「ボーン・スプレマシー」「ボーン・アルティメイタム」で知られるポール・グリーングラス監督とマット・デイモンさんが3度目のタッグを組んだアクション映画が「グリーン・ゾーン」だ。だが、前2作同様の「アクション満載のエンターテインメント作品」という先入観は捨てたほうが無難かもしれない。むしろ、手持ちカメラを駆使した映像が“ドキュメント風”で、その臨場感は、今年の米アカデミー賞で作品賞に輝いた「ハート・ロッカー」を思い起こさせる。
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タイトルの「グリーン・ゾーン」とは、イラクの首都バグダッドの中心部にある、約10平方キロの米軍管理区域のことで、いわば「安全地帯」を意味する。03年のイラク戦争開戦直後を舞台にしており、おもに、そのグリーン・ゾーンの外、敵兵が潜む「危険地帯」で物語は展開する。
米ワシントン・ポスト紙の元バグダッド支局長ラジブ・チャンドラセカランによるノンフィクションが原案になっている。とはいえ、ブッシュ政権当時のお粗末な対イラク政策の数々を書きつづった本書に対して、この映画は、バグダッド市内のどこかにあるであろう大量破壊兵器を見つけ出せという密命を受けた、デイモンさん演じるロイ・ミラー米陸軍上級准尉が、その情報の裏にある“真実”を暴こうと奔走する姿を描くことに終始している。
グリーングラス監督は、かつてはドキュメンタリーを撮っていた。06年には、9.11を扱った商業映画「ユナイテッド93」を発表。この作品は、公開前に物議をかもしたが、リアリズムに徹した画(え)作りが高く評価され、アカデミー賞監督賞候補になった。映画監督デビュー以前には、ジャーナリストとして本を著したこともあるという。そんな監督だからこそ今作を、フィクションとノンフィクションの垣根を越えたポリティカル・サスペンスに仕立て上げられたのだ。
ちなみに、撮影監督は「ユナイテッド93」「ハート・ロッカー」のバリー・アクロイドさん。圧倒的臨場感は折り紙つきだ。14日からTOHOシネマズスカラ座(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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