宮野真守:アニメ「大奥」 有功の京言葉を自然に もろく崩れゆく姿に苦しさも

アニメ「大奥」で万里小路有功を演じる宮野真守さん
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アニメ「大奥」で万里小路有功を演じる宮野真守さん

 よしながふみさんの人気マンガが原作のアニメ「大奥」。Netflixで世界独占配信をスタートし、万里小路有功役の宮野真守さん、徳川家光役の松井恵理子さんら声優陣の熱演が話題になっている。「大奥」は、これまで実写化されてきたが、アニメ化されるのは初めて。京都の公家出身の美しき僧で、春日局の策略によって大奥入りすることになる有功を演じる宮野さんに収録の裏側、作品の魅力を聞いた。

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 ◇有功が持つ空気感を表現 思わず方言が出る場面も自然に

 「大奥」は「メロディ」(白泉社)で2004~20年に連載されたマンガ。若い男性のみがかかる奇病・赤面疱瘡(あかづらほうそう)がまん延し、男子の数が激減した江戸時代、徳川の世を守るため将軍職は女性が引き継ぐこととなる。大奥は“美男三千人”と言われる男の城となり、運命に翻弄(ほんろう)される女将軍、彼女たちに仕える男たちの人間ドラマが描かれる。

 「大奥」は、男女が逆転した世界観で、実在した歴代将軍、幕府要人をモデルにしたキャラクターが登場する。宮野さんが演じる有功は、江戸幕府の三代将軍家光の側室、お万の方(永光院)。「大奥」では、有功が春日局の策略により還俗(げんぞく)させられ、女将軍・家光と深い愛で結ばれることになる。

 宮野さんは、方言指導を受け、有功が話す京言葉に挑戦することになった。

 「これまでもいろいろな方言を話すキャラクターを演じてきましたが、今回は公家の京言葉、しかも時代劇ということで、ある意味、新たな感覚で、自然と入ってきたところがありましたね。難しいは難しいのですが、これまで演じてきた方言とはまた違う新たな言葉として覚えることができた感覚がありました」

 仏に仕える僧であった有功の京言葉を「ナチュラルに発したかった」とこだわりを語る。

 「頑張っている感を出したくなかったというか。有功は、エネルギーを使って頑張って誰かにアピールするような人ではなくて、自然となだらかに生きているような人。仏の道で自分が導けるものに対しては手を差し伸べたいと思っている穏やかさがある。収録の最初のうちは、有功から自然と発せられる空気感のようなものを意識しました」

 有功は大奥に入ってからは、京言葉を禁じられ、江戸の言葉を話すようになるが、感情が高ぶり思わず京言葉が出てしまうような場面もある。

 「収録をしているうちに京言葉が自分に染み付いてきたのですが、有功が千恵様(家光)とのお蓐(しとね)の時や、春日に悲痛な思いを訴える時などに、方言が混じってしまうようなシーンがあるんですよね。日常生活でも、普段は標準語を使っている関西の方が、感情が高まると思わず関西弁が出るような場面を目の当たりにすることがあるのですが、やはりそれが自然だよなと思って。有功にもそういうことがあったらすてきだなと思って演じていました。狙ったわけではなく自然と京なまりが出るような」

 ◇感情がはみ出す瞬間も アニメ「大奥」ならではの魅力

 有功が愛することになる家光は、出会った当初はまだ幼く、有功にも敵意をむき出しにするが、徐々に打ち解けていく。宮野さんは、家光役の松井さんとの収録は印象的だったという。

 「松井さんの声がつくことにより、より千恵様の痛々しさが増すというか。虚勢を張って自分を守ろうとしているというか。千恵様は過去につらい経験をしていて、そのトゲトゲしさもただの虚勢ではなく、やはりSOSを常に発しているというふうに聞こえたので、有功としても本気で守ってあげたいなと思いました。ただ、二人の関係は面白くて、母になった千恵様が本当に強くなっていく一方で、有功がどんどんもろく崩れていく。そこが皮肉にも、ドラマチックではあるのですが、演じている方は結構苦しかったですね」

 「大奥」の大きな魅力の一つは、愛憎渦巻く大奥で繰り広げられる人間ドラマだ。アニメ版では、宮野さんら声優陣がキャラクターたちの心情を丁寧に表現している。

 「『大奥』ではキャラクターたちの感情が細やかに描かれています。収録では“感情がはみ出す”ような状況もあったのですが、監督がそれを尊重してくれたのが非常にうれしかったです。だから、アニメで声がつくことによって膨らむ何かは確実にあったと思います。我々の現場での本気度みたいなものが、ドラマを、作品をよくするものになれているんじゃないかなと。そこは、アニメならではの魅力として、非常に自信を持ってお伝えできるところかなと思います」

 ◇家光と有功の「大きな愛の物語」

 “男女逆転大奥”の始まりを描く家光と有功の物語は「大奥」の中でも人気が高いエピソードの一つだ。宮野さんは「みんながどうしたらいいのか分からない状況下で、何とか生きていこうとするエネルギーが強い物語」と感じているという。

 「春日局もめちゃくちゃなこともするけれど、それも徳川を守ろうという強い意志のもとにやっていることで、曲がったことをしているわけではないんですよね。それぞれが自分の立場、自分の存在をどう肯定していくかと一生懸命になっている。家光自身の思いもプラトニックで、自分が生きる意味を知りたいという。本当に求めているものは有功だけなんですけど、徳川の世のために必要であれば人柱にもなる。そこの覚悟をみんなが持って生きている時代だからこそ、ぐっとくるんでしょうね」

 宮野さんは、家光と有功の「大きな愛の物語をぜひ感じてもらえたら」と見どころを語る。

 「有功は、非常に真っすぐで素直で優しい男なんですけど、運命に翻弄され、自分の中の業みたいなものもたくさん知ることになる。彼はそこに対しても真っすぐに向き合ってしまうがために、いろいろなことをごまかせないというか。それでつらい決断をしなくてはいけない瞬間もたくさんあって、彼の感情が本当にかき乱されていく。ただ、それも全て愛ゆえと考えると、とてもすてきで、とても悲しい。僕は、そんな彼の思いをしっかりと感じて声に出したつもりなので、彼の渦巻く感情をぜひご覧になってほしいなと思います」

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