織田信長や豊臣秀吉ら戦国武将にふんした“イケメン”たちが名古屋市をPRする「名古屋おもてなし武将隊」が女性を中心に人気を集めている。毎週末に行われる名古屋城でのパフォーマンスは毎回数百人が集まり、ガイドを務めるツアーは完売という。この人気にあやかろうと、仙台や米沢、埼玉でも「武将隊」が誕生し、観光だけでなく雇用創出につながっているという。
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「名古屋おもてなし武将隊」は10年の名古屋開府400年で名古屋の魅力を全国に伝えようと09年11月に結成された。国の緊急雇用対策「ふるさと雇用再生事業」を活用し、ハローワークなどで募集し、オーディションで21~31歳の男女10人を選んだ。前職は、俳優やモデル、すし職人、会社員、フリーターで、約1カ月武将言葉や歴史の勉強、ダンスなどを特訓し、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、加藤清正、前田利家、前田慶次の6武将と4人の陣笠隊を演じている。
毎日、名古屋城で観光案内を担当し、記念撮影などに応じている。土日には口上や寸劇、ダンスなどの「おもてなし演武」を披露。今月6~10日には中国の上海万博の日本ステージで、名古屋ウィークのイベントにも出演した。“イケメン武将隊”と呼ばれ、地元のイベントやテレビ番組にも引っ張りだこで、6月19日には写真集「戦国武将絵巻 乱舞 名古屋おもてなし武将隊」(1680円)を発売し、約7000部を発行している。
名古屋城管理事務所によると、09年12月以降の入場者数は、前年同月比で12~35%増、累計でも5%~26%増という。特に09年4~7月と10年4~7月では累計約10万人の入場者が増加。「(歴史好きな女性の)“歴女”ブームや高速の無料化などもあり、武将隊だけの影響かどうかは分からない」としながらも、成果は上がっているようだ。
近畿日本ツーリストは4月から、武将の案内で名古屋城をめぐるツアー「名古屋おもてなし武将隊と行く名古屋城ツアー」を販売しているが、9月までの出発分780人分が7月上旬に完売。8月2日に10月、11月出発分を発売したが、10月出発分は170人分が10日に完売、11月出発分も残り少なく、12月分が10月1日に発売される予定という。
武将隊事務局によると、ファンはほぼ女性で「10代から女性会社員まで幅広い」といい、人気の理由は「単に甲冑(かっちゅう)を着ているだけでなく、なりきっているところ」と分析する。信長は鉄砲を持って「いざ!出陣!!」が決めせりふで、“上から目線”のキャラクター、秀吉はひょうきんで愛嬌(あいきょう)のあるキャラクターなどきちんと設定されている。武将隊は12年3月末までの活動を予定しているが「延長の可能性はある。周囲からの応援があれば」という。
名古屋の成功は各地に広がっている。埼玉県行田市では、11年秋公開の映画「のぼうの城」の舞台となる忍城(おしじょう)で、城主の成田長親らの「忍城おもてなし甲冑隊」が7月25日に誕生。上杉氏が領した米沢藩に当たる山形県置賜地方にゆかりの直江継続や最上義光、前田慶次らにふんした5人組「山形おきたま愛の武将隊」が同月29日に結成された。いずれも隊員は、県の雇用対策の一環として採用された。
ゲーム「戦国BASARA」で大人気となり、歴女ブームで“聖地”と呼ばれる仙台では、伊達政宗や片倉小十郎らゆかりの武将にふんして仙台・宮城の観光をPRする8人組の「伊達武将隊」が8月1日に結成された。架空のキャラクター「漆黒の伊達正宗」もおり、正宗の騎馬像のある仙台城本丸跡で観光客を迎え、土日には殺陣や寸劇などを組み入れた「演武」と呼ぶパフォーマンスを行う。“出陣式”には約470人が集まり、土日の「演武」には地元テレビ局では武将がレギュラー出演する番組もある人気ぶりで、仙台市観光交流課では「名古屋おもてなし武将隊を参考にした。(雇用対策という)事業の枠組みから同じ」と話し、「『伊達武将隊』はファミリーの物語。人取橋の戦いをイメージした物語を演武で行う」と独自の演出もアピールしている。
世はまさに空前の戦国ブーム。歴女をターゲットにしたイケメンと武将の融合(フュージョン)は、まだまだ広がっていきそうだ。(毎日新聞デジタル)
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