歌舞伎俳優の尾上菊之助さんが11月29日、東京都内で行われた「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」の製作発表会見に登場。今作でティーダ役を演じ、企画・演出も担当する菊之助さんは、「製作が始まったのは2020年3月、コロナ禍の真っ最中。先行きが見えない中、何とかしたいという気持ちをすくい上げてくれたのが『ファイナルファンタジーX』でした」と切り出し、「私自身も『ファイナルファンタジーX』に救われたように、コロナ禍で大変な日本、エンターテインメントの世界に少しでも元気を届けられれば」と本作製作に込めた思いを語った。
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「ファイナルファンタジーX」は、2001年7月19日にPS2向けに発売されたRPGで、架空の球技「ブリッツボール」の選手で異世界スピラに召喚された少年ティーダと、召喚士の少女ユウナが魔物「シン」を倒すため冒険の旅に出るというストーリー。シリーズ初採用となったキャラクターボイスや状況に応じて表情が変化するフェイシャルアニメーションでキャラクターが感情豊かに描かれた切ないストーリーが支持され、全世界累計2110万本以上を売り上げた。後に多くのハードでリマスター版が制作された。
記者会見には、アーロン役の中村獅童さん、シーモア役の尾上松也さん、キマリ役の坂東彦三郎さん、ルールー役の中村梅枝さん、ユウナ役の中村米吉さん、ワッカ役の中村橋之助さん、リュック役の上村吉太朗さん、スクウェア・エニックスの北瀬佳範プロデューサーも出席した。
新作歌舞伎製作の経緯について、菊之助さんはステイホーム期間中に10年ぶりにゲーム機を購入し、再び「ファイナルファンタジーX」をプレーしたことをきっかけに、「2001年にプレーした際、ゲームではなくて映画を見ているような感覚になりました。キャラクターの感情に移入してキャラクター目線でプレーして感動し、ずっと心に残っていた。次なる新作歌舞伎をまた作りたいなと思っていた矢先に『ファイナルファンタジーX』に巡り合い、これはコロナ禍の状況、そして戦争が起きている悲しい状況の中できっと力強いメッセージになるのではないかと思い、スクウェア・エニックスさんにビデオレターで企画書をお送りしました」と構想のきっかけを明かした。
北瀬プロデューサーは、「ビデオレターはYouTubeにアップされたものだったので、非常にびっくりした。そういうかたちでのオファーは初めてだった」と驚きつつ、「(菊之助さんが)ゲームをプレーしてテーマやストーリー、キャラクターをしっかり理解された上でこういう形で表現されたいということをお話しされたので、『ファイナルファンタジー』というタイトルを預けるにはまったく不安のない心配のないお方だなと思った。非常に野心的で面白そうな企画だと思い、即決してお返事したことを覚えています」と菊之助さんへの信頼を明かした。
菊之助さんは公演に向けて、「ファイナルファンタジーXには見どころがたくさんありまして、名言もたくさんあります。例えば『マカラーニャの森』は、ティーダとユウナが初めて心を通わせるシーンで、水の中で2人が淡い恋心を通わせるのを原作ファンの皆さんはどう表現するか期待されていると思います。(劇場には)8メートルの巨大スクリーンがありますから映像を使いつつ、今回は水を使わないで表現できないか探して、そこにたどり着いているところであります。ご期待していただければ」と呼びかけた。
公演は、360度のステージで知られるIHIステージアラウンド東京(東京都江東区)で2023年3月4日から4月12日まで上演。