1980~90年代に活躍したレジェンドなロックバンド「爆風スランプ」がデビュー40周年で再集結。8月に26年ぶりのシングル「IKIGAI」を配信。10月には2枚組みのベストアルバムをリリースし、同月末から名古屋・兵庫・東京を回るツアーを開催する。全員60代になったメンバー4人に再集結のきっかけ、新曲のタイトルにもなった“生きがい”について聞いた。(前後編の前編)
あなたにオススメ
「豊臣兄弟!」では池松壮亮が! 大河ドラマ“秀吉俳優”史を振り返る
「爆風スランプ」は、スキンヘッドにサングラスがトレードマークのボーカル、サンプラザ中野さんとギターのパッパラー河合さん、ドラムのファンキー末吉さん、ベースの江川ほーじんさんの4人で1982年に結成。1984年8月にメジャーデビューを果たした。1985年12月に初の日本武道館ワンマンライブを成功させる。1988年には「Runner」が大ヒットを記録し、NHK紅白歌合戦に初出場。1989年、江川ほーじんさんが脱退し、バーベQ和佐田さんが加入。「リゾ・ラバ」「大きな玉ねぎの下で~はるかなる想い」(共に1989年)などで邦楽シーンを盛り上げた。1999年に活動休止を発表。2005、2007、2010年にその日限りの復活ライブを実施した。
今回の再集結は、サンプラザ中野くん(2008年に改名、以下、中野くん)が2年ほど前、スタッフに「40周年を機にバンドを動かしたい」と相談したところから始まった。26年ぶりの新曲となった「IKIGAI」は中野さんの中で温めていたテーマだった。
中野くんは、「“生きがい”という言葉は、ドキュメンタリー映画の中で、世界で広まって“IKIGAI”と国際語化しているというのを見て、生きていく上で重要なポイントの一つであると気づきまして。それで、この言葉で行こうと思ったんです」と新曲のテーマになったきっかけを明かす。
さらに、「今の日本人って“生きがい”という言葉を忘れていたなと思いまして。バブル崩壊後、いかにして金を稼ぐかという方向に皆向いていて、中高年の方々もみんな一生懸命働いて、老後2000万円をどうやって貯(た)めたらいいんだろうか、みたいなところで四苦八苦している。だけど、これから来るであろう老後を生き抜くためには“生きがい”をそれぞれに持ってほしいなと思って。そして『IKIGAI』で中高年パワーを結集して、爆風スランプデビュー40周年を盛り上げていただけたら幸せです」とメッセージを送る。
曲はラップ調になった。このことに中野さんは少し困惑したという。
「昨年の暮れに“生きがい”というテーマが俺の中であるので、これを元に曲を作りましょうとなって。俺が詞を作って(メンバーに)投げたところ、末吉さんがすぐに、なんとラップの曲を書いてきてくれて。ラップかよーって困りました(笑い)」
中野くんは「新しいジャンルを一応、自分の中で名付けて。“語らうようなラップ”で“語(かた)ラップ”と。自分としては良い曲できたなと思いながらも、現在の日本のラップの流れとはちょっと違うので、どういうふうにラップ界隈の方が受け取るのか非常に気にしております」と率直な思いを吐露する。
河合さんは「初期の頃の爆風スランプの曲調なんですよね。『Runner』以降、メロディー志向になる以前のキテレツだった爆風スランプ。俺は原点となった40周年ということで良いなと思いました」と語る。
末吉さんは「爆風スランプは、今みたいにラップが流行(はや)る前に『嗚呼!武道館』(1985年)のようにラップの曲を出してるんです。だから私は、中野がこれほど困るとは夢にも思わなかった」と笑う。
和佐田さんは「まぎれもなく爆風スランプの音になってるんですよね。やっぱりすごいメンバーだな思いました。歌ってない(ラップな)のに、こんなに存在感があるんだと思ってびっくりしました。良いバンドです!」と自信をのぞかせる。
ちなみにメンバーの“生きがい”は? 末吉さんは「何年生きられるか分からないけれど、ドラムがうまくなりたい」、和佐田さんは「みんなの前でライブをやることが、生きがい」、河合さんは「父が亡くなった年齢の73歳よりも長く生きること」、中野くんは「125歳まで歌い続けること。あと、阪神タイガースが生きがい」と明かした。
後編は、1980~90年代の活動当時の思い出やベストアルバム、ツアーへの意気込みを語る。