12月4日に劇場公開された映画「サイレント・トーキョー」(波多野貴文監督)。ジョン・レノンの名曲「Happy X-mas(War Is Over)」にインスパイアされた、秦建日子さんの小説「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」(河出文庫)の実写化で、クリスマスイブの東京で爆破テロ事件が発生し、事件に巻き込まれていく登場人物たちの思惑を複数の視点で描いている。同作で、事件からさかのぼること26年前、カンボジアに派遣された自衛隊員を演じているのが、俳優の庄野崎謙さんだ。この自衛隊員は物語のカギを握る重要な人物で、役どころを聞いたときに「率直に震え上がりました」と明かす庄野崎さんに映画について語ってもらった。
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映画を観賞し、「壮大なスケールと臨場感に鳥肌が立つ感じがした」という庄野崎さん。「最初からすんなり作品の世界に入り込めてしまうというか、もう引きずり込まれるような思いで。出演している自分がそういうふうに見ることができるというのも、衝撃的でした」と振り返る。
同作では、連続爆破テロ事件の容疑者・朝比奈仁を演じる主演の佐藤浩市さんをはじめ、石田ゆり子さんや西島秀俊さん、中村倫也さん、広瀬アリスさん、井之脇海さん、勝地涼さんら豪華キャスト陣が、「SP」シリーズで知られる波多野監督のもとに集結した。
庄野崎さんは、さまざまな伏線や人と人との関係性といった「繊細な部分」も映画の魅力と考える。「爆破シーンであるとか、激しい部分だけじゃないヒューマンなところも楽しみにしていただけたら」とアピール。その上で「エンターテインメントではあるのですが、戦争とかテロとか、『起こりうるんだよ』ってことも感じさせる作品になっていると思います」と語る。
自身は役を通して、自衛隊員の本質にも少し触れることができたという。
「撮影現場でも、以前に自衛隊をやられていた方、そして現役の方からいろいろとレクチャーを受けたのですが、身のこなし一つ取っても、無駄のない動きをされていて、自分とは全然違うなって感じました。ほとんどが所作指導ではあったのですが、簡単にまねできる職業ではないことも理解できましたし、尊敬すると共に『自分はこんなんでいいのかな』とか考えさせられたというか……。それでも本番では、教えていただいたことや自分の目で見て感じたことを役に落とし込むことはできたのかなと思います」と手応えを明かした。
そんな庄野崎さん演じる自衛隊員は、実は佐藤さん演じる主人公・朝比奈の青年期という設定。庄野崎さんは「恐れ多いというのがありまして、率直に震え上がりました」と心境を吐露する。
「でも、台本を読んで、いろいろ自分の中に取り入れて、役を理解していくうちに、それがどんどん楽しみになっていきましたし、おこがましいのですが、佐藤さんのお芝居も研究させていただきました」と話す庄野崎さん。
「いろいろな作品を食い入るように見て、『こういうお芝居をされるんだ』とか、怒ったときの感情の出し方とか、たたずまいであるとか、気がつくと佐藤浩市さんを演じようとしている自分がいたというか……。そこで『いや、ちょっと待てよ』となり、僕が演じる人間は佐藤浩市さんではなくて、あくまで朝比奈仁の青年期なんだってことに立ち返ることができたのですが、そのくらい僕にとって佐藤浩市さんは大きな存在で、貴重な経験にもなりました」と振り返る。
“青年・朝比奈”が26年前のカンボジアで経験した衝撃的な出来事は作品を読み解く上で欠かせない要素となっている。一方で庄野崎さんが役作りで核にしたものは「家族」だったという。「朝比奈に家族がいること、そこがすごくポイントになったんじゃないかと思います。独り身だったら違う行動を取っていただろうし、家族がいたからこそ、選んだ道だったんじゃないのかな」とも推測。
続けて「そこに早く気づけたことが良かった」と話す庄野崎さんは、「だからこそ、僕が完成した映画を見させていただいたときに感じた『繊細な部分』。それは出られている方々のお芝居もそうですし、撮り方もそうですし、つなげ方とかもそうだと思うのですが、そういったものを一つ一つ大切にしている作品に関われたことは役者にとっては大きな喜びで、今もそう思います」と、最後は充実感をにじませていた。
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