少年寅次郎:5話で終わるのはもったいない 井上真央主演“超高速朝ドラ”に名作の予感漂うワケ

NHKの連続ドラマ「少年寅次郎」(C)NHK
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NHKの連続ドラマ「少年寅次郎」(C)NHK

 女優の井上真央さん主演で10月19日にスタートしたNHKの連続ドラマ「少年寅次郎」(総合、土曜午後9時)。国民的映画シリーズ「男はつらいよ」の主人公・車寅次郎(寅さん)の少年時代を描いた、山田洋次監督の小説「悪童(ワルガキ) 小説寅次郎の告白」(講談社)のドラマ化で、母子の絆を描く泣き笑いの物語に対して視聴者から、「温かくて泣ける」「久しぶりに純粋に泣ける」「こんな泣けるドラマが5話で終わってしまうの本当にもったいない」といった声が多数上がっている。寅次郎の育ての母・車光子を演じる井上さんは同ドラマのことを「超高速朝ドラ」と表現していたが、まさに言い得て妙。早くも名作の予感が漂っている……。

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 ◇“渥美清さん似”の子役・藤原颯音君が本当に泣き笑い

 「少年寅次郎」は、寅次郎出生の秘密から、戦争を挟んだ悪ガキ時代、そして最愛の妹・さくらに見送られて葛飾柴又の駅から旅立つ14歳までの物語。このドラマを語る上で外せないのが、寅次郎の幼少期を演じている子役の藤原颯音(はやと)君(9)だ。

 魅力は「寅さん」としてその名を知らない人はいないであろう、故・渥美清さんを想起させるルックスと何とも愛らしい表情。SNS上では「すごい! ちゃんと渥美清さん感がある」「ものすごく寅さんだなぁw 血縁じゃないかと思うくらい」「この子の目がほんといいな」などと評判になっている。

 今回、オーディションによって発掘された颯音君。以前に演技経験はあったものの、役が付いてのお芝居はほぼ初めて。制作統括の小松昌代さん(NHKエンタープライズ)によると「寅次郎役を見つけるというのはこの作品にとって最重要課題」で、颯音君に関しては「そんなに芝居できない、そもそもお芝居をやろうと思っていないのが逆に良かった」と振り返る。

 撮影するにあたっては、井上さんら「大人たちの力」を借り、颯音君がスタジオで家族と一緒に本当に生活をしていると思えるような環境作りに努めたといい、いつしか井上さんが、母として颯音君にうれしいことを言えば笑い、悲しくなるようなことを口にすれば泣き出すという感じになっていったという。画面の中に“寅ちゃん”以外の何者ものでもなく存在し、泣き笑いする颯音君を見ていると、そのもくろみは成功したと言える。

 ◇岡田惠和脚本の笑顔と涙の緩急 井上真央の「相手の芝居を変えさせてしまう力」

 とにかく「泣ける」という感想の多い「少年寅次郎」だが、脚本を手掛けているのは2017年度前期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ひよっこ」などで知られる岡田惠和さん。主演の井上さんとは、2011年度前期の朝ドラ「おひさま」以来、8年ぶりのタッグとなった。

 井上さんの「超高速」との言葉通りにテンポよく物語は進むが、重要なエピソードにおける濃密さと、笑顔と涙の緩急は見事としか言いようがない。光子と寅次郎の絆を中心にした家族の物語という意味でも非常に朝ドラ的で、「男はつらいよ」を知らない視聴者でも思わずのめり込んでしまう、間口の広いドラマに仕上がった。

 そんな岡田脚本の中でキャスト陣も生き生きとしている。寅次郎のぐうたらな父・平造は、2018年度後期の朝ドラ「まんぷく」の森本元役で注目された毎熊克哉さんが好演。平造はぐうたらどころか「クズ」とさえ呼ばれそうな男だが、何だかんだ光子の尻に敷かれており、そんな平造に対して光子が愛情を抱いていることが、しっかりと描かれているのも見逃せない。

 井上さん本人の演技については改めて語るまでもないが、制作統括の小松さんによると「朝ドラの頃から見ていますが、なかなかいない女優さんだと思っていて。達者と言ってしまえば達者。でも彼女の魅力はそういうところではなく、相手の芝居を変えさせてしまう力を持っている。そこがピカイチ」。今回“寅ちゃん”こと颯音君が話題になっているが、本当の母のように接する井上さんの対人芝居の巧みさに支えられている部分は当然、大きく、だからこそ2人のシーンはこんなにも胸を打つのだろう。

 ◇今後の見どころは寅次郎の初恋 伸び盛りの18歳・森七菜が新風吹き込む

 11月2日放送の第3話以降に目を向けると、寅次郎役は、颯音君と同様に渥美さんによく似た井上優吏(すぐり)さんへと受け継がれ、寅次郎の初恋相手として森七菜さんが登場する。

 今年1月期に放送された連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)で注目され、新海誠監督の新作劇場版アニメ「天気の子」でヒロイン・陽菜の声優を務めたことも話題となった森さんは、伸び盛りの18歳。小松さんは森さんに対して、女優として「井上さんと同じ資質を持っている」と感じ、「相手がいてこそ芝居が成立することをよく分かっている」と評している。名作の予感が漂う「少年寅次郎」に、どんな新風を吹き込んでくれるのか、注目だ。

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