葬送のフリーレン 第2期
第35話 神技のレヴォルテ
3月6日(金)放送分
ガンダムシリーズの劇場版アニメ「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(村瀬修功監督)の第2章「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女」が公開されている。2021年6月公開の第1章以来、約5年ぶりの新作となった。第1章は、これまでのガンダムシリーズの中でも屈指の映像美が話題になったが、第2章は“さらにその先”を表現したようにも見える。新作が約5年ぶりとなった裏側には、村瀬修功監督の妥協なき挑戦があった。
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「閃光のハサウェイ」は、ガンダムの生みの親の富野由悠季監督が1989~90年に発表した小説を映像化した。1988年公開の映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のその後を描いている。宇宙世紀0105年を舞台に、第二次ネオ・ジオン戦争で苦い経験をしたブライト・ノアの息子ハサウェイ・ノアが新型MS・Ξ(クスィー)ガンダムを駆り、地球連邦政府に反旗を翻す。
「乗り越えてみせる。世俗も肉欲も!!」。第2章の本予告が公開された際に話題になったハサウェイのセリフだ。第2章のハサウェイは葛藤し、苦悩する。
「第1章で、ハサウェイ、ギギ、ケネスの出会いを描き、外側のカメラから3人がどう動くかを表現しようとしました。第2章は、3人がそれぞれの立ち位置で何を考えているのかという内省的なところが小説でも描かれています。当然そこを描くべきだろうと考えていました。原作である小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の流れにありますが、ガンダムシリーズは映像になっているものを正史として扱うため、今作は劇場版アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の流れにする必要がありました。ある意味パラレルなんです。だから置き換えなければいけないところもあり、『ベルトーチカ・チルドレン』とは、ハサウェイが抱えている問題が違うので、そこを明確に提示するのが第2章の役割だと考えていました。第2章のラストで、ハサウェイが自らの問題を認める。そこをしっかり見せようとしました」
「閃光のハサウェイ」は全3章になることが発表されている。第1章の制作時から各章の構成は決まっていたという。
「第3章もシナリオはできているので、ラストは明確に決まっています。富野さんの小説の濃い部分はセリフではなくト書きだったりするので、第1章でもト書きをセリフに盛り込んだり、なるべく富野さん的な要素を拾おうとしました。第2章の方がそういう変更が多かった気がします。取りこぼさないようにすると、シナリオが通常の2倍くらいになってしまう。そのため、コンテにする際にもう一度もみ直す必要がありました。その作業も大変なのですが、コンテに時間が掛かってしまったのは別の問題がありまして」
村瀬監督はコンテに取りかかる前に、3DCG制作ソフト「Cinema 4D」などを駆使してVコン(ビデオコンテ)を作った。これにより、Vコンとコンテに向き合う時間が長くなったという。
「まず3Dのムービーを作って、それを基にコンテを描きました。つまりコンテを描く前の3Dを作る時間が長くなってしまったんです。第1章でもVコンを作ったシーンはあるのですが、ほかのスタッフへのイメージ共有用として使っている要素が大きかったです。ただ、Vコンを作成しても思い描いた通りにならないところもありました。3Dカメラでレイアウトを作っても2Dアニメの作り方に慣れた人たちは、紙のコンテをマスターとして取り扱う。そういうことがあったので、より齟齬がないように、コンテ作成時から3Dカメラでレイアウトを決めてしまった方が良いだろうと考えた結果です。ただ、3Dカメラでレイアウトを探るよりもモデルを作る時間の方が長かったかもしれません」
村瀬監督は映像の細部までこだわり抜く。アニメ制作は共同作業だ。各スタッフに自身のビジョンを齟齬なく伝達するためにVコンを作り込んだ。
「ここにボルトが入っている、これくらいの厚みのパーツがあるなどガイド用のモデルをしっかりと作ることがリアリティーにつながってくると第1章を経験して感じました。中途半端なディテールのオブジェクトを原図にして美術作業を進めると、中途半端なものにしかならない。それを回避するためにも、無駄になることもあるかもしれませんが、しっかりしたモデルを作ることを意識した部分はあります。また、Cinema 4Dはライティングも優秀で太陽光もしっかり再現してくれます。ライティングをしっかりするだけでリアルな映像になるため、その精度を上げていこうと模索しました。それらの結果としてVコンに時間が掛かってしまい、スタッフに待機してもらうことになったので、作り方を考え直さないといけないと痛感しています。なので、第3章の作り方はまた変わってくると思います」
気の遠くなるような作業ではあるが、村瀬監督は自身が思い描くビジョンを映像化するために、徹底を期した。本作を含めた村瀬監督の映像表現は、実写映画的と評されることもある。
「僕はアニメを見なくなっちゃったんです。自分が作画や演出をやっていて、基本的にうまくいってるカットはなかなかなく、何か間違っていると感じてしまう。ほかのアニメを見ていても、『こうではないのでは?』と疑って見てしまうので、苦しいんです。なので、実写作品しか見ていないことが影響しているのかもしれません。アニメならではの様式美やカメラワークも得意ではありません。リアルなライティングをアニメにどう落とし込むかも考えているのですが、そこも難しい。撮影で頑張るしかないのですが、素材がそろうタイミングもあり、なかなかそこに時間を掛けられない。そこで一つの解決策として3Dソフトで先にライティングを決め込み、それをガイドに作り進めようとしたのですが、これもアニメの制作フローに載せるには難しく。ただ、イメージを具体的に伝えられるという意味では良い方法なのかなと思っています」
第2章は「閃光のハサウェイ」が劇場版アニメ「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」に連なる物語であることが強調されている。「逆襲のシャア」を再解釈しようとしているようにも見えるが……。
「再解釈というわけではなく、ハサウェイが『逆襲のシャア』時点で見たものや体感したものを描こうとしています。新しい解釈は加えず、ハサウェイに見えていない部分は描いていないつもりです。ハサウェイにとって自分が見たものが全てで、アムロとシャアの会話は見えていない。T字型のサイコフレームが影響を及ぼした現象も見えていません。ただ、理屈としてのサイコフレームは理解しているはずなので、チェーンの腰のサイコフレームが光るところは意図的に描いています」
「逆襲のシャア」の特報のようにνガンダムが頭部バルカンで攻撃するシーンも印象的だ。実は特報の攻撃シーンは「逆襲のシャア」の本編には存在しない。“幻”のシーンとも呼ばれており、ファンの心に刻まれている。
「あのシーンがハサウェイの回想のきっかけになる。そのつかみとして描こうとしました」と「閃光のハサウェイ」と「逆襲のシャア」をつなげる意味を持たせようとしたという。
村瀬監督は「逆襲のシャア」には参加していない。富野監督が手掛けた1991年公開の劇場版アニメ「機動戦士ガンダムF91」では作画監督を務めた。
「『逆襲のシャア』には参加せず、久々にサンライズの仕事をしたのは『鎧伝サムライトルーパー』でした。『逆襲のシャア』と同じスタッフが参加していたこともあり、制作現場が大変だったと聞いていましたが、フィルムから作品に対しての熱量は感じていました。『F91』はそれを超えようとスタートしましたが、追いつけなかったところもあります。本作では『逆襲のシャア』のエフェクトの描き込みなどを再現したいと思って挑戦してみましたが、やはりあの熱量に勝てなかった」
日本の手描きアニメは1980、90年代に技術の一つの頂点を迎えたとも言われることもある。「逆襲のシャア」のような手描きアニメの技術はロストテクノロジーになってしまっているのかもしれないが、令和の時代ならではのスタイルで名作をよみがえらせて、ハサウェイがアムロとシャアに大きく影響を受けていることを印象付けた。
第1章の公開時、原作者の富野監督は「今日のアニメ技術の上に、新たな解釈をもってガンダムの総体の決着への道を拓(ひら)くものになっている」とコメントしていた。
第1章の制作に入る際、富野監督と話す機会があったというが、「この5年ぐらいで2回くらいしか会っていませんが、仕事の話はしていません。聞けば話してくれるとは思うのですが。僕が直接言われたわけではないのですが、第1章の時に『原理主義者が』『なんでそのままやるんだ』と言っていたそうなんです。もし富野さんが今、『閃光のハサウェイ』をアニメ化するなら、多分原作通りではないと思いますし」と話す。
アニメ化された「閃光のハサウェイ」からは、村瀬監督の小説への敬意がにじむ。村瀬監督の卓越したビジュアルセンスによってその魅力を最大限に表現し、まさにファンが見たかった映像として形になった。
第3章の展開や公開時期も気になるところで、村瀬監督は「第2章を作る中で変更したところもあるので、多少調整は必要ですが、基本的な方向性や構成は決まっています。プロダクションに関しては、第2章の問題を解決しながら組み立てていこうとしています」と話す。村瀬監督の妥協なき挑戦の続きに注目したい。(阿仁間満/MANTANWEB)
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