俳優の藤岡弘、さんがかつて演じた人気キャラクター「せがた三四郎」がセガグループのPR動画「せが四郎」シリーズ第3話「決意」編で突如復活し、携帯ゲーム機「ゲームギア」の“極小ミクロサイズ版”の「ゲームギアミクロ」が発表されるなど、6月3日に設立60周年を迎えたセガが注目を集めている。どうしてセガは注目されるのか、目が離せないのか……。長年のセガファンである記者が考えてみると、二つの理由が浮かび上がった。
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まず、セガの沿革について軽く触れたい。1951年に前身となる会社が創業し、1960年に「日本娯楽物産株式会社」が設立。「セガ1000」という、国産初のジュークボックスを発売し、後にアーケードゲーム事業に参入。1965年に「セガ・エンタープライゼス」に商号を変更する。
家庭用ゲーム機では、1983年に初めて「SG1000」を発売したのを皮切りに、1985年に「セガ・マークIII」、1988年に「メガドライブ」、1990年に「ゲームギア」、1994年に「セガサターン」、1998年に「ドリームキャスト」と節目節目で新機種を発売。根強い人気を博するも競合他社とのシェア争いに負け、2001年に家庭用ゲームのハード市場から撤退を表明する。家庭用ゲームは他社のゲーム機にソフトを供給する事業へと転換し、2004年にパチスロメーカーの「サミー」と経営統合した。
ゲームソフトでは1991年には「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を発売し、ゲーム史に残る人気キャラクター「ソニック」が誕生した。このほかに「バーチャファイター」「サクラ大戦」「龍が如く」などの人気シリーズを抱え、ファンから支持を得ている。
また、存在感のあるテレビCMを投下。1997年に放送を開始した「せがた三四郎」や、ドリームキャストの発売前後から登場した「湯川専務」など、インパクトのあるCMを覚えている人も多いはずだ。
ファンがセガから目が離せない理由の一つとして、「時代を10年先取りしている」とも評される「先進性」が挙げられる。例えば、携帯ゲーム機として覇権を握った「ゲームボーイ」(任天堂)はモノクロ液晶を搭載していたが、ゲームボーイの翌年(1990年)にセガが発売した「ゲームギア」には、カラー液晶が搭載されていた。カラー液晶のゲームボーイ、「ゲームボーイカラー」(任天堂)が発売されたのが1998年だったことからも、いかにセガが時代を先取りしていたことが分かる。
また、1998年に発売されていた「ドリームキャスト」には、本体にネット接続機能が標準装備されていた。当時は十分にネット環境が整っているとは言えず、ADSLすらない時代だった。2000年にドリームキャスト向けタイトルとして発売された「ファンタシースターオンライン」は、オンラインRPGとして一時代を築いた。昨今では「オンラインゲーム」という言葉自体がほとんど“死語”と化しているが、この時代に家庭用ゲーム機でネットを意識したゲームを開発していたことは、先見の明があったと言わざるを得ない。
家庭用ゲーム機ではないが、2011年には「トイレッツ」なるアーケードゲームを発表。このアーケードは男性用トイレに速度センサーと液晶モニターが設置され、放尿の量や速度で対戦するという代物。一時期、居酒屋を中心に設置されており、トイレすら遊び場に変えてしまう発想力に、ネットがざわついたのは記憶に新しい。
もちろんゲームソフトでも、時代を先取りしていた。1993年にアーケードで稼働し、1994年に「セガサターン」向けに移植された「バーチャファイター」は、世界初となる3Dポリゴンの対戦型格闘ゲームだ。当時のゲームセンターでは、「バーチャファイター」を遊ぶために列ができ、社会現象を巻き起こすほどのブームになった。
1999年に「ドリームキャスト」向けに発売された「シェンムー」では横須賀の町並みを再現。広大なフィールドを自由に探索できるゲーム性は、オープンワールドゲームの先駆けとなったと言われている。また前述のファンタシースターオンラインで、初めてオンラインRPGに触れた人も多いはずだ。
一方、最先端技術を盛り込んだゲーム機を投入し、王道を行く他社のゲーム機に後塵を拝してしまうこともあった。先進性がありすぎるゆえに起こる、「悲劇性」も印象的だ。
前述の「ゲームギア」ではカラー液晶を搭載した代償として、消費電力が大きすぎるという問題があった。単3型アルカリ乾電池6本を使用して、約3時間でバッテリーが切れてしまうのだ。周辺機器にはACアダプタもあったが、旅先でうっかり長時間遊んでしまうと、セーブする前にバッテリー切れを起こすことがあって、ゲーマーを苦しめた。
昨年12月に放送されたバラエティー番組「しくじり先生 俺みたいになるな!!」(テレビ朝日系)でも取り上げられて話題となったが、「メガドライブ」では機能を拡張するための周辺機器を次々と投入。ROMカートリッジよりも大容量であるCD-ROMに対応するための「メガCD」や、高性能のCPUを搭載した「スーパー32X」が発売されたが、これらをフル装備すると塔のように巨大化し、ファンから「メガドラタワー」と呼ばれる迷走ぶりを見せた。
また「ドリームキャスト」が発売された1998年は前述した通り、ネット接続のインフラがまだ整ってはいない時代だった。一般的だったダイヤルアップ接続は従量課金制で、遊んだ時間に応じて使用料が膨らんでくる。夜間から早朝にかけて限定的に定額制となる「テレホーダイ」もあったが、こうした事情も相まって利用者は限定されていた。
セガが早すぎたのか、それとも社会が遅すぎたのか。いずれにせよ、セガのゲームには「先進性」ゆえに生まれた「悲劇」というストーリーがついて回る。「悲劇」はつい人に語りたくなるから、ファンはセガに注目してしまい、応援してしまうのだろう。セガファンとしては、これからもとがった姿勢を崩さず、「時代を先取りしすぎた」ゲームを発表してほしいと願っている。
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