青木志貴の魔王式随想:初めてのオンラインゲームの思い出(後編) 唯一無二の友人、そして…

青木志貴さん
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青木志貴さん

 人気ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」の二宮飛鳥役などで知られる新人声優の青木志貴さん。自身を「ボク」と呼ぶ“ボクっ娘”で、“魔王”のニックネームで「League of Legends」などのオンラインゲームをがっつりやり込むコアゲーマーという異色の経歴も併せ持つ青木さんが、その独自の視点で自身の歩みやさまざまな思いを語ります。今回は前編に引き続き、青木さんが初めてのオンラインゲームの思い出を振り返ります。

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 (前編から)そんな中、ボクと同時期にクラブに入ってきて、ボクと同じように全くしゃべらないクラブメンバーがいました。

 レベルもボクと同じくらいで、使っていたのはマキシミンという眼鏡男子キャラ。その子もなじめないのかな~と気になりつつも、日がたつにつれ、ボクは「クラブを抜けよう」と思うようになったんです。理由はやっぱり、なじめなかったから。それだけで、クラブメンバーは本当に愉快で楽しい人たちでした。チャットを眺めてるだけでも楽しかったけど、ボクもその輪に入りたかったななんて思いながら。

 そんなこんなで「よし、今日クラブマスターに抜けるって言うぞ」と決心していたのですが、そのタイミングで、例のマキシミンから個人チャットが。「すみません、自分このクラブ抜けようと思うんですけど……」。まさかの突然の告白に、ボクもびっくりしてしまいました。だってもボクも同じことを考えていたのですから(笑い)。

 「ボク(青木)も入ってから全然なじめてないので、抜けようと思ってたところなんです」「え? そうなんですか?」そんな感じで、お互いまともに話したのはこれが初めてだったのですが、信じられないくらい会話が弾み……。これが「ウマが合う」ってことなんだろうなって初めて思ったくらい、この一瞬ですごく打ち解けたんです。お互い「なじめない」という共通項があったからなのかな。それからというもの、信じられないくらい気が合う友人を見つけてしまったボクらは、クラブを抜けるどころか、そこから急にクラブの皆ともなじんでいったんです。不思議です(笑い)。

 その友人とは毎日ずっと一緒に遊ぶようになり、当時はスカイプ通話もするようになっていたので、家にいるときはTWをしてなくても通話をつないで、ニコニコ動画やアニメを見ながら話したり、ネット上だけど一緒にいるような感じでした。通話してましたからもちろんボクが女で、向こうが男というのもわかっていましたが、恋愛とかそんな空気になることは一切なく。親友というか、本当の兄弟なんじゃね?ぐらい仲が良かったです。お互い住んでる場所も遠かったのですが、東京に引っ越してくることに! ボクは東京に住んでいたので、リアルでも遊べたらめっちゃ楽しいだろうなって。

 東京に引っ越してくる理由なんかもボクはちゃんと聞いていたので、応援していたのですが、上京してしばらくして連絡がとれなくなってしまいました。東京に越してきてからうまくいってないという話をちょこっと聞いていたので、とても心配になり。いろいろ連絡手段をさがしたのですが、今ではもうどこでどうしているかもわかりません。

 ただ、本当に楽しくて、ネット上の付き合いだったのに親友だと思えるくらい、本当に大好きな唯一無二の友人。今でもまた一緒に遊べるならすごくうれしいし、遊べなくても元気に暮らしてくれてたらいいなと思うのですが。もし、この文章を読むことがあったら、ぜひ連絡がほしいなと思ってしまいますね。そんでまた、当時のHNで呼び合って遊べたら最高なのに(笑い)。

 そんな思い出もあるTWですが、なんと現在もサービスが続いています。もう15年くらいになるのかな? この時期のオンラインゲームが今もまだ続いてるってすごいと思うし、何より今もまだボクの思い出がその中に残ってると思うとうれしくなりますね。定期的に懐かしくなって、TWにインしたくなるのですが、パスかIDが間違っているらしくログインできず……。メールアドレスも中学2年のときのものですから、なんだったかも思い出せなくて。ログインしたいけど、ずっと諦めてました。

 しかし1カ月前くらいでしょうか。また思い出にひたるためにTWのBGMを聴いたり、動画を見たりしてたのですが、どうしてもログインして、自分の当時のキャラを動かしたくなり、お問い合わせでやりとりを重ね、個人情報などが一致したため今のメールアドレスに変更することができ、なんと、無事にログインすることができたんです!!

 本当にめちゃめちゃうれしくて、いろんな街を回ったり、好きだったフィールドの曲を聴きにいったり、好きだった放置場所を巡ってみたり……。人が少なくなってしまって、サーバーも統合されて、街をまわっても知り合いはいなくて。フレンドリストも全部真っ黒。オフライン。そのフレンドリストを見てちょっと寂しくなったりもしましたけど、本当に懐かしくて、いろんな感情で胸がいっぱいになって。もう途中からひとりで号泣しながら街散策(笑い)。人は変わっても街は変わってないし、新しい場所がどんどんできても、思い出の場所はずっとそこにありました。

 本腰を入れてがっつりTWを遊ぶっていうのは、ひとりじゃもうないかもしれないけど、サービスが続く限りはまたこうして定期的にログインして思い出にひたったり、もしその親友がひょっこり現れたり、もしくは一緒にTWで遊ぶよ!って友達ができたときには復帰するかもしれないなぁなんて思いつつ。

 ただのデータと言われてしまったら、そうかもしれないけど。そのデータの中にボクの14歳から20歳くらいまでの青春が詰まってるって考えたら、なんかすごくないですか?(笑い)。もはやゲーム内のボクのキャラはボクの分身みたいな感覚になってるし、ずっとサービスが続いて、あのTWの世界も、ボクの分身も消えないでほしいなぁって願わずにはいられません。

 今は14歳のころからずいぶん年もとって、大人になって、いくつも夢をかなえて。また当時みたいにただ遊ぶだけじゃなくて、仕事としてTWに関われたらいいなっていうのも今の目標のひとつになりました。そして何よりまたもう一度、大好きな友人に会えますように。これから先また、オンラインゲームの世界でまだ見ぬ素敵な友人に出会えますように! そんなボクの初めてのオンラインゲームのとっても大切な思い出でした!

 ◇プロフィル

 あおき・しき=1月14日生まれ。162センチ、AB型。「アイドルマスターシンデレラガールズ」の二宮飛鳥役など。声優、タレントと多方面で活動中。ゲーマーとしても「魔王」の愛称を持つコアゲーマー。

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