた。単純に欧米向けではなく、共通して良い方向へ見直せたと思っている。一方で、モンスターの体力表示は(従来通り)出していない。ダメージ表示が気になる人は消せるようにもした。

――ネットワーク以外の開発も大変だったのは。

 作り始めたのは3年前ぐらいだ。最初にゲーム性が分かるモック(最初のテスト版)、グラフィックイメージが分かるテスト版の二つを作った。検証しながら制作したので、モックを作るのに半年、最初のステージ「古代樹の森」を作るだけで1年以上かかった。「いつ完成するんだ」と思ったこともあるが、最初のステージを作ってからはコツが分かり、開発効率が飛躍的に良くなった。初めて挑戦することが多かったので、(開発の後半に)効率がどのくらいアップするかの予測も限界がある。今回は本当にスタッフが優秀だったと思っている。

――あえて一つだけセールスポイントを挙げるとしたら。

 強大なモンスターが生息している世界に飛び込んで、ハンターとしてワクワク感を味わってほしい。アップデートでモンスターの追加も考えているので、長く遊んでもらえれば。

 ◇プロフィル つじもと・りょうぞう=1996年カプコン入社。プランナーとしてゲーム開発に携わり、「モンスターハンター」シリーズのプロデューサーとして活躍している。現職は同社の執行役員。

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