富野由悠季:“ガンダムの父”終戦を語る ドラマ「日本のいちばん長い夏」試写会

ドラマ「日本のいちばん長い夏」の試写会に登場した(左から)半藤一利さん、富野由悠季監督、倉内均監督
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ドラマ「日本のいちばん長い夏」の試写会に登場した(左から)半藤一利さん、富野由悠季監督、倉内均監督

 アニメ「機動戦士ガンダム」の“生みの親”富野由悠季監督(68)が出演したドラマ「日本のいちばん長い夏」の試写会が30日東京・新宿で開かれ、原作者の半藤一利さん(80)らとともに富野監督もトークショーに登場した。富野監督はガンダムについて「戦争ものをつくるつもりは全くなかった。巨大ロボットが一番それらしく活躍する場所が戦場だろうと思っただけ」と裏話を語る一方、「アニメだけれど戦争を描く上で兵たんの問題は入れたんです。当時の日本軍も兵たんの問題は全く考えていなかった。前線の人間が苦労しているのに、東京にいるやつだけが(戦争)できると思った。みんなマシンオタクの集まりだったんですよ」と熱っぽく持論を展開した。

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 同ドラマは、63年に「文芸春秋」の編集者だった半藤さんが主催して行われた終戦を語る座談会を書いたノンフィクションが原作。終戦時に内閣書記官長を務めた迫水久常、陸軍大将としてラバウルに赴任していた今村均ら、終戦時に軍部や政府の中枢にいた人物ら28人が参加した座談会の様子を描き、ポツダム宣言発表後から終戦に至る昭和20年の“長い夏”を浮き彫りにする。

 富野監督が今村均を演じるほか、国際弁護士の湯浅卓さんが迫水久常、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんは終戦時に陸軍中将・内閣総合計画局長官で御前会議にも出席した池田純久、マンガ家の江川達也さんはミャンマー(現ビルマ)に出兵した会田雄次をそれぞれ演じている。ほかにジャーナリストの田原総一朗さん、フリーアナウンサーの松平定知さん、料理評論家の山本益博さん、作家の林望さん、落語家の立川らく朝さんらも出演している。監督、脚本を「佐賀のがばいばあちゃん」の倉内均監督が担当している。

 トークショーは試写会の前に開かれ、半藤さんは「28人で座談会をやったら、私語もまじってわけわかんなくなっちゃうとか言われたけれど、5時間の座談会は、みんな人の話を静かに聞いていて、場を乱す人もいなかった。改めて日本人が終戦のことを知らないんだなと思った」と当時の座談会の様子を振り返った。また、教えていた女子大の学生に、日本と戦争したことがない国を5択で答えさせたら、50人中13人が米国と答えて驚いたというエピソードを披露。「このままじゃ何もなくなっちゃうと思った。互いに話し合ったり、伝え合うことをしていなかったということだろう」と分析し、「世界に出ていく上で自分の国の歴史を知るのはとても大切なこと」と語った。

 オファーを受けた理由を聞かれた富野監督は、「ラバウル帰りのいとこがいたからというのが公式の答え。本当は今村大将のことも知らなかった。ただ、私も現場に携わってきた人間として、ここで僕が断ったら現場が困るだろうなと思ってお受けした。でも1カ月ほど前に私が大学のころに書いた映画の企画書で、今村均の名前を見つけてね。だからここ1カ月はとてもうれしいんです」と笑顔を見せた。「敗戦の悲惨な戦史などを読むのは20歳のころにやめて、それから戦争を考えることを遮断してきたけれど、1年ぐらいまえから当時の軍人や民間人がなぜ戦争に参加したのか調べるようになっていたので、今回のお話はありがたかった。個人的には死ぬまでやる仕事が見つかった」と語った。

 同ドラマは7月31日午後8時~9時50分、BSハイビジョンで放送され、8月7日からは全国でロードショー公開される。(毎日新聞デジタル)

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