薬屋のひとりごと
第13話 外廷勤務
12月27日(金)放送分
1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員がお薦めする作品を紹介する「はじめの1巻」。今回は、「おっとり捜査」「死刑囚042」の小手川ゆあさんが描く「スーパージャンプ」(集英社)で連載中の「君のナイフ」(590円)だ。
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高校教師の志貴は、バーで知り合った美女から「1回500万円で人を殺さないか」と持ちかけられる。ある事情から金が必要だった志貴は、刑事の久住と共に、陰で悪事を働く食品輸入会社の社長宅へ押し入って一線を越え、地下に監禁されていた謎の少女・いつきと出会う。久住は、口封じのため、いつきを殺そうとするが、志貴はそれを阻止した。いつきは、会った瞬間に二人の名前と職業を当てるなど人の心を読む能力を持っており、「私もおとうさんみたいな悪いやつをいっぱい殺したい」と宣言、奇妙な同居生活を始めるのだった。そして志貴の元にはさらなる殺人の依頼が舞い込む……というストーリーだ。
1回悪人を殺せば、500万円をもらえる。そんな話に乗った主人公が、後戻りのできない道へ足を踏み入れ、次々と悪人を殺すことに……。
表面上はそんなストーリーですが、そこはヒューマンドラマの傑作「死刑囚042」で知られる小手川ゆあ先生の作品。ただのサスペンスものとは一味違う、非常に重層的な物語になっています。
出来事の中心は連続殺人事件。それも主人公が犯人という、ともすれば陰惨な空気に支配されてしまいそうな作品世界なんですが、シリアスとほのぼのの絶妙なバランスでそうはならない。ターゲットの悪人たちは、文字通り悪いやつらなはずなのに一概にそうは思えない。ショッキングな展開に目を奪われがちですが、この作品は「事件」ではなく「人間」をじっくりと追っていく物語です。それも、主人公たちだけでなく被害者グループや事件を追う刑事たちまでじっくりと……。
3巻目以降はこれらの人間関係が一気に接近し、群像劇として大変なことになっていきます! そして作品に隠された骨太なテーマも徐々に輪郭を見せ始めます。「はじめの1巻」のコーナーですが、こちらは1・2巻同時発売ですので、ぜひ2冊まとめてよろしくお願いします。何度も読み返したくなること請け合いです!!
突然「殺し屋」になってしまった青年の物語ですからもっと重々しい感じかと覚悟して読み始めましたが、作画のシンプルさからも感じられるように物語の空気自体は意外なほど淡々としています。しかしその空気感が逆にリアルさを感じさせるのかもしれません。日常から非日常に変わる瞬間は、意外なほどにあっさりしているのだと。1巻目の最後から2巻目につながる事件が、この物語にこんなに大きくかかわることになるとは意外でした。2巻目ではキャラも出そろい、一気に続きが気になる展開に。ぜひ1・2巻を続けて読むことをオススメします。
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