ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
アニメ「夜明け告げるルーのうた」「四畳半神話大系」などで知られる湯浅政明監督の新作劇場版アニメ「きみと、波にのれたら」が6月21日公開される。唯一無二の映像表現で鬼才とも言われる湯浅監督がサーフィン、恋愛などをテーマとしたアニメを手がけたことも話題だ。「未知なものを描いて、これまで自分の作品を見ていない人にも出会いたかったところもあります」と挑んだ湯浅監督に、製作の裏側を聞いた。
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「きみと、波にのれたら」は、大学入学を機に海辺の街へ越してきたサーフィンが大好きな向水ひな子と消防士の雛罌粟(ひなげし)港の恋を描く。港は海で命を落としてしまうが、ひな子が2人の思い出の歌を口ずさむと、水の中から港が現れる。再出現の本当の目的は何か、が明らかになっていく。川栄李奈さんがひな子、GENERATIONS from EXILE TRIBE」の片寄涼太さんが港の声を演じるほか、伊藤健太郎さん、松本穂香さんらも出演。メインキャラクター4人を中心としたストーリーとなっている。
「自分が好きな映画もそうだったんですね。主要な人物は3、4人だけ。やったことがないことをやってみたかったんです。これまではたくさんの人の思いを描く中で世界を作ろうとしていたけど、(メインキャラクターの)4人の中の世界を描こうとした。形は変えているけど同じように描いていて、もっと深く描こうとした」
テーマはサーフィンや恋愛、成長など。湯浅監督とサーフィンが結びつかない……と勝手にイメージを抱き、驚いたファンも多いだろう。
「サーフィン、(港の職業の)消防士というのは自分から遠いもの。未知なものを描いて、これまで自分の作品を見ていない人にも出会いたかったところもあります。サーフィンは、外界とは違うところにいるようになったり、ただ浮いていることもできる。意外に性に合っているのかな? 老後はサーフィンもいいかもしれませんね。取材をするうちに、サーファーにもいろいろな人がいることが分かりました。『桐島、部活やめるってよ』という映画が好きなのですが、あの作品を見てイケイケな人でも悩みがあって、それぞれ悩みがあるんだ!と感じたこともありました。自信がない人が多いのかな?とも感じました」
メインキャラクターの4人は共に自分に自信がない。ひな子は、港との出会いやさまざまな経験を経て成長する。
「誰もがヒーローであるというのもやりたかったテーマ。自分に自信がないけど、実は誰かのためになっていて、それに気づいていない。そういう人が報われる社会になればという思いもあります。生きづらい中で、まっとうに生きている人を応援したい気持ちもありました」
「若い時、ラブストーリーは除外していた。ラブストーリーがよく分かっていなくて、安直に作っていた」という湯浅監督。これまでも恋愛を描いてこなかったわけではないが、新作はストレートに恋愛を描くことが挑戦だった。湯浅監督は、鬼才とも言われるが、新作はよりポピュラリティーのある作品に仕上がっている。
「いつもそれ(ポピュラリティー)を考えています。どうしたら届くのか? とボールを投げています。今回は、いつもより大きく腕を振れたな、と思います。思い切って変えているところもあります。ストーリーもシンプルにして、ファンタジーもこれまでと比較すると入れていない。アニメということを意識して見られるようにしたところもあります」
湯浅監督は唯一無二の映像表現に注目が集まりがちだが、人間のエゴ、人間関係など社会を描いてきたことも忘れてはいけない。新作でも社会、人間関係などを丁寧に描いている。
「なぜ今、作るのか?と考えるうちにそうなっているのかもしれません。人間の根源的な欲求とは?とも考えることがあります。世代によって考えた方が違うことも描いてきました。ただ、テーマのない作品も好き。若い時はテーマがなくてもいいと思っていたけど、テーマを決めると作りやすいし、方向が決まる。見る人も分かりやすい。そこを探るのが楽しいんですね。『映画は構造』と言われたことがあって、構造って何なんだろう?と思っていたのですが、意外にみんな、構造を見ているのかもしれませんね」
湯浅監督は、劇場版アニメ「犬王」やテレビアニメ「映像研には手を出すな!」を手がけることも発表されている。今後も独自の表現でファンを驚かせてくれるはずだ。
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