ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
マンガ「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」の赤坂アカさん、「クズの本懐」などの横槍メンゴさんの豪華タッグによる人気マンガが原作のテレビアニメ「【推しの子】」。4月に放送をスタートし、最新話が放送される度に関連ワードがツイッターのトレンドを席巻するなど人気を集めている。第1話は約90分というボリュームで放送されたことも大きな話題になった。アニメを手掛けたKADOKAWAの吉岡拓也プロデューサー、山下愼平プロデューサーにヒットの裏側を聞いた。
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「【推しの子】」は、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で2020年4月に連載をスタートしたマンガ。人気マンガ家の赤坂さんと横槍さんがタッグを組み、新たな切り口で芸能界を描き、連載当初から話題になった。地方都市で産婦人科医として働くゴローの前に、ゴローの“推し”のアイドル・アイが現れるところからストーリーは始まる。序盤はアイの妊娠、出産、そして非業の死という激動の人生が描かれ、その後は、アイがのこした双子の兄妹、アクアとルビーの物語が展開する。
「【推しの子】」は、アイドルとして表舞台に立つアイら出役(でやく)側の心情が丁寧に描かれているだけでなく、ドラマ、番組を制作する裏方、裏事情もリアルに表現されている。吉岡さんは、2020年7月に発売された原作コミックス第1巻を読み、「【推しの子】」の「リアルなお仕事もの」としての側面に魅了され、「これは絶対に映像化をしたい」とアニメ化を企画した。
「【推しの子】は、業界全体の作り手のいろいろな思いや、みんながどんなことをして作品を作っているのかというところが、うまくエンタメになりつつも、リアルに描かれています。そこにすごくひかれましたし、共感する部分もありました。それに、ものづくりを仕事にしている人だけではなく、YouTubeやTikTokなどのSNSを通じて自分を表現する場が多くあり、誰もがクリエーターになり得る今の時代において、【推しの子】で描かれているキャラクターの心情には誰しもどこか引っかかるところがあるのではないか?と。仕事でも趣味でも、自分にとって大切なものに一生懸命取り組む多くの人々が共感できる作品になるという確信がありました」
アニメは、「私に天使が舞い降りた!」などの平牧大輔さんが監督を務め、「彼女、お借りします」などの平山寛菜さんがキャラクターデザインを担当。「ちいかわ」「私に天使が舞い降りた!」などの動画工房が制作する。
これまで「私に天使が舞い降りた!」など動画工房の作品を担当してきた山下さんは、動画工房と打ち合わせをしている際に「【推しの子】」を知った。
「『次の作品はどうでしょうか?』という話をしていた中で、キャラクターデザインの平山寛菜さんが『これが大好き。絶対やりたい』と挙げたのが【推しの子】だったんです。第1巻を読んで、最初は『若者向きかな?』と思ったのですが、旧世代のオタクである僕にもかなり刺さりまして。そう思った時に『この作品は全世代に刺さる』と感じました」
アニメ「【推しの子】」の第1話は、アイの衝撃の死までを描いたコミックス第1巻を長尺の約90分で丸ごとアニメ化し、テレビ放送に先駆け3月に劇場で先行上映された。30分アニメのオープニング、エンディングなどを除いた約4話分の長さに相当し、「長すぎる」と感じる人もいるかもしれない。SNSなどの反応を見ると「長すぎる」という反応は少なく、むしろ「アニメ史上最高の第1話」と称賛されるほどだった。
吉岡さん、山下さんがアニメ化を企画した際、最初から「第1巻を丸々アニメ化しよう」と決めていたという。
吉岡さんが「『第1巻を絶対に割りたくない』というのが、山下さんとの最初の会話でした。第1巻は、一つの映像体験でないとアニメ化する意味がない」と話すように、「第1話90分」は必然だった。第1話の劇場での先行上映も視野に入れた上でアニメ化を進行していたが、異例の試みに不安がなかったわけではない。
山下さんは「第1話90分は、僕らの中では決まっていたんですけど、では実現できるか?というと、作る人がいないとできない。そこで動画工房さんに相談したら、『すごくいいですね』と言ってくれたんです。制作する側としてはどう考えても大変なんです。普通であれば『それはやりたくない』と断られる。それでも動画工房さんは『大変なのは分かっていますが、それがこの作品にとっていいと思う』と言ってくれたので、安心して提案できました」と明かす。
スタッフの作品愛と情熱で実現した第1話は「アニメ史上最高の第1話」として多くの人に衝撃を与えることになった。
吉岡さんらスタッフは「今クールで一番」を目指し、プロモーションにも力を入れていたが、反響は「想像以上だった」という。3月の第1話先行上映は、第2週辺りから評判がSNS、口コミで広がり、コアファン以外の普段はアニメを見ない層も劇場に足を運ぶなどヒットの波が起こり始めた。放送前から話題にはなっていたが、第1話の放送によって「雪崩が起きた」という。
第1話が放送されると、動画工房による圧倒的なクオリティーの映像が話題になった。原作の横槍さんの繊細なタッチを再現した。山下さんは、アニメを手がける平牧監督、助監督の猫富ちゃおさん、動画工房について「細部へのこだわりがすごい」と語る。
「【推しの子】を激推ししたキャラクターデザインの平山さんをはじめ、制作スタッフには原作のファンも多く、キャラクターの髪の色や、各シーンの色味など【推しの子】に合う色、【推しの子】に合う処理を日々模索し、これまでやったことがないことをやろうと新たな表現に挑戦しています。第1話は動画工房史上最高のクオリティーです。僕は映像を100回ぐらいチェックするのですが、何回見ても号泣してしまって」
第1話では、動画工房による圧倒的なクオリティーの映像だけでなく、音楽ユニット「YOASOBI」が手掛けるオープニング(OP)主題歌「アイドル」も話題になった。同曲は、4月にデジタルシングルがリリースされ、約2カ月で各サブスクリプションサービスのストリーミング再生数が2億回を突破。動画工房によるミュージックビデオがYouTubeで1億6890万回再生を超えるなど大ヒットしている。米ビルボードのグローバルチャート「Excl. U.S. top 10」(6月10日付)で首位を獲得したことも話題となった。
OP「アイドル」の存在が「【推しの子】」のヒットの要因の一つになった。YOASOBIにOPをオファーしたのは、プロデューサー陣だった。吉岡さんと山下さんは「【推しの子】」とYOASOBIは、親和性が高く、組み合わされることで大きな化学反応が起きると考え、YOASOBIサイドに働きかけた。
吉岡さんは「OPも重要なポイントの一つでした。映像作品において、作品のヒットと主題歌のヒットは絶対に切り離せない関係にあり、とはいえ、何の文脈もなく人気のアーティストさんとご一緒してもお互いの成功には結び付かないだろうと。そう考えた時に原作の世界観をつくっている赤坂先生が好きなものを『同じ視点で見られるアーティストさんをぶつけたほうがいい』と考えました。赤坂先生は2000年代初頭、『ニコニコ動画』などを通して、好きなものを貫く誰しもが、多くの人に自分の創作物を届けることができるようになった時代を経て創作活動をされている方なので、同じような年の頃にあの時代の雰囲気を体感しているアーティストさんとは絶対波長が合うだろうと考えました。そんなアーティストさんは……と考えた時にYOASOBIのAyaseさん以外にいないと思った」と説明する。
YOASOBIがOPを担当することが発表された際、Ayaseさんは自身のツイッターで、原作の大ファンだったことやオファーがある前から同作をイメージした楽曲を制作していたことを明かしていた。吉岡さん、山下さんの狙い通り、YOASOBIと「【推しの子】」の高い親和性によって名曲「アイドル」が誕生した。
バンド「女王蜂」が担当するエンディング(ED)主題歌「メフィスト」の存在も大きい。同バンドのアヴちゃんも「【推しの子】」の大ファンで、プロデューサー陣はすさまじい情熱を目の当たりにしたという。
吉岡さんは、女王蜂との最初の楽曲打ち合わせを振り返り、「女王蜂さんとは初めての顔合わせだったのですが、僕らが作ろうとしているもの、先生が大事にされているものを既に深く理解されていて、『最初の企画会議から参加していた?』と錯覚するほどでした。その上で『自分はこういうものをやりたい』と。作品への解像度があまりに高くて驚きました」と明かす。
アニメ「【推しの子】」は、動画工房、YOASOBI、女王蜂という同作に魅了されたクリエーターが集結した。赤坂さん、横槍さんともにアニメのアフレコ、シナリオ会議に立ち会い、キャラクター設定などのビジュアル面もチェックするなど原作サイドが全面協力しながら細部までこだわった。
山下さんはヒットの理由を「いくら僕らが仕掛けても、作品が良くなければヒットにはつながらない。みんなが『本当に大好きなものをやりたい』ということが実現したからこそ」と語る。マンガ、アニメファンはもちろん、そうでない人をも巻き込む勢いを見せるアニメ「【推しの子】」。今後の展開からも目が離せない。
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