ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
一見「ポプテピピック」一色にも見えかねない今クールのアニメだが、ひそかな人気を育んでいるのが「新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION」だ。今クールもすべてのアニメを全話見ている“オタレント”の小新井涼さんが、「シンカリオン」ならではの魅力を語る。
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この冬、「ポプテピピック(ポプテピ)」が盛り上がる一方で、大きなお友達を中心にひそかな人気を集めている作品があるのをご存じでしょうか。そう、今期スタートした土曜朝のアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION」です。タイトルや放送時間帯からもわかるように、乗り物や変形ロボ、主人公たちの夢や成長、家族との絆などが描かれたこの作品は、ずばり王道の少年向けアニメと言われています。かたや「ポプテピ」のように、視聴者の反応を狙った変化球のような作品が盛り上がる一方で、同時に「シンカリオン」のようなド直球の王道アニメが人気を集めているのは一体なぜなのでしょうか。その魅力を探ってみましょう。
やはり一番に思い当たるのは、みていて気持ちがいいほどの王道展開ですが、王道は王道でも、「シンカリオン」には“大人が求める王道”があるのがポイントだと思います。中でも特に大人たちのツボを突いているのは、「普段はうだつが上がらない主人公の父親が、実は特務機関の偉い人」という設定や、「子供の夢を応援し、成長を見守る理想的な大人たちの姿」のようです。大人の視聴者にとって、「敵に唯一立ち向かえるのは子供たちだけ」といった設定が“子供のころの憧れ”を思い出させてくれる熱い展開だとしたら、これらはそれと同時に“今の年齢での憧れ”をも満たしてくれる王道展開なのでしょう。同じ王道でも、アニメを見ている“元子供”のツボまで突くその手広さが、この作品が大人たちからも熱い支持を得ている理由だと思います。
しかしそうした設定だけならば、王道というだけあって、これまでの少年向けアニメでも幾度となく使われてきました。それらのアニメとはひと味違う「シンカリオン」ならではの魅力は、もっと別のところにありそうです。
私はそれが、「シンカリオン」の「王道らしさの陰に潜むマニアックさ」、それも本来のターゲットである子供や鉄道ファンに向けたものではないマニアックさだと思います。例えば、メインキャラに佐倉綾音さんや細谷佳正さんといった人気声優さんを起用した「声優ファンが反応するキャスティング」は、普段朝のアニメを視聴しない層からも作品への注目を集めるきっかけとなっています。
また、実在する鉄道博物館の地下に秘密の研究所があるという設定や、シーンが変わるごとに表示される地名や施設名のテロップなどは、「特撮ファンも思わず反応してしまうような演出」です。さらには、舞台になった土地の「地元民だけが分かるような小ネタ」も満載で、埼玉県出身の自分も、大宮駅改札前の「まめの木」がこっそり映り込んでいた時は思わずテンションが上がってしまいました。
このように、「シンカリオン」の王道ストーリーには、鉄道ファン以外の幅広い層が思わず反応してしまうマニアックなネタが、そこかしこにさりげなくちりばめられています。そしてそうすることで、アニメを見た人はどこかしらに自分の趣味とのつながりを感じ、例え鉄道の知識がなくても、作品への親近感がサブリミナル的に上がっていってしまうのではないかと思うのです。
そう考えると、この作品を単なる「王道アニメ」と言ってしまうのは間違いのようにも思えます。むしろ王道らしさの中にマニアックさを“包み隠し”ながら、本来のターゲットである子供や鉄道ファン以外にまで幅広くファン層を広げている分、堂々とネタをぶつけてくる「ポプテピ」よりよっぽど“策士”なアニメなのかもしれません。こうした、実は“王道の皮をかぶったポプテピのような作品”というのが、「シンカリオン」が子供や鉄道ファンだけでなく、大きなお友達の支持を幅広く集めている理由ではないかと私は思います。
この冬クールは、「ポプテピ」やこの「シンカリオン」など、製作側の計算や狙いが見事に当たった作品が特に盛り上がっている印象です。これは「ユーリ!!! on ICE」や「けものフレンズ」など、製作側も予想外なブームを起こした作品が覇権を取るという近年のトレンドが、少しずつ変わり始めている前兆なのかもしれません。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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