海に眠るダイヤモンド:10月期日曜劇場 70年前の端島を描く撮影の裏側 ドラマを超えた壮大なスケール 新井順子Pに聞く

ドラマ「海に眠るダイヤモンド」の一場面(C)TBSスパークル/TBS
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ドラマ「海に眠るダイヤモンド」の一場面(C)TBSスパークル/TBS

 俳優の神木隆之介さん主演のTBS系日曜劇場海に眠るダイヤモンド」(日曜午後9時)の第2回が11月3日に放送される。今作は、明治の初めから戦後の高度成長期にかけ、石炭採掘で発展した長崎県の端島(通称:軍艦島)と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、家族の物語。脚本・野木亜紀子さん、監督・塚原あゆ子さん、プロデューサー・新井順子さんという、ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」(同系)、映画「ラストマイル」チームが手がけている。第1話が放送されると、70年前の端島を再現した映像などが「ドラマのスケールを超えたクオリティー」と話題になった。新井プロデューサーに、撮影の裏側を聞いた。

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 ◇端島を舞台にしたきっかけは野木さんとの長崎旅行

 端島を舞台にしたのは、2018年に「アンナチュラル」で市川森一脚本賞を受賞した野木さんが副賞として贈られた長崎旅行に、新井さんと一緒に行ったことが発端だった。3人で「日曜劇場で何を作るか」となったときに、その長崎旅行のことを思い出したという。

 旅行では、グラバー園や浦上天主堂と大浦天主堂、稲佐山など長崎の名勝・名所を巡り、中華街でちゃんぽんを食べたという。端島へは「軍艦島ツアー」で訪れた。

 新井さんは端島の印象を「時が止まってる感じ。観光地なんですけど観光地っぽくない、“圧巻”の一言に尽きる」と振り返る。

 「軍艦島ツアーで、船に乗って、島に行ったときに、その元島民のガイドさんのお話がめちゃくちゃ面白かったんですよ。昔こんなことがあってとか、高波にさらわれて、流された物が、次の波で戻ってきたという話だったり、面白おかしい話をいっぱい聞きました。野木さんは大量にお土産を買われていて、『野木さん、好きなんだこの島』と思いましたね(笑)」

 ◇緑なき島を再現するのにロケ地選びから苦労

 「3人で“日曜劇場”をやってみたい。TBSの看板枠で、壮大な物語を作りたい」と考えたときに浮かんだのがこの長崎、端島だった。とはいえ、現地は廃墟になっており、もちろん撮影することはできない。すべてセットを組み、端島を囲む景色はVFXで再現した。

 第1話でリナ(池田エライザさん)が歌った階段がある“端島銀座”は、「あのセットを建てる場所を探すのにかなり時間がかかって。長期にわたって、倒れないように建てなきゃいけないので、しっかりとした躯体があるところを利用したんですけれど、とにかくセットを作るのが大変でした」と苦労を明かす。

 “メガネ”といわれる、第1話で鉄平(神木さん)と進平(斎藤工さん)がサイダーを飲んでいたゴミ捨て場も「あそこも海沿いに建てていて。何もかも大変でした」という。「ただ、完成したら、本当にリアルな“まんま”(端島)で圧巻でした」と胸を張る。

 端島はコンクリートで囲まれた島のため、樹木や草など緑はない。特殊な環境を再現するのにも苦労した。

 「(端島は)緑なき島なので、緑があるところにロケに行けないんですよ。だから、どこのロケ場所に行っても緑があるな、だめだなみたいになって」とロケ場所選びにも苦労した。普段使っていない校庭でロケするときも「草がいっぱい生えているんですよ。スタッフみんなで、一日かけて草をむしりました」という徹底ぶりだった。

 演出の塚原さんは映像にもこだわり抜いた。端島にビリヤード場があったり、映画館があったり、美容院があったりとワンカットずつ紹介する第1話の場面でも「実際の写真を使うという話もあったんですけど、(塚原)監督が実写にしたい、と」とこだわり、ワンカットのために装飾を施し再現した。

 「こだわり抜いただけあって、リッチになったし、端島の街にはこういう場所があったんだというのが想像しやすくなった。毎日のようにトラックが6台ほど来ているとか、移動に5時間半かかったなど、美術さんをはじめスタッフは本当に大変だと思うんですけど、いい画(え)が撮れてるなと。『映画並みですね』と周囲に言われました」

 ◇現場には泳げるくらいの大きなプールが

 第2話では台風の場面が登場する。ここでもリアル感を出すために大量の水を使う大がかりな装置を設置した。

 新井さんは「何トンの水を使ったんだろう。現場に大きな(泳げるくらいの)プールがあって、セットの上にシャワーみたいなのものがずらりとつられていて、『雨出してください』といわれると、上からシャーッと端島銀座全体に雨が降る装置を丸一日かけて設置してくださった。あとザバーンと水がかかるシーンも、ドラム缶五つを使用する装置を作りました。(一度かけられると)あそこまで濡れたら乾かない。夏に撮ったんですけど、とにかく足湯して。とても大変でしたね」と振り返る。

 このように「時間とお金をかけて、リッチに撮っております」と新井さんは自信をのぞかせた。

 ◇第1話から今後のヒントが見えている

 物語は過去の端島パートと現代の東京パートがあり、どういう方向に進む話なのか第1話だけではまだ見えない。

 新井さんに今後の展開についてヒントを求めると、「いろんなグラデーションがありまして、後半は特に激動の人生が描かれます……。1話はすごくハッピーな感じですけど、それがいろんなことが起こっていくうちに、どんどん思いもよらぬ方向に走っていく。中盤と、後半でもまた違う味わいがあって、愛って感じです。やはり野木さんだなという雰囲気になっています」と答えた。

 1話の中にも今後の展開のヒントはあったのだろうか。「めちゃくちゃ難しいんですけど、推測してください。1話からもう謎がちりばめられています。見返すとそこか!ってなると思う。スタッフも『えーっ』て言ってました(笑)。だから最終回まで見たら、もう1回1話から見てもらえると」とメッセージを送った。

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