名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
モンキー・パンチさんのマンガが原作の人気アニメ「ルパン三世」の主人公・ルパン三世の少年時代を描く新作アニメ「LUPIN ZERO」がDMM.comの新たな映像配信サービス「DMM TV」で12月16日から配信されている。誰もが知る大泥棒・ルパン三世の「誰も知らない『はじまり』の物語」になるといい、原作の連載が始まった昭和30年代(1960年代)の高度経済成長期の日本を舞台に、少年ルパンが活躍する姿を描く。オリジナルストーリー、全6話でルパンと次元の出会いも描かれる。テレビアニメ「ルパン三世 PART5」でも副監督を務めた酒向大輔監督、「ルパン三世 PART5」「機動戦士ガンダム 水星の魔女」などで知られるシリーズ構成の大河内一楼さんに、少年時代のルパンを描いた理由、
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酒向監督 ルパンの子供の頃を描くという企画が大前提にあり、何歳にするのか?は僕らで決めていきました。僕としては、作品を見てもらいたい人の想定年齢が中学生、小学生だったんです。もちろん老若男女に見てもらいたいのですが、初めて「ルパン」を見る人、タイトルは知ってるけど見たことがない人に向けて作ろうとしました。そうなると、親近感が湧き、共感を得られそうな年齢が中学生くらいになります。
酒向監督 13歳のルパンがどういう気持ちなのか? 家業として泥棒を継ぐ、おじいちゃん、お父さんから継ぎなさい!と言われて継ぐのか? 言われたからやるわけじゃないと思うんですよね。人に言われたことをそのままやるのはイヤでしょうし、その感情を言葉でうまく説明できない。大人は「自由権の侵害だ!」とか言えますけどね。そういう年ごろの男の子がルパン三世になっていく……というストーリーを考えました。「自分のことは自分で決める」というのが今回のテーマで、ルパンが少しずつ成長していきます。
大河内さん 少年ルパンが初めてルパン三世になって、最初に盗むものは何だろうか?と考えたんです。宝石や絵画などの誰から見ても高価なものではなく、少年ルパンにとっての宝物がいい。それを人間関係を含めて書こうとしました。そのためには相棒がいる。それは、不二子、五ェ門でもなくて、次元がいい。「PART5」の第23話で次元に「先にルパンに会ったのは自分である」と言わせていることもあり、そこをちゃんと書けたらいいなと考えたんです。
大河内さん 次元はもちろん好きだったんですけど、「PART5」を書いた後は好きの度合いが違いましたね。書いた脚本に満足感があるというだけでなく、小林さん(次元役の故・小林清志さん)の演技が素晴らしくて、そこを含めて傑作なんです。
酒向監督 小林さんがどんどん乗っていくんですよね。
大河内さん あれは小林さんしか言えないせりふでした。結果的に小林さんと組める最後の機会でしたし、自分の中で次元は“永遠”になった気がします。だから、「PART5」の後の次元を書くとなると困ったけど、それ以前の話だから書けたというのもあります。
酒向監督 ただ「LUPIN ZERO」は「PART5」のルパンたちが若返った話なのかというと、それは分からない。「PART5」であった出来事、「PART4」「PART6」の出来事を、皆さんは傍観者として見ているじゃないですか。出来事は、もしかしたら事実かもしれないですが、今回はその事実から想像したものを作ったつもりです。事実をタイムマシンでさかのぼって記録したものではなくて、今残ってるいろんなものを考古学的に調べて、きっとこうだったんじゃないのかな?と作ったのが「LUPIN ZERO」なんです。
酒向監督 ルックや音楽を総取っ換えしても新しいと思うんですけど、主人公の2人が変わるだけで相当新しくなります。いろいろな選択肢があったんですけど、今回は「ルパン三世」の入門編として、シリーズへの橋渡しになることを考えました。「ルパン三世」であるという印象を残したかったんです。新しくキャラクターを作る時、少年時代のルパンは元ネタがありましたし、学ランを着ている印象がありました。次元は創作なんです。キャラクターデザインの田口さん(田口麻美さん)に丸投げしたんです。すると誰が見ても次元!というものがあがってきたんです。デザインを見て、これいけるな!と思いました。新しい主人公のルパンが作れるじゃないか!という一つのポイントになりました。田口さんの絵は本当にいいんですよ。一つ安心できた。
酒向監督 旧ルパン(ルパン三世 PART1)の曲が使えることになり、うまく運びました。余計な引っ掛かりをなくして。全く新しい2人に集中してもらえる。2人の話ではなく、一族の話、昭和をもっとフィーチャーして実際の事件を取り上げることなどもできたと思うんですけど、結果として2人の話にしてよかったです。さらにいけるぞ!となったポイントは、ルパン役の畠中祐さん、次元役の武内駿輔さんにキャストが決まったことです。初めてルパンと次元を演じる2人が、相棒ではないところから始まって、どんどん相棒になっていきます。そういうお芝居になっているんです。畠中さん、武内さんのお芝居のキャッチボールをいっぱい見られます。ルパンと次元の話にしなかったら、それが減ってしまうわけですし。音響制作の丹下雄二さんに、2人で一緒に収録できるようにセッティングしていただいたことも大きかったです。
酒向監督 面白ければ、大丈夫だと思ってます。少年時代のルパンを描くためにあの時代である必要がありました、旧ルパンの時代からさかのぼると、この時代になる。時代を見せたいわけじゃないんですよ。ルパンと次元を見てほしくて作っているので。面白ければ、どの時代が舞台でも楽しんでいただけると思っています。
大河内さん 若い人ってこういうの好きなんでしょ!とか、これが流行しているらしい……というのはうまくいかないと僕は思っているんです。大体、自分が若くもないのに、若い人の気持ちを分かったふうに書けるわけがない。それよりは、老若男女、大きなレンジで誰にでも分かるエンタメとして書けば、結果的に若い人も見られる作品になるだろう。そう考えています。だから、子供が親に逆らったり、年上の女性に憧れたり、友達と仲よくなりたいなど、そういう普遍的なことを書いたつもりです。そういう気持ちは今も変わらないし、なんなら江戸時代、ピラミッドを作っている時代もそうだったと思うんです。
酒向監督 50年もやっているから、みんな「ルパン三世」を知ってるんですけど、空気のありがたさに気付いていないように、気付いていないこともあると思います。「ルパン三世」を再発見できるようにしたかった。「ルパン三世」は、ものすごいキャッチーなんですよ。「ルパン三世」は世界一面白いアニメなんです。
大河内さん ブランドがあるから勝負できることもあります。オリジナル作品だと、もっとキャッチーに、もっととがって……となるかもしれないけど、「ルパン三世」はそういう要求も制限もほとんどないですし。
酒向監督 もっとやってくれ!とお願いすることはあるんですけど。「LUPIN ZERO」でルパンはたばこを吸いますが、ルパンだったら目の前にあれば、吸うはず。車もあれば、運転する。いいか悪いかは、自分で決めていますから。びっくりするのは我々で、本人は別にびっくりしない。
酒向監督 僕は元々、「ルパン三世」が作りたくてアニメ業界に入ったんです。
大河内さん 酒向さん、どうしてそこまで好きなのかを読んでいる人に向けて説明してくださいよ。
酒向監督 最初に映像作品で何回も見たいと思ったのが「ルパン三世」なんです。「カリオストロの城」だったんですけど。
大河内さん リアルタイムは赤ジャケ(ルパン三世 PART2)ですか?
酒向監督 再放送で赤ジャケ、緑ジャケ(ルパン三世 PART1)を見ていました。「ルパン三世」のことをずっと考えていて、「ルパン三世」と同じコンセプトのものは、世界中のどこにもないんですよね。「ルパン三世」は「ルパン三世」しかないんです。「ルパン三世」みたいなものは作れるけど、「ルパン三世」は作れない。こんなに面白い設定でオリジナリティーのある作品はほかにありません。ただ、これは説明する時に分かりやすくするための屁理屈なんです。ただただ好きなんです。アニメとしてよくできている。アニメーションの快楽があり、キャラクターが刷り込まれています。
大河内さん 宮崎駿さんが好きなんですか?
酒向監督 それは大人になってから気付くことなんです。でも「カリオストロ」の次に「死の翼アルバトロス」を見てしまった(笑い)。
大河内さん やっぱり宮崎駿さんじゃないですか(笑い)。
酒向監督 当時、レンタルビデオ店に「カリオストロ」の横に「さらば愛しきルパンよ」「アルバトロス」があったんです。それを見たんです。「ルパン三世」が好きになって、アニメが好きなり、アニメの作り方を知りました。エンディングのクレジットの意味を知って、作る人によって変わるんだ……と気付く。アニメを見るその解像度が上がり、作監、演出を意識するようになったんです。
「LUPIN ZERO」には、酒向監督、大河内さんらスタッフの熱い思いが込められている。「ルパン三世」の魅力を再発見できるはずだ。
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2024年12月23日 00:00時点
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