西尾維新:「常に“最終巻”と思って書く」 アニメ化「化物語」も大ヒット 小説を語る

西尾維新さんの「物語」シリーズ最新作「猫物語(黒)」の表紙
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西尾維新さんの「物語」シリーズ最新作「猫物語(黒)」の表紙

 人気小説「物語」シリーズなどを生んだ作家の西尾維新さん。オリコンの10年上半期の作家ランキングでは村上春樹さんらに続く3位、アニメ化された「化物語」のブルーレイディスクは大ヒットし、代表作の「刀語」がフジテレビでアニメも放送されるなど若者に絶大な人気を誇る西尾さんに話を聞いた。

ウナギノボリ

−−小説家になったきっかけは。

 小説を読んだから書きたくなった……という感じでしょうか。東洋西洋問わず、昔から何でも読んできましたし、読んでいると書きたくなるものです。本腰を入れたのは、メフィスト賞を取った「戯言」シリーズの第1弾「クビキリサイクル」からですね。デビュー作ですが、僕の“集大成”として仕上げるつもりでした。

−−作品作りで心がけていることはありますか?

 アイデアのストックはなるべくもたないようにしています。アイデアは温めたら温めただけ古びていくし、本当に書きたいものはその場で書きたくなるはずですから。さらに言えば執筆の一回一回が勝負で、常に「最後の一冊」と思って書いています。(12カ月連続で12冊を刊行した)「刀語」も、1巻ごとに“最終巻”と思って書いていたんです。人生は何があるかわからないし、そのときに書き残したことがあったらイヤじゃないですか。常に自分の中を空っぽにしておきたいです。

−−ハイペースで刊行していますね。

 小説を1本書いている間に、次の仕事の仕込みをしているんです。人間は、集中しすぎると疲れるし、ろくなものができない。さらに集中できるのは1日90分ぐらいなもの。でも人間は1日10時間は働かないといけないわけです。過度に集中せず、意識を散らす意味でも、次の話を考えるんですよ。

−−「化物語」がアニメ化され、BDとDVDが爆発的に売れました。

 「物語」シリーズは小説に特化しました。つまり裏を返せばアニメ化には、ハードルが高い小説を書いたつもりですから、アニメ化はびっくりしました。僕の書く小説は全部そうだと言われたらそれまでなのですけれど、しかしその中でも「物語」シリーズが選ばれた時にはどうなるのかなあと思いましたが、アニメスタッフの方に最上の形にしていただきました。アニメから、原作を読んでもらえるとうれしいですね。

ー−同作品は、他と違うコンセプトで書かれた小説と聞いています。

 自分のために書いた……というのが正しいかもしれません。「戯言」シリーズで培ったものを活用し、好きなものを詰め込み、活字の面白さに気を配りました。しかし、活字ばかりを追求すると小説ではなくなってしまうんです。小説は究極的には説明文で、その説明文を限界まで面白くしていくものだと思っています。だから、活字を追求した「物語」シリーズは、僕にとって小説であって小説ではないんです。面白いのは、小説と活字との違いを追及していくと、説明の省略にもなるんですよ。俳句や短歌は、あの短さで独特の世界を作っていますよね。そういうのに近いと思っています。「化物語」は、今でこそアニメになり、メジャーと見られることもありますけれど、本来は恐ろしく通好みだと思っています。

−−今後の刊行予定は?

 講談社BOXから、(物語シリーズの最新作)「猫物語(黒)」と、「猫物語(白)」が発売されます。年内には「傾(かぶき)物語」も出る予定です。また講談社ノベルスからは「戯言」シリーズでトップ3の人気を誇る哀川潤を主役にした、彼女の過去の話を今年中に出そうと思っています。

−−新シリーズを書きたいと思うことは?

 日々思うことはありますが、書きたい場合はすぐ書くタイプなので、書かない場合はそのままなくなりますね。自分の中の「熱」を待つという感じでしょうか。本当に空っぽになったときに何をするかは、僕自身も楽しみです。今はまだまだ書きたいし、書かなくなったときは引退のときと思っています。

−−ファンへのメッセージをお願いします。

 活字というものに多く触れていただきたいですね。書店には人生を変える小説がたくさんあります。数々の名作が、毎月のように出ているので、ぜひ読んでほしいし、そのときに僕の小説も読んでいただければと思っています。

 <プロフィル>

 にしお・いしん=81年生まれ。第23回メフィスト賞受賞作「クビキリサイクル」(「戯言」シリーズ)でデビュー。代表作は、アニメ化された「化物語」や「刀語」など。「週刊少年ジャンプ」(集英社)連載のマンガ「めだかボックス」の原作も手がけている。

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