おそ松さん:ニートな六つ子誕生秘話 大ヒットも藤田監督の生活は変わらず

アニメ「おそ松さん」の劇場版「えいがのおそ松さん」を手がけた藤田陽一監督
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アニメ「おそ松さん」の劇場版「えいがのおそ松さん」を手がけた藤田陽一監督

 人気テレビアニメ「おそ松さん」の完全新作劇場版「えいがのおそ松さん」(藤田陽一監督)が15日、公開される。テレビでは予測不能なギャグなどが女性アニメファンを中心に人気を集めている。第1期が2015年10月~16年3月、第2期が17年10月~18年3月に放送され、特集雑誌が異例の増刷を重ねるなど社会現象になった。大ヒットにも「予想外だった」と明かす藤田監督に、「おそ松さん」誕生秘話や劇場版について聞いた。

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 ◇女性人気も予想外 嫌われないようにしたつもりが

 原作は赤塚不二夫さんの名作マンガ「おそ松くん」。アニメ「おそ松くん」は子供向けだったが、「おそ松さん」は深夜アニメとして放送された。「銀魂」「貧乏神が!」「クラシカロイド」などさまざまなアニメを手がけてきた藤田監督は深夜放送に最初、戸惑ったという。

 「勝手に夕方放送のアニメだと思っていたのですが、深夜枠だと言われ、びっくりしました。アニメで大人も見られるコメディーが少ないと思っていた。あるとしたら、可愛い女の子が出てくるアニメファン向けのものか、キッズ向け。『ザ・シンプソンズ』『サウスパーク』のようなものはない。ないなら、そこは空いているから、やってみよう!となった。アニメ好きじゃなくても見られるもので、仕事から帰ってきて、何となく見て楽しいという温度感のものです」

 これまで「おそ松さん」のスタッフに取材する中で、大ヒットしたことについて「予想外だった」という声を聞くことがあった。藤田監督も「本当に予想外」と明かす。「おそ松さん」は女性ファンの心をつかんだ。しかし、藤田監督は企画当初、女性ファンを意識していなかったという。

 「女性に嫌われないようにしよう……くらい。僕もスタッフもおっさんばっかりですし、どぎつくなりそうなので。これも予想外です。声優さんも実力と人気を兼ね備えている方ばかりなので、引っ張っていただいたところもあります。自分が好きなものはそんなにメジャーでもない。考え過ぎても仕方がない。みんなが楽しくめるように作って、ぬるくなっても続かないのかな。すべっても思いっきり振り切った方が意味があるのかな?と思ったり」

 ◇六つ子に個性を与えた理由 ヒットで監督の生活は変わった?

 原作の「おそ松くん」は、六つ子の個性が見えにくかったが、「おそ松さん」の六つ子は性格がばらばら。個性的な六つ子が繰り広げるギャグが人気となった。

 「コメディーを見せるために、六つ子のキャラクターを作った。キャラクターが人気になるのも予想外でしたね。原作の『おそ松くん』はチビ太とイヤミが、ギャグや物語を引っ張っているところもあります。あの2人は完成され過ぎていて、今のアニメに落とし込めにくいところもある。コメディーやギャグは、今の風俗、常識をいじりたい。六つ子は空いているな……とは思ったのですが、六つ子であることをネタを頼りにすると、弾が尽きる。それぞれに今っぽい役割を与えていきました」」

 スタッフが予想しなかった形で「おそ松さん」は大ヒットしたが、藤田監督は「生活は変わらない」と笑顔で語る。

 「残念なくらい仕事しかしていません。寝て起きて、家とスタジオを往復しているだけ。ヒットを飛ばしたら、人生何か変わると思ったのですが、がっかりしています(笑い)。モテるわけでもなく、そんな機会もない。強いて言うなら、自分の仕事を紹介するのが楽になりましたが」

 ◇売れるほど六つ子はニート脱出できず…

 大ヒット作ということもあり、テレビアニメ第2期に続く新作が注目される中、藤田監督は次は劇場版を作ってみたいという思いがあった。

 「ルーティンになるのが嫌だったんです。ルーティンが似合わない作品でもありますし。映画だと、何をやるんだろう?と思われるし、ハードルが高くなる中、やることが楽しい。スタッフも育ってきたので、違うことをやった方が次につながるとも考えていました。中身はノープランでした」

 劇場版では、高校時代の六つ子が登場する。ギャグが繰り広げられつつ、ドラマチックな展開もある。

 「このチームで何ができるか見てみたかった。長い尺なので一本ドラマがないといけない。ギャグだけで2時間見せるのではなく、縦軸も必要。ただ、ニートたちが主役なので結婚したり、就職したり、成長すると話が終わってしまう。成長できないんだけど、成長しないとドラマは作れない。じゃあ、昔の話の方がいいかな?と。ファンの方も六つ子の過去が見たいでしょうし」

 劇場版は映画らしい仕上がりになっている。映画らしさは意識したのだろうか?

 「昔は映画とは? と考えていたような気もするのですが、意識しなくなりました。結果、思ったよりも映画になっていた。思い出というキーワードがあり、縦軸を通した時にすっきりしたのかもしれません」

 ファンは「おそ松さん」の今後の展開も気になるところだろう。藤田監督は具体的な予定については語らないが「六つ子が成長したら終わる。売れるほど、こいつらは永遠にニートなんですよね。完結編作ることになったら、成長するかもしれません」と明かす。ニートを卒業する六つ子も見てみたいが、完結するのは寂しい。「おそ松さん」はジレンマを抱えたアニメなのかもしれない。

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