ドラゴンボールDAIMA
第10話 ウナバラ
12月16日(月)放送分
2017年に放送され社会現象にもなった話題のアニメ「けものフレンズ」。1月から続編の「けものフレンズ2」と、前作を手がけたたつき監督の手による新作「ケムリクサ」が放送されている。監督降板騒動などでも話題を呼んだ作品と、スタッフの新作が同時期に放送されているということで注目されたが、ファンの反応は少し予想と異なるようだ。両作品を含め、週に100本以上(再放送含む)のアニメを見ている“オタレント”の小新井涼さんが独自の視点で分析する。
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予想外の盛り上がりが社会現象にもなった「けものフレンズ」ですが、放送終了後、ヒットの立役者とされていたアニメ1期のたつき監督が制作陣から外れたことで、多くのファンが離反し、ブームが終息してしまうという出来事がありました。今期はそんな一件を経て作られた「けものフレンズ2」と、アニメ「けもフレ」の制作を離れたたつき監督達が作る「ケムリクサ」が、何の偶然か同時期に放送されています。制作陣変更以降、複雑な感情を抱いていた当時からの「けもフレ」ファンは、それぞれの作品をどのように受け止めているのでしょうか。
正直、放送前は「ケムリクサ」を応援する“監督派”と「けもフレ2」を応援する“2派”が対立し、お互いに作品をたたき合うという悲しい事態も覚悟していましたが、いざ始まってみると、多少の批判はあるものの、どちらの作品もそれぞれ好意的に受け止められているようでした。おそらくこれは、「けもフレ」1期で奇跡的に共存していた“嗜好の違うファンたち”が奇麗に住み分けできるくらい、両作の毛色が違ったことが大きいかと思います。
「ケムリクサ」への反応をみると、キャラのCGモデルやモーションに「けもフレ」1期っぽさを感じるといったコメントもあるものの、一番盛り上がっていたのは何といっても作品の世界観や物語への考察でした。ファン層も、「けもフレ」1期のディストピア感や伏線考察といったハードな一面を楽しんでいた人々が特に支持しているようです。
一方、「けもフレ2」への反応をみると、1期と同じく世界観や物語への考察もあるものの、こちらは圧倒的に、キャラの可愛さや動き、キャラ同士のやりとりへのリアクションの方が多く見受けられました。どうやらこちらは「ケムリクサ」と違い、フレンズそのものや彼女たちがいる優しい世界という「けもフレ」1期のライトな一面を好んだファン層が特に支持しているようです。
同じジャンルならばともかく、ここまではっきりとファンが住み分けできるほど作品の毛色が違えば、どちらがより優れているかも同じ物差しでは測れません。ファンがお互いに作品をたたき合うことが少ないのも、そうして両作が競合関係にならずにすんだからではないでしょうか。
ただし両作品への反応を比べてみると、どんなに好意的に受け止められているようでも、やはり作品を純粋に楽しむためのハードルは「けもフレ2」の方が高いようです。
ネガティブな一件をへての続編ということで、どんなに好意的なファンでも、視聴する際はつい神経質になってしまうのでしょう。本来ならばうれしいはずの1期をほうふつとさせるような演出が、ファンには“どこか気を遣われているようだ”と、ややネガティブに受け取られているようなのです。例えば「けもフレ2」での「た、食べないでー」「食べないよ」というやりとりと、「ケムリクサ」での「食べていい?」「ダメです!」というやりとりへの反応は、特に分かりやすく温度差が出ていたように思います。同じ「けもフレ」1期をほうふつとさせる要素も、「ケムリクサ」ならば“さすがたつき監督”と喜ばれるところを、「けもフレ2」だと、どうしてもとってつけたような1期ファンへの“接待感”が出てしまうため、作品に好意的な視聴者でさえ少し鼻についてしまうのかもしれません。
とはいえ、1話放送(配信)後の反応に、監督降板直後よりは好意的な声が多かったのは、今後も続編やメディアミックス展開を控える「けもフレ」シリーズにとっては一見良いスタートのようにも思えます。しかしこの、ある意味「アンチさえいなくなった」と言える今の状況は、見方を変えるとネガティブな要素にもなり得てしまうのではないでしょうか。
実際、監督降板直後あれだけ騒ぎになったにしては、アンチを含めたネガティブ発言だけでなく、そもそも「ケムリクサ」と「けもフレ2」への反応や関心自体が「けもフレ」1期のヒット時より、かなり薄くなっている印象を受けました。恐らく、当時あれだけ熱狂していたファンの中には、もう作品情報すら追っていない人や、「『ケムリクサ』と『けもフレ2』って今期だったっけ」くらいの感覚の人も多くなってしまったのでしょう。「だって、たつき監督じゃない『けもフレ』なんてもはや『けもフレ』じゃないし」という気持ちや、「自分が見たいのは、かばんちゃんの物語だから」と言いたい気持ちも分かります。ですが、そう言い捨てて「ケムリクサ」を含めたその後の展開を気にかけることさえしていないのは、そもそも既に、それだけ「けもフレ」自体への熱が冷めてしまっているということでもあると思うのです。
平和的に思える今回の両作品への反応は、かつて「優しい世界」に心を動かされた「けもフレ」ファンならではの行動だなと思わされました。しかし、その反面、既に「けもフレ」熱が冷めてしまっているということの表れなのかもしれません。だとすると今回の反応は、あれだけ話題を呼んだコンテンツの現状としては少し寂しいものを感じてしまうのです。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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