俳優の横浜流星さん主演の映画「いなくなれ、群青」(柳明菜監督、公開中)に出演している黒羽麻璃央さん。映画は謎だらけの島・階段島を舞台に、悲観的な主人公・七草(横浜さん)と七草の幼なじみで理想主義者の真辺由宇(飯豊まりえさん)たちが島にまつわる謎を解き明かそうとする姿を描いた青春ファンタジーで、黒羽さんは七草と親密な関係で、いつも屋上にいるミステリアスな高校生・ナドを演じている。映像の世界のみならず、ミュージカル「テニスの王子様2ndシーズン」に主要キャストの一人として出演するなど“2.5次元の王子様”とも呼ばれている黒羽さんに、今作への思いや演じたナドについて聞くとともに、舞台と映像の両輪で活躍することへの思いや葛藤などを聞いた。
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原作は河野裕さんの同名小説(新潮文庫nex)で、第8回「大学読書人大賞」も受賞している。映画は、ミステリアスな雰囲気の七草と凛々しい少女・真辺が奇妙な島・階段島で再会。真辺は、島から出るために、七草ら周囲を巻き込みながら島にまつわる謎を解き明かそうとする……というストーリー。
ナドは七草と心を通わせる孤高の文学青年。いつも屋上にいる、ミステリアスな雰囲気を漂わせるキャラクターだ。そんなナドを、黒羽さんは「屋上にいちゃう系」「ファンタジー男子」とユーモアを交えて表現する。「ナドは、感性的なものが人と違うんですね。言い方を変えたら、一匹狼に近い。とがっているわけではないけれど、流れている時間や空間が独特だと思います。心を通わせている親友・七草とは、常にコミュニケーションを取りながら、ひとつ悟ったような、メンタル面ですごく年上さを感じる人物」と黒羽さんは説明する。
つかみどころがなく、どこか浮世離れしたナド。ふわふわしたキャラクターゆえ、黒羽さんはあえて役のイメージを固めることはしなかったという。「こういうのだ、というのはあえて作らずに。つかめない人間をつかもうとするのはなかなか難しくて、究極的には無理なんじゃないかと悟りました」と黒羽さん。「前に出演した全然違う作品で、つかめない人間ってつかもうとすると無理なんだな、と学んだので、そのままでいいかなと思いました」と語る。
ナドを演じるうえでは、黒羽さん自身の性格にも「少し寄せているかもしれない」といい、「自分が表現できるものでやっているのかもしれない。無理なく、ストレスなくやっていたのは確かです。お芝居で流れる空気感やシーンの役割みたいなもので役を作っていったかなと思います」と振り返る。
今作では、七草を演じる横浜さんとの共演シーンが多くを占めている。黒羽さんは横浜さんについて「年下だけどこれだけの活躍をされていて、そりゃ活躍するだろうな、という人。お芝居に対してすごく貪欲なんだろうなと思います」と話し、「単なるフィーリングですが、自分に近いかな、というのがあります」と続ける。「パッと見の雰囲気とかは、なんか近いかな、と。ジャンル分けをしたら同じ部類に入りそうな……『シュッとしている』みたいな(笑い)。自分で言うのは恥ずかしいけど、根っこはすごく熱い男、という感じ。それをあまり表に出そうとはしていないけれど、すごく我が強いところや、誰しもが持っている黒い部分とかは似ている気がします」と共通点を語る。
今作の舞台は捨てられた人たちの島・階段島。そこで黒羽さん自身の「捨てたい」「捨てられない」と思う部分は何かを聞いてみた。すると「捨てたい自分は、僕はないです」と黒羽さんは即答する。「全部自分だと思っているので。嫌なところがないんです。そもそも、嫌な、捨てたいな、という自分を持たないように生きているから。生きている中で、自分の理想の“黒羽麻璃央像”を追いかけている。こういう人間になりたいな、という方向を向きながら生きているので、今はそういうところがないんだと思います」と黒羽さん。では、「捨てたくない自分」は? 続けてそう聞くと、「全部。全部、捨てたくない」とにっこりとほほ笑む。
映像のみならず舞台でも華やかに活躍し、“2.5次元の王子様”の呼び名も持つ黒羽さん。映像と舞台の両輪で活躍しているが、もともとは映像の世界の華やかさに魅了されたことが役者人生の入り口だった。「映画やドラマを見て『芸能界ってすごいな』『自分もいつか画面の中の人間になりたいな』と思ったのがこの業界に入るきっかけだったんです」。
俳優としてキャリアをスタートさせてからはミュージカル「テニスの王子様」など、ミュージカルでの活躍が目立っていたが、そこに迷いも抱くようになった、という。「最初の方は“テニミュ”出身なのでどうしても舞台(の仕事)がすごく多かったんです。でも『自分のやりたい方向ってこっちだったかな』と少し前に考えるようになって……」と葛藤を明かす。
最近では、「コーヒー&バニラ」(MBSほか)など連続ドラマにも出演し、映像の仕事でも存在感を発揮している黒羽さんだが、舞台への思いも変わらず強い。「舞台は舞台で、やっぱりやればやるほどすごく好きだし、お客さんに見てもらえることで興奮するタイプの人間だと思うので、難しいかもしれないですけど、二足のわらじで(やっていきたい)。舞台をやっているときは映画やドラマに出たいと思うし、映画やドラマをやっていれば舞台に立ちたいと思うので、いいバランスで今後も両方やっていきたいと思っています」と黒羽さん。「片っぽに絞った方が楽かもしれないけど、どうしても欲が出ちゃうので(笑い)。でも、それが自分にとってすごくプラスに働いていると思います」と語る。
最後に、“2.5次元の王子様”という呼び名について聞いてみると、「僕、王子様じゃないですからね(笑い)。“2.5次元の農民”です」。そう照れ笑いを浮かべつつ、「そういうふうに呼んでいただけるのはうれしいですけどね」とほほ笑んだ。
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