ミュージカルを中心に活躍し、近年はテレビ朝日系の長寿ドラマ「科捜研の女」シリーズに登場する刑事・蒲原勇樹役で、その名をお茶の間に浸透させてきた俳優の石井一彰さん。5月21日には、東京・丸の内の瀟洒(しょうしゃ)なライブ・レストラン「COTTON CLUB(コットンクラブ)」で、3年ぶりとなるライブを開催することを発表した。「楽しみな気持ちもありますし、3年ぶりということで、少し緊張もあります」としつつ、「選曲はバラエティーに富んではいるのですが、会場の雰囲気に合わせて、声のキーを少し下げてみたり、男らしい、大人なステージにしたいなって思っています」と話す石井さんに、ライブに向けての今の思いなどを聞いた。
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3年前の2018年まで行ってきたライブは、「日々、僕のことを応援してくださって、舞台を見にきてくださる方々への感謝の気持ちを込めたライブでした」と振り返る石井さん。「以前はアットホームで温かい、ちょっとおふざけも入るようなコーナーもあったりしたのですが、今回はゲストを呼んで、トークもしっかりとやりたいですし、もちろん歌も。今回のライブはお客様に対しての感謝の気持ちも忘れませんが、さらにクオリティーを高めたいですし、新たな挑戦の場にしたいです」と力を込める。
さらに石井さんは、「今回3年ぶりのライブで、その間に『歌いたい』という気持ちはずっとありました。いつか披露するための準備はずっと続けてきたので、3年前と同じようなステージでは『この3年間、何をしていたのか』ってなるだろうし、『新しい石井一彰』と言ってしまうと、大げさに聞こえてしまうのですが、少しでも違った面を皆さんに見ていただければ」と思いを強める。
また「元々ミュージカルをやりたくて、この世界に入ってきたのですが、歌で“何かを伝える”ということが好き」という石井さんは、「舞台でも、一人でのアリアより、掛け合い、語りかける歌がすごく好きで、そういったときこそが、より、充実を感じる瞬間でもあるので。上手に歌えることはもちろん大切ですが、そこにプラスして、何かを歌で伝えたい、とは常に思っていて。ライブを見にきてくださる方には、歌をせりふのように聴いてもらいたいですし、そういった意味で歌は、自分の思いを伝えるツールでもあるのかなって思います」と考えを明かした。
ライブにはニュージカル界の先輩・戸井勝海さん、「科捜研」シリーズで共演する渡部秀さんがゲスト出演する。戸井さんとは、宮本亜門さん演出の「太平洋序曲」(2011年)で共演。「それよりも前に戸井さんのライブに出させていただいて。そのときに、戸井さんの何かを伝えようとする歌に感銘を受けて、尊敬するようになりました。その後の『太平洋序曲』では、舞台によって声を使い分ける、そのためのトレーニングであったり、ミュージカルに向き合う姿勢にとても刺激をもらいました。事務所の先輩でもありますし、今回は戸井さんとデュエットしたい曲があったので、お声がけさせていただきました」と話す。
一方、渡部さんは「渡部秀君は年が八つ離れていて、公私ともに仲のいい、可愛い弟みたいな存在」で、「今回、彼とはトークをするのですが、彼となら話が盛り上がるんじゃないかな」と笑顔で語った。
近年の石井さんの俳優業で欠かせないのが「科捜研」シリーズへの出演だ。また同作は映画化され、9月公開を予定している。
「自分の芸能生活で『科捜研』は、欠かせないものになっています。『石井一彰』という俳優を語る上で、『科捜研』なしには、という感じになっていますし、ドラマに出させていただいて、すごく大きな意味がありました」と振り返る。映画については「プロデューサーの方が『20年やってきて、今まで見てきてくださってきた方々への恩返しでもある』と言っていて。僕もそんな作品の一部になれることがうれしかったですし、話もドラマとはまた違った、骨太で現実的、テーマも深く、映画のダイナミックさとエンターテインメント性が加わった作品になっていると思います」とアピールした。
そのほかでは、特撮ドラマ「仮面ライダーセイバー」(テレビ朝日系、日曜午前9時)のスピンオフ「ソードオブロゴスサーガ」(5月12日発売の「仮面ライダーセイバー Blu-ray COLLECTION 1」収録)に、石井さんは先代“雷の剣士”新閃恭一郎役で出演。
「初めての特撮ということで、すごく新鮮だったのと、せりふ回しの部分は、自分の感覚ではミュージカルに近い感じもあって、すっと入っていくことができました。撮影はとても楽しかったです。あと、ミュージカルで共演していた知念里奈さんとも、何年かぶりに再会できましたし、僕らのことを知っているファンの方にとっては一つの見どころでもあるかなって思います」と話した。
俳優として作品や役の幅を広げる一方、コロナ禍で「仕事に対して今まで以上に誠実に向き合わなくてはいけないんだって思うようになりました」という石井さん。「年を重ねてきたっていうのもあるのですが、一つ一つをただ楽しんでいるだけではダメだなって、何かを生み出していかないと、意味がないものに終わってしまう、そういう意味で仕事に対してのこだわりが強くなってきたのかもしれません」と明かすと、今後に向け、「もっとこだわって、基本的なことではあるのですが、見え方や居方を、妥協せずに、少しでも上を目指すように頑張っていけたらと思っています」と前向きに語っていた。