少女マンガ誌「りぼん」(集英社)で連載中の村田真優さんの同名マンガを実写化した、高校生の爽やかな青春ラブストーリーを描く映画「ハニーレモンソーダ」(神徳幸治監督、7月9日公開)。本作で、内気な自分を変えようと奮闘するヒロイン・石森羽花を演じたのが、女優の吉川愛さんだ。今回、“王道ヒロイン”に初挑戦した吉川さんは「自分とは真逆で、私にできるかなという不安がとにかく大きかった」と明かす。“目つき”にこだわったという役作りや、神徳監督からの学びをはじめ、自身の考え方を大きく変えた言葉について語ってもらった。
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「ハニーレモンソーダ」は、中学時代に「石」と呼ばれていじめられていた石森羽花と、みんなの人気者で自由奔放、レモン色の髪がトレードマークの三浦界(ラウールさん)が繰り広げる恋物語。
もともと原作を読んでいたという吉川さん。羽花を演じられることに喜びを感じつつも、当初は不安があったと明かす。「私は羽花ちゃんみたいに静かなタイプではないし、あまり泣くこともないんです。真逆すぎて、自分にできるのかなという不安がとにかく大きかったですね」と吐露。「でも、自分が原作を読んで思い描く羽花ちゃんと違ってしまわないように、少しでも近づけるよう頑張ろうと思いました」と作品に臨んだ。
演じる上では「いじめられた過去があるという点が羽花ちゃんにとってのキーワードだと思ったので、その時にどんな気持ちだったんだろう、と考えるところからスタートしました」と振り返る。「原作を読んで感じたのは、いじめられたくて学校に行っているわけじゃないのにという思いと、人に見られていること自体がつらいだろうなと。その心情は映画に反映させたいと思いました」と、丁寧に役をひもといた。
そして、中でも一番大事にしていたのが「自分を石だと思っていること」。「やっぱり羽花ちゃんにとって絶対に欠かせない要素なので、界くんと楽しそうにしているときも、頭の片隅にはその思いがあるというか。常にそれを忘れないように意識していました」と教えてくれた。
吉川さんといえば、ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(TBS系)の“エトミカ”こと江藤美香、「恋はつづくよどこまでも」(同)の酒井結華など、ハッキリした性格や気の強いキャラクターを演じることも多かった。今回、少女マンガが原作の“王道ヒロイン”を演じることになり、「これまではクールだったり、サバサバした感じの役が多かったので、何から始めればいいのかも分からなくて……」と、“未開拓”の役にも不安を感じていたようだ。
そんな吉川さんは、そもそも"王道ヒロイン”についてどのような印象を持っていたのだろうか。「女の子らしくて少し内気で、最初は少し弱い部分があるけど、どんどん強くなっていくイメージ。羽花ちゃんは私が思い描いていたヒロイン像にピッタリ当てはまる役柄でした」と話す。
ヒロイン役は“感情移入のしやすさ”もポイントの一つだが、そのために吉川さんは、あることに気をつけていたという。「私は目つきがきつめなので、怒ったり、にらんだりしているように見えるときがあって。羽花ちゃんを演じるときにはきつく見えないように、視線の動かし方や目力の強さを意識して変えるようにしました」と明かす。
また、神徳監督ともこだわった点がある。それは羽花が自分を石だと思っているときに出てしまう仕草だ。「監督から羽花の考えを分かりやすく画(え)で見せたいという提案があって。私がどんな仕草がいいか悩んでいたときに、無意識に手をぐっと握っていたようで、それを取り入れることになりました。監督は私の仕草を見て『人は不安なとき、何かにつかみたくなると感じた』とおっしゃっていました」と裏側を語った。
吉川さんは、そのときの監督の演出がとても心に残っているといい、「映画を通して伝わったらうれしいですし、今後、別の現場でも生かしてきたいと思いました」と胸に刻む。初めて挑んだ“王道ヒロイン”役だが、「演じられてすごく楽しかったし、いい経験になりました」と充実感をにじませる。
女優としての新境地となった今作。吉川さんにとっては、学園生活を“疑似体験”する機会でもあったという。「私の通っていた高校は制服がなかったんです。今回こうして、制服姿でみんなでお弁当を食べたり、海に遊びにいったり、カフェで勉強したり……高校生活を体験して『こんな感じなんだ』『こういう感情になるんだ』と知ることができました」とかみしめる。21歳になり、「最近、町で学生を見て可愛いなと思うようになって。もうそんな年齢になったんだな(笑い)」と、おちゃめな一面ものぞかせていた。
「ハニーレモンソーダ」で“王道ヒロイン”という新たな引き出しを手に入れた吉川さん。これからも役の一つ一つに丁寧に向き合い、演技の幅をさらに広げていくだろう吉川さんから目が離せない。
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