ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
東宝の武井克弘プロデューサーとアニメーション制作会社・オレンジの和氣澄賢プロデューサーのプロデューサーユニット「プロジェクト」。アニメ化が難しいとも言われてきた「宝石の国」をCGで見事にアニメとして表現したほか、美しい映像が話題になったショートアニメ「そばへ」も手掛けた。話題作を続々と送り出してきたプロジェクトが目指すものとは……。二人に、これまで手掛けてきた作品の挑戦、未来について聞いた。
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和氣プロデューサーはマッドハウス、スタジオ地図に所属し、「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」などを手掛けてきた。武井プロデューサーは「干物妹!うまるちゃん」「リトルウィッチアカデミア」なども企画してきた。
二人がタッグを組むことになったきっかけは2017年に放送されたテレビアニメ「宝石の国」だ。「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載中の市川春子さんのマンガが原作で、武井プロデューサーがアニメ化を企画した。武井プロデューサーは「どうやったら面白くなるのか? CGがいいんじゃないか?」と考えた。そこで「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」などさまざまなアニメのCGを手掛けてきたオレンジに依頼することになった。
「『マジェスティックプリンス』の時、オレンジの井野元(英二)社長から『いつか元請けでやりたい』という話があったんです。オレンジは技術が素晴らしいけど、元請けをやったことがなく、プロデューサーや制作進行(の人)がいなかった。そこで知人だった和氣さんに相談したところ、『僕がやります!』と言ってくれたんです」
「宝石の国」には、宝石の体を持つ人型の生物が登場する。キャラクターのフォルムが独特で、CGで表現するのは難しいのでは? という声もあった。しかし、武井プロデューサーは「最初はハイブリッドも考えていたが、思い切ってCGでやってみよう!」と決断した。
「キャラクターの髪、目などがそのまま宝石の質感ですし、髪が透けていたりするなど作画では難しい表現がある。例えば、光が通過して、肩に光が落ちるような表現は、作画でもできますが、CGが向いている。舞台が限定空間で、CGにマッチします」
そもそもマンガとアニメは表現方法が異なるため、原作の全てを表現できるわけではない。和氣プロデューサーは「原作から変えているところもあります。ただ、守るべきところから外れないようにしていました」と明かす。
「武井さんは、キャラクター性を大切にすると言い続けていました。キャラクター性は、アニメで動きを作る時にも大切になります。CGのアニメーターは芝居をさせることに慣れていない人もいます。動かすことができるけど、芝居をさせるのが難しい。プレスコ(先に声を収録してから映像を作る手法)をガイドにしながら芝居を付けました」
「そばへ」は、東宝、丸井グループ、オレンジによるアニメ。劇場版アニメ「未来のミライ」(細田守監督)に助監督として参加した石井俊匡監督が手掛けた。テーマは、丸井グループが企業理念の一つに掲げる「インクルージョン(包摂)」。雨などの表現の美しさが印象的で、この作品もチャレンジだった。和氣プロデューサーは「雨の流体表現、クロスシミュレーション(服などの動きを物理的にシミュレートする技術)で服の動きを表現することにチャレンジしました」と話す。
「そばへ」は水彩画が動き出したような印象を受ける。和氣プロデューサーは「コンセプトアートがベースで、それをアニメとして動かしていこうとしました。(オレンジの社長の)井野元はCGのアニメーターですが、絵が描けるんです。オレンジでは、CGでアニメーションをつけた後、最後に絵を描くように影を描くこともあります。手間なんですけどね」と明かす。
プロジェクトの二人は、CGの表現の拡張を目指しているようにも見える。武井プロデューサーは「CGはメカとかアクションが得意と言われていましたが、それは可能性の一部」と話す。
「CGはこれが得意!と決め付けがちですが、手描きと同じくらいの可能性があるはず。それを試しているところです。今、アニメの表現をやり直すチャンスかもしれません。手描きは技術継承がうまくできていない。技術が失われつつある中で、日本のアニメは、手描きとCGが分断されていて、CGに日本のアニメの技術がうまく注入されていない。そこにブリッジを架けることができれば、日本のアニメの歴史をふまえたCGアニメができるかもしれない」
日本のアニメはこれまで、独自の進化を遂げてきたとも言われている。日本のCGアニメも独自の進化で新たな表現が生まれてくるかもしれない。武井プロデューサーは「結果的に独自の表現になっていく。ピクサーやディズニーみたいなことをするのは、現実的に難しい。僕らは工夫するしかない。それが結果的に世界的なものになっていけば」と語る。
プロジェクトは、作画のアニメも手掛ける予定もあるといい、「いつかは映画も! やりたいことはたくさんあります」と意気込む。手描きアニメの技術が失われていく中で、アニメの表現の根源を再検証したり、表現の可能性を拡張したりしていくのかもしれない。
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