ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
4月に亡くなったモンキー・パンチさん原作の国民的アニメ「ルパン三世」を初めて3DCGアニメ化した劇場版アニメ最新作「ルパン三世 THE FIRST」(山崎貴監督)が全国で公開中だ。山崎監督といえば「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなどヒット作を数々生み出し、「STAND BY ME ドラえもん」(2014年)や「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」(2019年)など3DCGアニメも手がけてきた日本におけるVFXの第一人者。脚本も手がけた山崎監督に、「ルパン三世」への思いや製作秘話などについて聞いた。
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「ルパン三世 THE FIRST」は、祖父ルパン一世が唯一盗み出すことに失敗した因縁のお宝「ブレッソン・ダイアリー」を巡って秘密組織とルパン三世が争奪戦を繰り広げるというストーリー。声優として女優の広瀬すずさん、俳優の藤原竜也さん、吉田鋼太郎さんが出演。もちろん「ルパン三世」のレギュラー声優陣である栗田貫一さん、小林清志さん、浪川大輔さん、沢城みゆきさん、山寺宏一さんも出演している。
山崎監督のアニメの原点は宮崎駿監督の作品にあるという。自身で「極端に宮崎駿作品だけが好きなんです」と話す通り、今回の「ルパン三世」を3DCGアニメ化するにあたっては、「『カリオストロの城』(1979年)に近づけちゃいけないなと一生懸命逃げようとしたんですけど、やっぱり無理でしたね」と笑顔で語る。
「カリオストロっぽいルパンが好きなんですよ。ルパン三世で宮崎駿さんが監督した作品は『カリオストロの城』と(テレビシリーズの)『死の翼アルバトロス』『さらば愛しきルパンよ』の3本あるんですけど、それが自分の中で大きくて。見た時のワクワク感みたいなところから(製作意欲が)来ているので、それに引っ張られてしまうところがすごくありましたね。ものすごく逃げようとはしたんですけど」と明かす。
今回の企画が立ち上がったとき「僕は『ルパン三世』は3DCGに向いていると思いました。というのはカートゥーンの感じというか、割と海外のキャラクターに近い。日本のアニメの記号とはちょっと違うところにあると思いました」という印象だった。
「ルパン三世」はご存じの通り二次元のアニメとして脈々と続いてきた人気シリーズだ。それを3Dにする際には「できるだけ翻訳というか、2Dから3Dへの違和感はないようにというのは意識したんです。ところが、ルパン三世についてはいろんな人がいろんなタッチで描いていて、これというものはない。だから、それぞれの人の頭の中にある最大公約数的なルパンを、また他のキャラクターに関しても模索していったという感じですね」と語る。
最大公約数のキャラにするには「いろんな人に見てもらいました。ルパンだけでも当初20種類くらいデザインがあったんですよ。数十人にどれが好きか、どれが一番ルパンっぽいかなど意見を聞いて、それで選ばれたものをベースに作っていきました」という。
今回のルパンは赤のジャケットに黒シャツを着ている。山崎監督が好きな「カリオストロの城」のルパンのジャケットは緑色だが……。「いろんな意見を聞いたら、『ルパンってやっぱり赤じゃないか』と。個人的には緑色にしたい気持ちはめちゃくちゃありましたけど」と楽しそうに語る。
山崎監督が「ルパンは3DCGになじみがよかったという印象」と語るのはアクションシーンにもある。「アクションの種類にしても、宮崎さんがやっている航空機のアクションとか、わりと3DCGとなじみがいい感じのアクションが多い。三次元的な動きをするシーンが多いキャラクターなので、3DCGにする意味があるんじゃないかなと思いました」という。
3DCGになったルパンは短髪だが髪の毛がフワッとしている印象も受ける。「宮崎さんのルパンとかシーズン2の最終回で空をロボットと一緒に飛ぶ瞬間があるんですけど、そのときは髪の毛がふわふわしているんです。髪の毛の動きというのは2Dではなかなかやりきれない部分があるので、3Dではぜひ表現したかった。高いところから落ちたり、飛行機に乗ったり、カーチェースしたりとか風を感じるシーンが多いので、そこは単純に3Dで画(え)にした方がいいのかなと思ったんですよね」と語る。
4月に亡くなった原作者のモンキー・パンチさんとは対面がかなわなかった。「完成したころにお会いできるかなと思っていたんですけれど、その前に亡くなられてしまったので……。映画の感想をぜひ聞きたかったですね」と残念がる。
モンキー・パンチさんの印象は「すごくしゃれた世界観を持ってらしたと思うんですよね。原作が持っているしゃれた動きというか、日本人離れした独特の世界観というのはいろんな形でそのあとに影響を与えている。どうやってそういう感覚を手にしたのかなどをお聞きしたかったなと思いますね」と話す。
今回、声の収録は画ができる前に録(と)るプレスコ方式が取られた。ヒロインのレティシアを演じた広瀬さんはルパン役の栗田さんと収録したという。広瀬さんの声について山崎監督は「彼女のイメージを構成しているものの50%くらいは声で支えられているのかなという気がするんですよ。その中には今回のヒロインのレティシアと共通しているものが成分として多くあるような気がしているのでやってもらおうと」と白羽の矢を立てた。
結果的に広瀬さんの声は「キャラクター造形にすごく役に立っている気がします。声はキャラクターを構成する非常に重要な要素ですから、声から想像するレティシアの挙動をアニメーターの人たちが画につけていってくれた。声ありきで作っているので、すごく画に力を貸してくれたなという気がします」と画作りに役立ったという。
おなじみのルパン、次元大介、石川五ェ門らのキャストも顔をそろえた収録現場に立ち会い、「ああ本物のルパンだ、と。特に次元は一番初めのときから小林さんが担当されているので感無量でした」と子供のころから聞いていた“生次元”にファン目線になってしまったという。
今作はシリーズ初の3DCG作品。シリーズの中でどういう存在になっただろうか。「3Dでシリーズが続いていけば、ルパンの3Dシリーズの初めての作品になりますし、シリーズ化しなかったら番外編かな(笑い)。この先どうなるか分からないですけど、『ルパン三世』という作品の多様性を示す一つの方向性にはなったのかなと思いますね」と力強く語る。
3DCG作品はファミリーで見られる作品が多いが、今作についても「自分の作風的にはエッジの利いたギリギリのものを攻めるというよりは、ファミリー的なもの、マスに向けたものを作ってきました。そこはへんにつっぱらないで、普段自分がやっているタイプのものを作りました」といい、「家族で見ても面白がれるものを狙ったつもりなんです。ルパンってハードボイルドな原作があるので、逆にファミリー的な感じ、楽しいルパン三世を目指したかった。どんな表現手法も吸収してしまうという原作の懐の深さがなせる業ですね」と語った。
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