稲垣早希:“エヴァ芸人”育てた「ブログ旅」 「ロケみつ」高視聴率の秘密

「桜」の稲垣早希さんが体当たりで過酷な旅に挑む「ブログ旅」=毎日放送提供
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「桜」の稲垣早希さんが体当たりで過酷な旅に挑む「ブログ旅」=毎日放送提供

 「吉本べっぴんランキング」2位になった人気上昇中の“エヴァ芸人”「桜」の稲垣早希さんら、若手芸人がさまざまなテーマに沿った旅に挑戦し、その様子を公式ブログで紹介する深夜バラエティー番組「ロケみつ」(毎日放送、毎週木曜日午後11時50分放送)の「ブログ旅」が人気だ。ブログ記事へのコメントが1000件を超えなければ打ち切られるというシビアな企画に奮闘する姿が受け、人気の「アメトーーク」を超える視聴率を記録することも多く、深夜の放送にもかかわらず8.9%という高視聴率をマークしたことも。稲垣さんをブレークさせた番組の秘密とは……。

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 「ブログ旅」の企画がスタートしたのは08年8月。アニメ「エヴァンゲリオン」のアスカのものまねで知られる「桜」のエヴァンゲリオン漫才を見ていた総合演出の森貴洋さんが、「コスプレした芸人が、地方へ行って、自分のことを知らない住民から白い目で見られるアホなVTRができるはず」と稲垣さんの起用を決めた。稲垣さんを起用したことに加え、森さんらスタッフがエヴァンゲリオン好きだったこともあり、どんどんアイデアが飛び出し、「テレビ版エヴァの最終回のように、ゴールではみんなに『おめでとう』と言ってもらう映像が見えた」という。

 森さんは、事前に企画内容を明かさず稲垣さんに会ったが、その時の印象を「すごく人見知りで、芸人のにおいがしない。とんでもなく礼儀正しい女の子。親御さんの育て方が良かったんだろうなと感じた」と振り返る。稲垣さんのまじめさと性格の良さは、実際にコーナーがスタートすると、想像以上だったという。「コメントをもらった人に失礼なことをしてはいけない」と軽率な行動をいましめ、スケジュールの都合で中断したロケを再開する時も、食事を食べていない状態で中断したら、自発的に食事抜きで撮影に臨むなど前回の状況を可能な限り再現しているという。

 稲垣さんの「ブログ旅」では、ブログに寄せられたコメント数を1件1円で換算し、さいころを振った結果によって交通費や宿泊代が支給され、通過ポイントを通りながら目的地を目指す。さいころの出目に応じて、資金の全額没収、コメント数の1割、10倍など支給額が変わるルールだ。コスプレ姿のまま旅をするのがポイントで、番組予告やサブタイトルなどがエヴァンゲリオンをほうふつさせる演出になっているのが特徴だ。稲垣さんは、これまで「関西縦断ブログ旅」「四国一周ブログ旅」を制覇。旅を重ねるごとにルールは過酷さを増しており、現在は、「連続して1を出したらスタート地点に戻る」というルールが追加され、兵庫県から鹿児島県を目指す「西日本横断ブログ旅」に挑戦している。旅の模様は09年11月からTBSでも「完全版」(毎週土曜日深夜2時43分放送)として放送されており、6月にはブログ旅の様子を収めたDVDや書籍も発売される。

 そんな稲垣さんが最も苦境に陥ったのは、「四国一周ブログ旅」での高知県・足摺岬でのロケだったのでは、と森さんは振り返る。さいころで1を出してしまい、旅館に泊まれなくなった稲垣さんは、一晩の宿を求めて道行く人に声をかけるが、ことごとく断られてしまう。そして、稲垣さんは涙を流し、声をかけることをやめてしまうのだ。「普通の人なら、もっとずうずうしくお願いするのかもしれないが、稲垣さんは、自分のお願いで困ってしまう人を見るのが何よりもつらいと感じてしまう。あの時はリタイア寸前だった」という。

 一方、稲垣さんの純粋な性格は、並はずれた“天然キャラ”という側面も併せ持っている。撮影のたびに、毎回のように道に迷っているといい、目的地まで予定の倍以上の時間がかかることもしばしば。森さんは「最初はそのまま放送していましたが、あまりにも間違えるので、最近は編集でカットしています」と笑う。稲垣さんが、相次ぐ過酷な状況を乗り越えながら、目的地に向かって歩を進める姿は感動を呼び、「吉本べっぴんランキング」で2位を獲得するなど、「ブログ旅」は稲垣さんがブレークするきっかけともなった。

 「稲垣さん自身は、自分のことを『運が悪い』と言っているけれど、バラエティー番組の企画を感動の映像にしてしまうものすごいパワーを持っている。道中で助けてくれる人にも恵まれているし、本当はものすごく運がいいんですよ」と森さんは分析する。誰も知らないという状況でスタートした「ブログ旅」だったが、現在ではコメント数が1万件を超えることもたびたびで、放送地域の拡大や高視聴率も手伝って、道中に声をかけられることも増えてきた。「いつかこのロケも終わるし、飽きられてくるかもしれない。終わりどころを見極めて、稲垣さんがいい形で次の舞台に飛び立ってくれれば」と優しさを見せる森さんだが、一方で「僕たちがもっと悪役になるしかない」とより一層“愛のムチ”を振ることを誓う。「西日本横断ブログ旅」で過酷な新ルールに苦しめられている稲垣さんがゴールを迎えるのはいつの日か。今後の展開にも注目だ。  (毎日新聞デジタル)

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