大友良英:「いだてん」音楽は大河史上最大規模 テーマ曲だけで延べ300人…“アマチュア”も!

2019年のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」 (C)NHK
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2019年のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」 (C)NHK

 宮藤官九郎さんが脚本を手がける2019年のNHKの大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」が6日にスタートする。日本人が初めて五輪に出場した明治の終わりから、東京に五輪がやってきた1964年まで、およそ半世紀を描くオリジナルストーリー。音楽を手がけるのは、13年放送の連続テレビ小説(朝ドラ)「あまちゃん」などで知られる大友良英さんだ。マラソン選手の金栗四三(かなくり・しそう、中村勘九郎さん)がメインとなる前半パートの分だけで、すでに160曲近く「録音した」と明かす大友さんに、音楽制作の舞台裏を聞いた。

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 「いだてん」は、1986年の「いのち」以来、33年ぶりに近現代史を取り上げる19年の大河ドラマで、テーマは「“東京”と“オリンピック”」。主演は中村勘九郎さんと阿部サダヲさん。勘九郎さんは日本で初めて五輪に参加したマラソン選手・金栗四三役、阿部さんは「東京オリンピック」実現に執念を燃やす政治記者・田畑政治(たばた・まさじ)役を演じ、“リレー”形式で主演のバトンをつなぐ。

 ◇朝ドラと比べて大河ドラマは「規模感が違う」 トラック数は最大箇所で700!?

 これまで数々の作品の劇伴を担当してきた大友さんだが、大河ドラマの音楽を手がけるのは今回が初めて。朝ドラと比べて大河ドラマは「規模感が違う」と話す大友さんは、「朝ドラって物事が起こっているところの中に入って音楽を作っている感じだった。でも大河はちょっと引いて、地球儀を眺めているような感覚。ただ、それだけでは僕が作る意味がない。大友良英っぽくするのにどうすればいいんだろうって思ったとき、ものすごく人を呼ぶんだけど、一人一人の顔が見えるようにしたいなって思った」と振り返る。

 目指したのは「(演奏者の)顔が見えるような音楽」。その象徴と言えるのが、ドラマのオープニングを飾るテーマ曲だ。ブラジルのサンバをヒントに大人数でリズムを作り、打ち鳴らされる楽器の音色は多彩でカラフル。一つの目標に向かって、全員が一丸になっていくような高揚感や疾走感も特徴で、ドラマのテーマの一つであるオリンピックらしさという意味でも申し分ない。

 テーマ曲で使われたトラック数は最大箇所で700。言い換えれば700の音が同時に鳴らされている瞬間があるということだ。演奏人数は160人強で、その一人一人がコーラスでも参加しているので、単純計算で延べ300人は超える。

 その中には、音楽家をなりわいとしない“アマチュア”も。大友さんは「スタジオに来た人、全員に歌ってもらった」といい、「本当は1000人を目指していたんですけど(笑い)。大河史上、最大のトラック数だと思います。とにかくいろいろな顔を入れたくて、でもそれぞれが生きている」と自身の試みに満足そうだ。

 ◇「参加することに意義がある」の精神で制作 インスピレーションを得たのは…

 年々、アスリートのプロ化が進み、最近は聞かれなくなったが「オリンピックは参加することに意義がある」という言葉はあまりに有名だ。今回、その基本理念を音楽制作に持ち込んでいる大友さんは、昨年1カ月半かけて巡った中南米からの影響を挙げる。

 「中南米の音楽の面白いところは基本アンサンブル、それもすごい人数の。ブラジルなんか特にそう。何百人規模で、見ていて痛快」と話す大友さん。

 特にインスピレーションを得たのが、1950~60年代のころのサンバ。「今のサンバは速くて筋肉質。ものすごくアスリートっぽいんですけど、1950、60年代の頃はもっとバラけていて、のんびりしていて、酔っ払いのダメ親父もいれば、キレイなお姉さんもいるような感じ。このドラマも、オリンピックに出るような人もいれば、志ん生師匠の若い頃のように、飲んだくれてっていう人も出てくる。音楽にも、その両方が入ってないとダメだって、南米に行って思ったんです」と明かしている。

 だからといって、決して借り物のような音楽にはなっていないのが大友さんらしい。「サンバのリズムを日本人がやっても和太鼓にしか聞こえないときがある。それって言葉と同じで、英語を勉強してしゃべれるようになったとしてもネーティブな発音にはなかなかならないのと一緒。それでもちゃんと通じるでしょ。それでいいんです。音楽もそう。無理してネーティブ風になる必要はないんです」と持論を披露していた。

 ◇アルゼンチンの鬼才打楽器奏者も参加 盟友・芳垣安洋と即興演奏も

 「いだてん」の音楽制作には、大河には欠かせない「NHK交響楽団(N響)」に加え、自身のビッグバンドや、大友さんの盟友でドラマーの芳垣安洋さん率いる「Orquesta Nudge! Nudge!」も参加。劇伴の中には南米アルゼンチンのジャズ/ネオ・フォルクローレ・グループ「プエンテ・セレステ」の鬼才打楽器奏者サンティアゴ・バスケスさんと大友さんや芳垣さんが「一緒に即興演奏したもの」も入っているという。

 大友さんが自身のネットワークとアイデアを駆使し、「“東京”と“オリンピック”」がテーマの近現代大河をどう彩ってくれるのか、期待したい。

 NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」は全47回。NHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。

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