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俳優の生田斗真さんが新作歌舞伎に挑む姿を追った「Netflixドキュメンタリー『生田斗真 挑む』」が、6月16日から動画配信サービス「Netflix」で世界に配信される。生田さんといえば、「歌って踊る」イメージの強いジャニーズタレントでありながら、役者として活動していく道を切り開いた“開拓者”の一人とも言えるだろう。そんな生田さんだが、「自分の居場所がないと思ってた」と葛藤した過去があったという。芝居の世界に飛び込んだきっかけから、現在も“俳優道”を進み続ける思いを聞いた。
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生田さんが今回挑戦したのは新作歌舞伎「赤胴鈴之助」。歌舞伎俳優の尾上松也さんの自主公演完結作で、昨年8月に本多劇場(東京都世田谷区)で上演された。生田さんと松也さんは高校の同級生で、学生時代に2人で交わした「いつか一緒に同じ歌舞伎の舞台に」という約束を実現させた。
当時から、松也さんや先輩の中村七之助さんの影響を受け、歌舞伎を身近に感じていたという生田さん。20代からは自ら興味を持ち、日本舞踊の稽古(けいこ)もしてきたが、「自分が歌舞伎の舞台に立つなんて思ってもみなかった」と話す。松也さんとの約束も「学生時代の青春の1ページというか、『いつかやろうよ』『いいね』みたいな、本当にちょっとした会話だったので」と明かす。
「今回、松也君から声をかけてもらって、教室の片隅で話したこととか、いろいろと思い出しましたね。熱くなるものがありました」としみじみ。「舞台が実現しただけではなく、こうしてドキュメンタリーまで撮っていただいて、世界に配信されて……当時からは想像もつかないくらい大きくなって、何だか変な感じです(笑い)」と語った。
生田さんは本作で歌舞伎に初挑戦。約1カ月半の稽古を経て本番に臨んだ。「台本を作りながらだったり、普段僕がやっている演劇の稽古とは進め方が全然違ったので、初めはかなり戸惑いました」と吐露する。
「でも、松也君をはじめとする共演者やスタッフの方が、僕のサポートを全部してくださったんですよ。皆さんが本当に優しくて、温室で育てられているかのような。すごく助けられました」
一方で、高校の同級生である2人が歌舞伎に挑むことは、ともすれば“仲良しごっこ”にも見えてしまうと感じていた。「それでも僕らはその選択をした。あえて自分たちを追い込んでいったというか。うまくいかなければ、松也君だけでなく、歌舞伎界にも迷惑がかかる。いろいろなものを背負いながらやっていました」と覚悟をうかがわせた。
本作を経験したことで、生田さんは「理屈じゃない高揚感」を覚えたといい、「三味線や和太鼓の音、踏み出した足の感覚、お客さんの拍手が混ざったときに、『これが最高のやつじゃん!』って。自分の血に流れている、日本の文化へのなじみというか、フィット感みたいなものがありました」と手応えを得た。
生田さんといえば、舞台、映画、ドラマとジャンルにとらわれず活躍し、「歌って踊る」イメージのジャニーズの中で、俳優としての独自のポジションを確立している。親の勧めで11歳で事務所に入った生田さんは、「最初は仕事という意識もなかったし、自分で選んだ道じゃないとも思っていました。ただなんとなく日々が楽しくて、続けていた感じですね」と振り返る。
しかし、高校に進むと環境が一変。ジャニーズJr.として同じ土俵で活動していたメンバーがデビューするなど、周囲が“売れていく”姿を目の当たりにした。そうした中で、今度は進路について考える時期になり「大学に行くのか、この仕事を続けるのか、辞めて就職するのか。選択肢が出てきて初めてちゃんとしなきゃと思いました」と打ち明けた。
そして、出会ったのが演劇だった。
「当時の僕には“演劇人”がとてもかっこよく見えたんです。仲間と日々ステージに立って、お客さんたちに『楽しかった』『明日も頑張ろう』と思ってもらう、その姿に憧れを持つようになりました」
事務所には舞台作品への意欲を示し、「どんなジャンル、劇場があって、どんな役者がいて、自分にとって何が合うのか。全く分からなかったので、とにかくいろいろな舞台を見に行きました」と、まずは演劇を知るところから始めたという。
努力のかいもあり、役者としての道を進むことに成功した生田さん。しかし、当時のジャニーズでは俳優業のみでの活動は異例。葛藤や苦悩もあったという。
「自分の居場所がないと思っていましたね。ジャニーズにいても『俳優だけ』と言われて、芝居の現場にいても『ジャニーズの人だよね』と言われて。自分はどこの誰なんだろうって」
だがあるとき、「いっそ『自分はどこにもカテゴライズできない存在なんだ!』とポジティブに考えるようになったんですよね」と気持ちに変化が。「せっかく誰もやっていないことをやっているのに、なんでどこかに属そうとしてるんだろう、そっちのほうがかっこいいじゃんって」と、自身の強みとして受け入れた。
現在も俳優として第一線で活躍し続ける生田さんだが、実は「『主演をやりたい』『賞をとりたい』と思ったことってあまりないんですよね」と明かす。
「明確に到達地点を決めて、そこに向かって地図を描いていくよりも、行く先々で面白そうだと感じるほうに歩を進めてきた。その結果、今の自分があって、出会ってきた仲間がいると思っています」
その上で「すごく感覚的に人生の選択をしてきましたが、だからこそ計算できない、想像では描ききれない地図が勝手にできていく。それがモチベーションかもしれません」と語った生田さん。「毎日バカなことをして笑って、でも人々を幸せにして過ごしたい」――“演劇人”に憧れたあの日から、変わらぬ思いのままの生田さんの姿があった。
2024年11月15日 21:00時点
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