大塚剛央:「【推しの子】」インタビュー 優しくて面倒臭いアクア 再び復讐の道へ 「これまでと違った苦しみ、迷い」

テレビアニメ「【推しの子】」の一場面(c)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
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テレビアニメ「【推しの子】」の一場面(c)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

 「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載された人気マンガが原作のテレビアニメ「【推しの子】」の第3期が、TOKYO MXほか全国36局で放送されている。第1、2期と、天才アイドル・アイを殺した犯人への復讐のために生きてきたアクアだったが、第2期終盤では復讐に区切りがついたかに思えた。しかし、第3期では、その復讐が終わっていなかったことが明らかになる。2023年4月に放送をスタートした第1期からアクアを演じ続ける声優の大塚剛央さんに、アクアへの思い、収録の裏側を聞いた。

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 ◇どんな時でも変わらないアクアの優しさ

 「【推しの子】」は、「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」の赤坂アカさんと、「クズの本懐」などの横槍メンゴさんが手がける人気マンガで、「週刊ヤングジャンプ」で2020年4月~2024年11月に連載された。突然の死を遂げた天才アイドル・アイがのこした双子の兄妹の物語が描かれる。

 大塚さんは、第2期までのアクアは「復讐に取り憑かれていた。演じていて苦しいところがありました」と感じていたという。第2期終盤で、復讐の相手と思っていた人物が既に他界していることを知り、「アクアの目から黒い星が消えたところは、一つの区切りという意識があったのかなと思います」と振り返る。第3期は、どのような思いで収録に臨んだのだろうか。

 「第2期からの流れをしっかり汲んで入ろうというのが第一にあって、アクアとしても、今の時間を幸せに生きようとしている。その中でも、まだ100パーセント割り切れているわけじゃないような、心の中にわだかまり、しこりが残っているような感覚はありつつでやりました。第2期もそうでしたが、第3期でも新たな舞台としてバラエティー番組があって、空気感がまたちょっと違った感じになってきたので、しっかり周りの方のお芝居を聞いたり、ディレクションを受けてアジャストできるようにしていこうと考えていました」

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 さまざまな状況の変化がありつつも、大塚さんが第1期からアクアを演じる中で大切にしているのは、「根の部分の優しさ」だという。

 「『自分の幸せを求めてもいいのかな』と考えるようにはなりましたが、なんだかんだ自分のことよりも周りのことを考えて、他人のことを自分よりも大事にしてしまう。その優しさは、どんな時であっても変わらないのかなと思います」

 第3期では、アクアと黒川あかねが恋人同士になるという展開もあり、「アクアは、普通の恋人らしいことをちゃんとするという意識があったので、あかねとのやり取りで恋人らしさが出てきたり、本当に些細な変化ですが、今までよりも感情の幅が少しだけ出るようになりました。そこは、時にディレクションを受けつつ変えていった部分でした。ただ、いきなり明るくなってもちょっと違うので、ちょっとだけ声色に明るさが交じるというか」と、繊細に変化を表現した。

 ◇再び復讐の道へ アクアの“本心”を大切に

 第28話「盲目」では、ルビーの変化に違和感を持ったアクアが、苺プロダクションの元社長である斉藤壱護に会いに行き、一度は区切りがついたと思っていた“復讐”が終わっていなかったことに気付かされる。大塚さんは、アクアにとって、第1、2期での復讐心と、第3期で再燃した復讐心は「ちょっと違うところがある」と感じているという。

 「一度、復讐が自分の中で終わって、『本当に幸せを求めていいんだ』と思ってしまったからこそ、改めてまた復讐することに対して、また違った苦しみが生まれてくる。それは、アニメでは『アクアをこう見せたい』という方向性もあるのですが、復讐へ向かっていくアクアの感情表現、言葉に現れる感情の色に、復讐だけではなくて、自分の苦しみや迷いがより強く交じってくるようになった。幸せな日々をもう一度手放してやるんだと自分に言い聞かせていくような感じが強くなったというか。ディレクションとしても、アクアの複雑な感情がもっと見えるように持っていきたいということでした」

 さらに、スキャンダルに見舞われた有馬かなを助けるために、アクアは自分とルビーがアイの子供であることを公表することに踏み切り、激動の展開へと突入している。

 「僕も原作を読んだ時は、ここが本当に大きな転換点だなと感じました。今までずっと隠してきたことを世間に公表する。そこに関して、アクアはルビーのことを考えなかったわけじゃないだろうけど、それでも公表に踏み切った。本当に何もかもが変わってしまうっていうところなので。その後、第31話のラストで、アクアの『幸せな日々はもう終わり』『この道を進むしかない……!』というモノローグがあるのですが、この辺りから自分の中の葛藤を振り切るような、苦しみも混ぜつつという感じで演じていきました。第1、2期の非情さが見えるようなアクアとはちょっと違った意味で、ある種、今までよりもっと危うい方向に行ってしまっているのかなとは思います」

 ただ、アクアが再び復讐の道に突き進み、周りに対して有無を言わせない態度であっても、「収録では、スタッフさんも含めて『本心の部分でどう思ってるか』を大事にしようとしていました」と明かす。

 「根っこの部分のアクアの優しさ、葛藤があるから、そこから出る言葉を大事にしようと、都度ディレクションをいただきながらやっていました。仕方なくこうするしかない、という雰囲気もあるのかなと思います」

 ◇「【推しの子】」ならではの緊張感

 大塚さんは、第1期からさまざまな女性と接し、それぞれ違った関係性を持つアクアを演じてきて、その優しさと共に“面倒臭い”一面も感じているという。

 「かなと接する時のアクアは、自分では気付いていないかもしれないけど、ペースを乱されているところもあるのかなと思いますし、対あかねでは、お互いがすごく賢くて全部を言わなくても分かってしまうから本音で話すことがあまりないのかなと。ルビーが相手だと、あかねとはまた違った“言わなくても分かる”ところがありながらも、家族だけど他人のようなところがあって。家族としての愛情もあるとは思うんですけど、本音は明かさないし、ルビーの影の部分にも触れないようにしているという。そんな姿を見ていると、多分アクア自身が面倒臭い人なんだろうなとも思ったりします」

 収録では、「掛け合いをしていると、自然とそれぞれの空気感が出来上がる」と、これまでのシーズンの積み重ねも実感している。また、「【推しの子】」の収録ならではの難しさ、面白さもあるのだという。

 「感情の流れとしてはこれで間違っていないけれど、『このシーンではこういう感情が欲しい』『この印象が欲しい』と求められることがあるんです。ある種、表現に嘘をつくというか。それが際立って、良いシーンに仕上がるということがあります。本当にちょっとだけ声色が違うだけでも印象が変わるんです。そうしたアニメとしての見せ方に関しては『なるほど』と本当に日々勉強しています。そうした演出はしっかり方向性が固まっているからこそできることだとは思うのですが、そこにしっかりと適応させるという能力も求められる。もちろんどの現場でもそうですけど、『【推しの子】』は特に集中力、いい緊張感を持ってできている現場だなと思います」

 アニメ「【推しの子】」は第3期で大きな転換期を迎える。大塚さんは「苦しい展開もありますが、そこに『大事なことはここなんじゃないか』というメッセージがあります。『人間って?』『大人って?』というところにもっと踏み込んだ内容になっているのかなと思います」と語る。今後も心してアクアたちの行く末を見守りたい。(しろいぬ/MANTANWEB)

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