結成25周年という節目を迎えた北海道発の人気演劇ユニット「TEAM NACS(チーム・ナックス)」の第17回公演「マスターピース~傑作を君に~」。コロナ禍に行われた本公演は、客席の状況を含め、これまでとは異なった様相を呈していたが「コロナのストレスを忘れるぐらい、最高に楽しい舞台を届けたい」という思いのもと、現在は札幌公演が開催中だ。同時に、さまざまな状況で会場に足を運べなかった人たちのために、NACS初となるストリーミング配信も行われる。そんなTEAM NACSの森崎博之さん、安田顕さん、戸次重幸さん、大泉洋さん、音尾琢真さんが、非常時に舞台を通じて届けたい思いを語った。
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「どうしてもいつもとは違う縛りがあることはやむを得ないですよね」と切り出した森崎さん。コロナ禍で日常が一変した中、エンターテインメント業界も大いなる変革を余儀なくされている。そんななか「我々の25周年というタイミングで、こうして全国を回らせてもらうなかで、エンターテインメントがしっかりと皆さんに寄り添い、わずかでも前に進む背中を押せる存在になればという思いで公演を行ってきました」と胸の内を明かす。
戸次さんも「舞台はお客さんと演者が一体となって作るものと言われていますが、まさにコロナ禍で、お客さまには分散入退場にマスクの使用など、いつもにも増して舞台成立のための協力をいただきました」と公演を振り返ると、「緊急事態宣言が発出され、本当に公演が行えるのか……という不安がありましたが、お客さまも我々と同じレベルで不安を持っていたと思うんです。でも逆に言うと、そうした不安を共有できたことで、コロナ前では抱けなかったような一体感を得ることができました」と逆境をプラスに感じることができた公演だっだと語る。
チケットは購入したものの、当日なんらかの都合で観劇ができないという状況もあるし、どんなに感染対策を講じてあっても、不安から自粛するファンもいる。「日本でもっともチケットを取りにくい劇団」と言われることもあるTEAM NACSだが、本公演では、チケットが完売しているにもかかわらず空席があった。それでも森崎さんは「舞台から見ていても、その空席ですらお客さんの魂を感じることができました」とファンをおもんぱかる。まさに「ファンのために」を表すような発言だ。
そんな人たちのために、TEAM NACS初となる特典映像付きストリーミング配信も期間限定で行うことになった。大泉さんは「コロナ禍だからこそ生まれた観劇の仕方ですよね」と語ると、「もちろん生で見ていただきたいという思いはありますが、たくさんのカメラで撮っているため、普段劇場で見る視点とは違った楽しみ方、例えばそれぞれの顔の表情などを見ていただけるのかなと。特典映像も、僕らはかなり頑張ってしまうたちなので、十分楽しめると思います」と期待をあおる。
安田さんは「普段舞台と言えば一度きりのものなのですが、アーカイブもあり、配信期間中は何度でも楽しめるので新しい発見もあるかもしれません」と述べると、音尾さんも「劇場では空間を共有できますが、ストリーミングでは、より多くのファンの方々と、場所は違っても時間を共有できるというのは魅力的ですね」と笑顔を見せた。
TEAM NACS結成25周年記念公演となった「マスターピース~傑作を君に~」。日本が混沌(こんとん)の急坂を駆け上がろうとしていた昭和27年を舞台に、新作映画脚本執筆のために真冬の熱海の温泉宿に集まったシナリオライターたち。まだ見ぬ傑作「マスターピース」を目指し、泊まり込みで原稿と向き合う5人のペン侍たちの奮闘を描く。
それぞれのメンバーにとって「マスターピースとは」と問いかけると、「演劇をやる意味はいくつかありますが、そのうちの一つ。傑作を作りたいという思いはあります」(森崎さん)、「評価は世間さまが決めることなので、僕にとってはベストを尽くすことと同義」(安田さん)、「僕にとっては2回以上見たくなるような作品」(戸次さん)、「実際あるのかどうか……ドラゴンやユニコーンのような、この世に存在しないものなのかも。でもそれを求めて演劇を続けるというものでもあります」(大泉さん)、「生の舞台は一度きりの面白さなので、非常に難しいものですね」(音尾さん)とさまざまな回答が寄せられた。
ファンが長らく待ち望んだ約3年ぶりの公演「マスターピース~傑作を君に~」。5人の圧倒的なパワーが、閉塞感漂う今の世の中に大きな風穴を開ける作品となっている。
森崎さんは「とにかくテンション高く5人がせりふを上塗りしていくシーンの空気感がたまらなかった」と振り返ると、音尾さんは「舞台劇が始まって早々、私が一人で口上のようにしゃべっているシーンがあるのですが、そこはぜひ注目してほしいです」とアピール。
大泉さんは「ネタバレできないので、詳細は言えませんが、正直言えないシーンが一番面白い(笑い)。それだけは自信を持って言えるので、どうかこの言葉を信じてほしいです。ドリフ的なシーンもあって、昭和を知っている人も楽しんでもらえると思います」と力強く語っていた。(取材・文:磯部正和)
配信日:6月6日(午後1時オープン)
特典映像:午後1時25分ごろから配信開始
公演本編:午後2時ごろから配信開始
チケット料金:4000円
※別途、視聴サービスごとに異なる手数料がかかります。