二宮和也さん主演の映画「ラーゲリより愛を込めて」(瀬々敬久監督)に出演する山時聡真さん。演じているのは、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に不当に抑留されながらも、生きる希望を唱え続けた主人公・山本幡男(二宮さん)を慕う青年・後藤実で、視聴者にシベリア抑留の過酷さ、悲しさを伝える抑留者の一人だ。現在17歳で、奇(く)しくも、もう一つの出演映画「散歩時間 ~その日を待ちながら~」(戸田彬弘監督)が同日に公開(12月9日)されるなど、順調に作品を重ねる期待の若手実力派に話を聞いた。
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山時さんは2005年6月6日生まれの17歳。2019年の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」で、主人公の一人、田畑政治(阿部サダヲさん)の子供時代を演じ、同年の「少年寅次郎」、2020年の連続テレビ小説(朝ドラ)「エール」といったNHK作品に出演。特に「エール」では、悲しすぎる最期を迎えた“ハーモニカ少年の弘哉くん”として視聴者に強い印象を残した。
「ラーゲリより愛を込めて」でも、劇中でハーモニカを吹くシーンが登場。これはまったくの偶然だったというが、背景にある戦争の悲惨さを含めて、重ねて見てしまう人もいるのではないだろうか。
「エール」の弘哉少年と「ラーゲリより愛を込めて」の実青年。共に大切なキーアイテムとなったハーモニカ。
「『エール』の経験が映画に生かされた、というわけではないのですが、本当に重なるところはありました。歴史館みたいなところに抑留者の方が大切に持ち帰ってきたものや遺品が展示されていたりするじゃないですか。実にとってのハーモニカも、そういったものだったのかなって思ったりもしました」
現在高校2年生で、学校の授業などを通して「シベリア抑留」について、ある程度どういうものかは知っていたという山時さんは、撮影を前に、自分から進んで調べてみたりもした。
「ここまでひどい状況だったんだと改めて悲しさを感じました。そして撮影を通して身にしみて分かったこともありました」
“身にしみて分かったこと”に肉体労働の大変さを挙げる。
「(撮影では)丸太運びも妥協なくやっていて、本当に重たかったです。4~6人で運ぶのですが、歩調を合わせないといけないし、身長も合っていないと傾いてしまうので、それもまた大変でした。撮影の前に練習をしたのですが、その日から筋肉痛でした。そして木を伐採するシーンの日は、腕がもうパンパン。こんなにもきついことなんだなって、肉体労働が一番大変でした」
シベリアの極寒とまではいかないものの、寒さの中での撮影は過酷だったようで……。
「気温は多分、マイナス2~3度くらいだったと思います。吹雪の中のシーンが一回あり顔に雪を当てるのが、痛かったのですが、こんな状況の中での撮影はなかなか経験できないことだと思うので、貴重な経験ができました!」
「本物はもっと過酷」なんてことを忘れるくらい、真に迫った演技を見せているキャスト陣たち。その一人である山時さんは「一人一人の思いが山本さんの方を向くシーン」を絶対に見てほしいと訴える。
「みんな(山本と時間を共にした抑留者たち)それぞれ考えが変わっていくのですが、みんなが一気に変わるところもあれば、一人一人ってところもあって。山本さんのどういうところに胸を打たれたのかを考えながら、各キャラクターを見ていってほしいなっていうのはあります。地位や置かれている状況、価値観、人の見方、それぞれが違うのに最終的に山本さんと同じ方向を向くってことは、山本さんはすごい人だったんだなってことにつながるので」と思いを語った。
今年は「死刑にいたる病」「流浪の月」「ラーゲリより愛を込めて」、そして「散歩時間 ~その日を待ちながら~」と4作の出演映画が公開。さらには「カロリーメイト」(大塚製薬)の新CMにも起用され、話題の山時さんはここからさらなるステップアップを夢見る。
「事務所の先輩方がすごい俳優さんばかりなので、その背中を見て、自分もそうなれたらなって思っています。今後はもっと、自分が主体となって、作品を通して、いろいろなことを伝えられるようになりたいですし、あとは日本アカデミー賞であるとか、“形に残せる俳優”にもなりたいです。見てくれる人を感動させたいっていうのはもちろん、形として残して、『この作品でこういうことをしました』と言えるように頑張っていけたらなって思っています」
事務所の先輩の“すごい俳優”には「ラーゲリより愛を込めて」で共演した松坂桃李さん、昨年公開の映画「CUBE 一度入ったら、最後」で兄弟役を演じた菅田将暉さんらがいる。松坂さんも菅田さんも、キャリアの初期に「ニチアサ」と呼ばれる特撮作品(スーパー戦隊、仮面ライダー)で俳優としての腕を磨いた経験を持つが、山時さんも「『半沢直樹』や『3年A組』のような、ものすごく話題になるドラマに出てみたいと思うのと同時に、戦隊や仮面ライダーにも挑戦してみたいなっていうのもあって」と告白する。
「以前、菅田さんが『1年かけて作る作品は本当に得るものがあるよ』とおっしゃっていて。それこそ菅田さんが出演されていた『仮面ライダーW』の放送当時、僕は6歳くらいで。いま同じ事務所にいるって、改めて考えるとすごいことだと思うのですが。そういう先輩方が、今の僕と同じくらいの年齢で経験してきたことを、自分もやってみたいなっていうのはあります」と理由を明かした。
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